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第一章:アナザーニューワールド
6 勇者
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俺はそろーりと家の中に入ると、予想通りではあったが中を見て戸惑う。
「なんつうかこれ、まんま馬小屋だな……。」
そこは床一面にワラが敷き詰められた簡素な家であり、調度品等も見当たらない。
とりあえずワラの上に座る事にすると、俺の背後から突然声がした。
「だから平気だって言ったニャ、随分アクロバティックな挨拶だったニャ~。」
そこにいたのは、アズだった。
「アズ、いつのまに! つかアズのせいだろ! 心臓止まるかと思ったわ!」
「でもすぐにニャアを売り渡そうとしてたニャ、幻滅ニャ。」
「それは……えっと、まぁいいやお互い無事でよかった。」
痛いところをつかれて、後ろめたい気持ちになる俺。
するとそこに丁度、馬族のおばぁちゃんが入ってきた。
「おやおやまぁまぁ、人族だけでなく、精霊様も一緒かい。今日は珍しいお客様が沢山来ることじゃ。」
「精霊? 猫族じゃなくて?」
俺は、なぜこの猫型の自称神の使い(笑)を精霊と思ったのか尋ねてみると、すぐに答えが返ってくる。
「猫族はもっと大きいじゃよ、それにその神々しい姿は、精霊様に間違いないですじゃ。何年ぶりじゃのぅ、まぁともかく孫もまだ帰ってきてないから、ゆっくりするといいのじゃ。すぐにご飯の支度するからのぅ。ヒーッヒヒ……ヒヒーン。」
…………。
そのヒヒーンってのは笑ってるのか?
表情がまるでわからねぇ。つか猫族もいるんか。
「初対面なのにありがとうございます。私の名前はシンといいます。この猫型生物はアズです、よろしくお願いします。」
「猫型生物とは心外ニャ! 神の使いニャ!」
何が神の使いだ!
青色の猫型ロボットの方が100倍使えるわ!
「あたしはスズカですじゃ。見たところ、シン殿は人族の勇者のようじゃのぅ、その輝く黄色のパンツといい、汚れなき真っ白なシャツといい……。」
!!?
ゆ、勇者だと?
やっぱり俺は勇者なのか!?
ふふふ、勇者ねぇ……俺が勇者か。
なんか色々知ってそうなこの世界の住人に勇者と言われて、俺は浮かれ始める。
「バレてしまいましたか……そうです。私こそ勇者シンです。勇者だからって気を使わなくていいですからね!」
キリッ!
勇者と言われて気が良くなった俺は、調子に乗って勇者を自称する。
「おやおやまぁまぁ、冗談で言ってみただけなんじゃが、ほんとに勇者じゃとは……。」
え? 冗談? 伝承で伝わってるとかじゃないの?
馬族のギャグセンスを理解するには、俺は経験値が足りてなかった。
「こんなチキンが勇者なわけないニャ、ただの雑魚ニャ」
「ちょっとぉ! 言い方! つか、勇者とかそういう設定あるの? 勇者とかいるの?」
しかしやはり、勇者の存在が気になる。
「いると言えばいるニャ! 結構いるニャ!」
「え? そんなに勇者いるの? マジで?」
俺はその事実に驚愕する。
「人族には容姿が悪いのに、アイドルに玉砕覚悟で告白する奴がいるニャ。それが勇者と呼ばれてるニャ!
」
あほか!
