最弱装備でサクセス〜どうのつるぎとかわの防具しか買えなかった俺だけど【レアリティ777】の効果が凄すぎて最強になってしまった〜

キミちゃん

文字の大きさ
349 / 397
第四部 サムスピジャポン編

97 カリーの葛藤①

しおりを挟む
※カリー視点


 時は少しだけ遡る(さかのぼる)。

 卑弥呼の儀式が開始する前、目を閉じたカリーは突然イモコの殺気を感じた。
 何事かと思い、カリーは目を開くと、ありえない光景がその目に映る。

 さっきまで近くにいたはずのサクセスが、ゲロゲロを抱えたまま穴の上に移動していたのだ。
 しかも移動していたのはサクセスだけではない。シロマも一緒である。
 そしてその瞬間にイモコがハンゾウの首を刀で刎ね飛ばしていた。

 あまりに一瞬の出来事だったため、頭が理解に追いつかない。

 しかし、これだけはわかる。


ーーハンゾウが裏切った。

 
 ここまでほとんど会話をしなかった奴だが、イモコはハンゾウを信頼していた。だからこそカリーも特別にハンゾウの事を気にすることはなかった。だが今にして気付く。今まで一緒に行動してこなかった奴なのだから、もっと警戒して然るべきであったと。


(イモコが信頼しているからなんだ! 誰にだって漏れはある!)


 そんな簡単な事はわかっているはずだった。
 だからこそ、これまで常に客観的立場で観察していた。
 にもかかわらず、今回ばかりは完全にイモコへの信頼を過信してしまった。


(チッ! 俺の馬鹿野郎が!)


 カリーは自分の判断の甘さに激しい憤りを感じる。
 しかし後悔している暇はない。
 ハンゾウはイモコが殺した。
 ならば今やるべきはサクセス達の救助。


 そう思ったカリーだったが、ふと気づいてしまった。


 サクセスの腕の中にはゲロゲロがいる。
 そして穴の下は思ったよりも深い。
 そうであれば、穴の底に落ちる前にゲロゲロが飛ぶはずだ。

 そう考えるならば、自分がするべき事はサクセスの救出ではない。
 ハンゾウが裏切ったという事は、敵はハンゾウだけではないはず。
 今自分がやるべきは、他の仲間の安全の確保。


 そう判断したカリーは周りを見渡すが、どうやらサクセス達以外は全員無事のようだった。

 だがハンゾウの首から最後の声が聞こえると、次の瞬間、空中に誰かが浮かんでいるのに気付く。


 そいつは白を基調とし、紅色の帯を巻いた和服の女だった。


 普段そこまで女を意識していないカリーであっても、その女は見た事がない程美しいと感じる。

 しかしそれが逆に不自然さを強調していた。

 そんな絶世の美女とも呼べる者が、こんな火山の奥に一人でいるのはおかしい。いや、それ以前に空中に浮かんでいること自体が普通ではない。当然思い当たるのは一人だけ……妲己だ。

 妲己と思われる女は突然現れたかと思うと、笑みを浮かべながらサクセスが落ちた場所を眺めていた。

 完全に無防備ともいえるその姿に、カリーは不意打ちを仕掛けようかと考える。

 ハンゾウが裏切ったタイミングで、妲己の特徴と一致している女。
 普通に考えれば、ほぼ敵と言う事で確定だろう。
 しかし、違う可能性がないとは言えない。
 
 本当に一瞬だけであったが、カリーは悩んだ。
 そして悩んだ末に出した結論は……【妲己に攻撃をする】である。

 だがその前に、穴の下から古龍狼となったゲロゲロが上がってくるのが見えた。

 カリーの予想通り、サクセスはゲロゲロの背に乗って此方に向かって戻ってくる。
 それを見たカリーは少しだけホッとするも束の間、次の瞬間大きな衝突音が響き渡った。
 見ると、ゲロゲロが何かに阻まれて上に昇れないでいる。

 どうやら結界のようなものによって、移動を阻害されているらしい。

 すると女が口を開く。


「コココココ、こんにちわ。妾は妲己でありんすぇ。ハンゾウには感謝でありんす。」


 その女はやはり妲己であった。そして自分からハンゾウとグルである事を口にする。
 それに対してサクセスが穴の中から叫び返した。


「お前がハンゾウを操っていやがったのか! 早くこの結界を解け! さもなくば……お前を殺す!」

「ほほほほほ……威勢が良いでありんすぇ。しかし妾は誰の指図も受けないでありんす。いえ、あのお方だけは別でありんすが。」

 
 やはりサクセスは結界に阻まれてこっちに戻れないらしい。
 どうやら相手はこっちの事情を良く知っているようだ。
 ハンゾウが裏切ったのであれば当たり前の事であるが、これはまずい。

 圧倒的な強さを持つサクセス。
 神懸かり的な回復魔法等を使えるシロマ。
 サクセス程ではないが、現状このメンバーで二番目に強く、空を飛べるゲロゲロ。

 この三人と分断された状態はかなり危険な状態だった。

 こっちには戦力としては心元ないメンバーもいる。
 ロゼッタ、セイメイ、そして卑弥呼。
 卑弥呼の戦力は不明だが、少なくとも今は儀式中であるため戦力外だ。

 そうなると、こっちで戦えるメンバーは自分を入れて、イモコとシルクだけ。
 十分とも言い難いが、それでもサクセスを基準に考えなければこの大陸最強のメンバー。
 とはいえロゼッタ達が一緒にいる以上、シルクには守りに徹してもらうしかない。

 そうなると、今妲己と戦えるのは自分とイモコだけだった。


(どうする? 殺るか? 待て、早まるな。よく考えろ。こんな時フェイルならどうする?)


 カリーは自問自答をしながら頭を悩ませる。

 昔ならば真っ先に敵に突っ込んでいたが、今は違う。
 数々の失敗と経験を経て、カリーは成長していた。
 そして自分が目標としていた男を思い出しながら、最善の道を探る。


 妲己に挑むべきか、それとも全力で逃げるべきか。


 現れた妲己の力は未知数。
 イモコと二人でなら倒せる可能性も十分にあるが、敵が妲己だけとは限らない。
 そしてもし自分の想像以上に妲己が強かった場合、ロゼッタ達に危険が及ぶ可能性が高い。

 サクセス達が戻ってこれたなら悩むまでもなかったが、今は無理だ。
 下手に攻撃をして他の仲間にヘイトが向いてしまえば、ロゼッタ達を逃がす事ができなくなるかもしれない。
 

(シルクに他のメンバーを任せて逃がすのが優先か。)


 カリーが一つの答えに辿り着くと、今度は穴の中から何かが上空に放たれた。
 そしてパラパラと遥か上空から岩盤の欠片が落ちてくる。

 どうやらシロマが次元を穿つ矢を放ったらしい。
 
 もしかしたらそのままサクセス達はこっちに戻ってこれるかもしれない。

 そんな淡い期待が胸を過った(よぎった)が、その一撃の後、シロマの矢は続かなかった。

 降り注ぐ石の欠片に、カリーは理解する。


ーーあの矢では無理だと。


 そしてそれを見ていた妲己は、扇子を口に当てたまま笑みを浮かべていた。

 その表情には余裕が窺える。絶対に結界より上にはこれないと。


「無駄でありんすぇ。そなたらは邪魔でありんすから排除させてもらったでありんす。今残っているのは雑魚……ただの烏合の衆どすぇ。」


 その言葉を聞き、カリーは何を優先すべきか決まった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした

暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。 役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。 だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。 倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。 やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。 一方、病の裏で糸を引いていたのは………。 “無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。 生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。

処理中です...