最弱装備でサクセス〜どうのつるぎとかわの防具しか買えなかった俺だけど【レアリティ777】の効果が凄すぎて最強になってしまった〜

キミちゃん

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第三部 オーブを求めて

第十七話 過去

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「おぉぉーー! すっげぇ~! カリー! おい、馬車降りてこいよ。綺麗だぞ!」

 あれから俺達は、一週間ほど山を登ったり降りたりを繰り返し、やっと最後の山の頂上まで来ていた。
 そこから見下ろす景色に俺は思わず息を飲む。


 見渡す限りのマリンブルーを想わせる青海原。
 白と緑のコントラストが美しい草木煌めく白砂浜。
 そして、岩場に打ち付けるさざ波が水面に作り出す波の綾。


 高いところから見下ろす海岸が、こんなにも美しいものだとは思いもしなかった。
 まだ海までは距離があるにも関わらず、ここまで潮騒が鳴り響いている。
 そのメロディーが、なぜか俺の心を穏やかにしていった。


 今日、ここで一泊しちゃおうかな。
 日が沈む景色も見てみたい。


 俺がそんな事を考えながら、ただただ圧巻の景色に目を奪われていると、カリーも馬車から降りてきた。


「ほぅ。確かにこれは絶景だな。そういえば、昔、フェイルに砂浜で特訓させられたっけな。俺がボコボコにやられてるのを見て、姉さんは笑ってて……すまない。つまらない話をした。」


 カリーはこの景色を見て、昔を思い出したのか、悲しいような、懐かしいような、そんな顔をして言った。


「いや、もっと聞かせてくれよ。俺さ、あんまり男友達いないからさ、自分の昔の話をし合ったりして酒を飲んだりするのに憧れてたんだよね。うっし、今日はここで野営するか! 一緒に海に沈む夕日でも眺めて、思い出話でも語り合おうぜ!」


「友達? 俺がか?」


 カリーは不思議そうな顔をして聞いた。


「え? 違うの? 確かに出会ってまだ日にちは経ってないけどさ、俺はカリーの事を友達だと思ってるんだが……。おい、そこ! 可哀そうな奴を見る目で見るんじゃない!」


「ぷ……あははは! そうか、友達か! そうだ、そうだな。俺とサクセスは友達か。サクセスはフェイルじゃないもんな。いや、なんつうか男友達いないとか、可哀そうな事言ってたからさ。ついな。まぁ、俺も自慢できる程、友達と言える奴はいねぇ……。そうだな、ソレイユくらいか。」


 カリーは急に笑い出す。
 どうやら、俺をからかっているわけではないらしい。
 いや、それよりも……気になる事が……。


「え? ソレイユって男なの? 名前的に女だと思ってたよ。」


「あぁ、あいつは王子だからな。ちょっと名前が女っぽいんだ。本人も気にしてたな。ソレイユ ド シルク。これが奴の正式な名前だ。あと、あいつだけは天空職じゃない。パラディンだ。年齢は俺と同じ21歳。」


 カリーは簡単にソレイユについて説明する。
 王子が、一体どういうわけで勇者パーティと旅に出る事になったのだろうか。
 そこらへんも気になるな。


「へぇ~。王子だったんだ。その話も面白そうだな。じゃあ、さっさと飯の支度やら野営の準備して、それから色々聞かせてくれよ。」


「あぁ、いいぜ。あいつの面白い話ならいくらでもあるからな。今もどこかで元気でいるといいんだが……。」


 カリーは最後にそう呟くと、食事の支度を始めた。
 一週間、俺とカリーは旅をしてきたが、野営の時の役割は決まっている。

 俺が拠点準備、まぁ、聖水ばらまいたり、木を切ったりして、簡単な風よけや雨避けの準備。
 それから、馬の世話と馬車の整備。

 カリーは食事の準備のみ。
 カリーの料理のバリエーションは多く、下ごしらえにも結構手間をかけているようで、作るのに少し時間がかかる。

 本人は簡単な物しかっといっていたが、とんでもない。
 こいつは立派なシェフだ。
 既に俺とゲロゲロはこいつの料理に胃袋を掴まれてしまった。
 
 だからこそ、他の雑務は全て俺がやる事に決めたのだった。


 そして野営と食事の準備が終わると、丁度日が落ち始めてきた。
 俺達は絶景スポットに陣取って、岩を椅子にしながら、酒の入ったらグラスを手に持つ。


 チンっ!


