タイムトラベルも悪くない

ひまわり

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プロローグ

プロローグ あの日

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「はぁ、、、」
毎度の事ではあるが
ため息が顔を白く包む
もう何度見る光景だろう
いい加減飽きた
たまには吐く息が赤や青ならもう少し違うものだろうになどとは思うが
現実はそうもいかないようで
結局またぼんやりとした気持ちと空気で俺は朝を迎えた

俺たちのような学生にとっての真骨頂でもある夏休みがいざ迎えるとすぐ過ぎてしまうとはよく言ったものだが
じゃあ冬休みはというと
結局同じように台風のごとく俺の時間を通り抜けていった

子供の一代イベントであるはずのクリスマス
こいつも本来なら新しい楽しみとの出会いに心ときめくものだが
こと我が家のクリスマスはというと
メシとケーキを食べた後に願い事を書いた紙を枕にしいて寝るという短略的なもので
余韻に浸るような感覚など微塵もない
言うならば食パートが豪勢な七夕改良型とでもいうべきか
まぁ昨今はサンタクロースとかいう無報酬奉仕活動業も高齢化の波で大変なんだろう
贅沢は言うまい

そして迎えた始業式
見てみると久しぶりに会う仲間たちの顔には様々な変化が見える
クリスマスにデートでもしてもらっただろう彼女からのプレゼントを見せつけるやつ
例のごとく宿題ギリギリ一日でなんとか終わらせたぜと誇るやつ
だるさMAX爽快さフルマイナスのオーラを放つやつなどバラエティに富んでいる
相変わらずの連中だな
と思いつつも貴重な十代に多様な変化を楽しめてるという現状は羨ましくもある

さてと
この日は少し雪が多めで早出したためホームルームまではまだ時間がある
俺は余分な体力を節約するため椅子に腰を落とした

すると
不思議なことにそこにはあったはずの椅子がなく俺は硬いコンクリ打ちの床へ直下

「痛っ!!!」

俺の声に何人かが視線を向ける
お前らの言い分は聞かずともわかっているが
しかし、これは断じてオーバーリアクションなどではない
腰から下に落ちるという意味では
俺がよく見てるプロレスなんかでもよくあるものだが
今回の場合弾力のないコンクリがマットがわりだ
ホーガンはおろかアンダーテイカーでさえ表情を歪めること請け合いだ

そんな痛みに加え俺はもう一つ大事な問題を抱えている
それはなぜあったはずの椅子がなくなっていたのかということ
本来の状態なら俺が痛みを負う必要などありえない
じゃあ椅子が勝手に動いたか
もしそうならまぁ許してやらないでもない
そっちのほうが断然面白い
だがしかし
残念ながらそうではなかった
大方の予想を胸に
後部座席を除くと
そこには予想通りの光景があった

「ハロー!」

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