「その勇者は違うだろ! ある意味勇者なのはわかるが……。って、そうじゃなくて。勇者って言えば圧倒的な力を持ち、魔法や剣を駆使してバッタバッタと敵を倒す英雄だろ。」
「おやおやまぁまぁ、勇者でも何でも、あたしは構わないですじゃ。そろそろ孫も帰ってくるから、ご飯の支度に戻るかのぅ。」
俺達の漫才を見ていたスズカさんは、それだけ言うと奥に消えていく。
「しっかしまぁ、今日は驚く事ばかりだな。流石に今日はもうこれ以上驚く事はないだろう。」
その時だった。
「おうババァ、今帰ったぞ!!」
でかいダミ声が入口から聞こえてくる。
この後俺は、今日1日で一番驚く事になるのだった……。
「なんつうかこれ、まんま馬小屋だな……。」
そこは床一面にワラが敷き詰められた簡素な家であり、調度品等も見当たらない。
とりあえずワラの上に座る事にすると、俺の背後から突然声がした。
「だから平気だって言ったニャ、随分アクロバティックな挨拶だったニャ~。」
そこにいたのは、アズだった。
「アズ、いつのまに! つかアズのせいだろ! 心臓止まるかと思ったわ!」
「でもすぐにニャアを売り渡そうとしてたニャ、幻滅ニャ。」
「それは……えっと、まぁいいやお互い無事でよかった。」
痛いところをつかれて、後ろめたい気持ちになる俺。
するとそこに丁度、馬族のおばぁちゃんが入ってきた。
「おやおやまぁまぁ、人族だけでなく、精霊様も一緒かい。今日は珍しいお客様が沢山来ることじゃ。」
「精霊? 猫族じゃなくて?」
俺は、なぜこの猫型の自称神の使い(笑)を精霊と思ったのか尋ねてみると、すぐに答えが返ってくる。
「猫族はもっと大きいじゃよ、それにその神々しい姿は、精霊様に間違いないですじゃ。何年ぶりじゃのぅ、まぁともかく孫もまだ帰ってきてないから、ゆっくりするといいのじゃ。すぐにご飯の支度するからのぅ。ヒーッヒヒ……ヒヒーン。」
…………。
そのヒヒーンってのは笑ってるのか?
表情がまるでわからねぇ。つか猫族もいるんか。
「初対面なのにありがとうございます。私の名前はシンといいます。この猫型生物はアズです、よろしくお願いします。」
「猫型生物とは心外ニャ! 神の使いニャ!」
何が神の使いだ!
青色の猫型ロボットの方が100倍使えるわ!
「あたしはスズカですじゃ。見たところ、シン殿は人族の勇者のようじゃのぅ、その輝く黄色のパンツといい、汚れなき真っ白なシャツといい……。」
!!?
ゆ、勇者だと?
やっぱり俺は勇者なのか!?
ふふふ、勇者ねぇ……俺が勇者か。
なんか色々知ってそうなこの世界の住人に勇者と言われて、俺は浮かれ始める。
「バレてしまいましたか……そうです。私こそ勇者シンです。勇者だからって気を使わなくていいですからね!」
キリッ!
勇者と言われて気が良くなった俺は、調子に乗って勇者を自称する。
「おやおやまぁまぁ、冗談で言ってみただけなんじゃが、ほんとに勇者じゃとは……。」
え? 冗談? 伝承で伝わってるとかじゃないの?
馬族のギャグセンスを理解するには、俺は経験値が足りてなかった。
「こんなチキンが勇者なわけないニャ、ただの雑魚ニャ」
「ちょっとぉ! 言い方! つか、勇者とかそういう設定あるの? 勇者とかいるの?」
しかしやはり、勇者の存在が気になる。
「いると言えばいるニャ! 結構いるニャ!」
「え? そんなに勇者いるの? マジで?」
俺はその事実に驚愕する。
「人族には容姿が悪いのに、アイドルに玉砕覚悟で告白する奴がいるニャ。それが勇者と呼ばれてるニャ!
」
あほか!
「その勇者は違うだろ! ある意味勇者なのはわかるが……。って、そうじゃなくて。勇者って言えば圧倒的な力を持ち、魔法や剣を駆使してバッタバッタと敵を倒す英雄だろ。」
「おやおやまぁまぁ、勇者でも何でも、あたしは構わないですじゃ。そろそろ孫も帰ってくるから、ご飯の支度に戻るかのぅ。」
俺達の漫才を見ていたスズカさんは、それだけ言うと奥に消えていく。
「しっかしまぁ、今日は驚く事ばかりだな。流石に今日はもうこれ以上驚く事はないだろう。」
その時だった。
「おうババァ、今帰ったぞ!!」
でかいダミ声が入口から聞こえてくる。
この後俺は、今日1日で一番驚く事になるのだった……。
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