「乾杯!」


 夕日をバックに、俺達は酒の入ったグラスをカチンと合わせて、乾杯する。
 何に乾杯って?
 なんだっていいさ、綺麗な景色の下で男同士、酒を酌み交わすのに理由なんていらない。


 乾杯した後、俺達は特に話すことなく、ただチビリチビリと酒を飲みつつ、その景色を眺めている。
 BGMは、遠くから聞こえる潮騒だ。
 しばらくそのまま、日が落ちるのを二人で眺めていると、カリーの方から口を開いた。


「なぁ、サクセス。」

「ん?」

「いや、なんでもない。」

「なんだよ! 気になるじゃねぇかよ。」

「大したことじゃないんだ。」

「いいから言ってくれ。」

「いやさ、今までずっと言ってたけどさ、お前フェイルにそっくりなんだよ。だから、その……。」

「おいおい、さっきから随分とあれだな。はっきり言ってくれよ。」

「あぁ……。もしも、姉さんが見つかった時、多分、姉さんはさ……お前を求めるかもしれねぇ。でも、お前はもう心に決めた女がいるんだろ? なんか、それを考えたらさ……。」

「なんだ、そんな事か。まぁいるっていうか、俺も正直よくわからないんだよね。大事な人は沢山いるし、大切にしたいと思う女も一人じゃない。」

「ヒュー。随分、チャラい事言うんだな。フェイルは一筋だったぞ。」

「だから、俺はフェイルじゃないってば。」

「あはは、わかってるさ。でもな、こうやって一緒にいてもよ、違和感ねぇんだよ。どうしても、ふとした時にフェイルと勘違いしちまう。なんでだろうな。」

「うーん、そういう難しい事はわかんないな。俺の仲間がいれば、適格な答えを出してくれるんだが。」

「ほう。それは会うのが楽しみだな。」

「ば、ばか! ダメだ! 絶対お前には会わせられん!!」

「なんでだよ! なんか理由でもあんのか?」

「そ、それは……。」

 
 言えねぇ……。
 ネトラレされそうだから嫌です、なんて……。


「なんだよ、サクセスこそはっきりしねぇじゃねぇか。」

「だってさ、カリーはイケメンだし……料理できるし……。」

「あぁん? もしかして俺に奪われるかもと心配してんのか? あははは。」

「笑いごとじゃねぇよ! 俺は自分に自信がないんだ! 偶々先に出会えただけで、俺に良い所なんてほとんどねぇ。スケベだし、変態だし……。」

「いいじゃねぇか。男はスケベ、それが自然だろ? それによ、いいところがあるから今まで一緒にいたんじゃねぇのか? 自信持てとは言わねぇけどさ、俺からすれば、お前の方が格好いいよ。決断力もあるし、芯が強いし、何よりお前は優しすぎる。」


 カリーは、俺の目を見つめて、うっすら笑顔を浮かべて言っている。
 しかし、目は真剣だ。
 お世辞ではないと、俺にでもわかった。

 だが、俺が優しい?
 芯が強い?

 そうは思えないのだが。


「ありがとな。でも、まじで俺の女は渡さねぇからな!」

「別にいらねぇよ。それに、俺はまだ女を好きにはなれるとは思えないしな。」

「ん? なんでだ? も、もしかして……ホ……。」

「ちげぇよ! ホモじゃねぇよ! 俺はさ、ずっと好きだった人がいたんだ。相手も俺の事を多分、愛してくれた。だけどな、俺の力が弱いばかりに……その人は俺を庇って死んだ。それからだよ、俺が強さに貪欲になったのは。でもな、あれ以来、誰も愛せねぇんだ。」

「そ、そうか……。ごめん、悪い事を聞いたよ。」

「いやいいんだ。俺も落ち着いたら、ちゃんと他の女性を好きになれるように努力はしたいと思ってるからな。いつまでもあの人の影を探しているわけにはいかねぇしな……。」

「つ、辛いな……。」

「ば、バカ! なんでお前が泣くんだよ!」

「だってよ! 悲しすぎるじゃねぇか……そんなの……。」

「だからってサクセスが泣くことねぇだろ。酔ってんのか?」

「まだ酔ってねぇよ。そうか、そうだな! じゃあ俺が絶対いい女探してやる!」

「いいよ……自分で見つけるから。それより、日も落ちたし、焚火すんぞ。ほら、いつまでもメソメソ泣いてるんじゃねぇよ。」

「あぁ……。そうか、カリーは強いな。そうだよな、俺達の人生は別れと出会いの繰り返しだもんな。でも、どんな出会いも別れも、俺達の心の中で生き続けてるからな!」

「お、おう? お前……絶対酔ってるだろ? よくそんな恥ずかしい事を……。まぁいい。聞いてくれてありがとな、少しスッとしたよ。やっぱりお前は優しいよ。」

 そういってカリーは、焚火に網を乗せて肉を焼く準備を始めた。

 もう一週間、カリーとは野営をしてきたが、こうやって腹を割って話すのは初めてだ。
 お互い知らない事が多いが、少しだけお互いの事がわかってきた気がする……。
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