美しき未亡人は毒の花

ゆきな

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アリッサの思惑

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「なによ、あれ」

クリスに手を取られて、フラフラとついていくデイジーの背中を見つめながら、バイオレットが呟く。
しかし彼女はすぐに気を取りなおすと

「じゃあ、私たちも踊りましょうか」

と、笑顔を浮かべるとリオネルの腕をとった。

「え……い、いや、俺は……」
「良いじゃないの!
そんな顔してデイジーを見つめていたって、仕方ないでしょう」
「それはそうだが……俺はダンスなんか……」
「あなたのダンスが下手なことくらい分かっているわよ。
大丈夫、私は上手いから」

強引に腕を引きながら、デイジーはリオネルを伴って歩いていく。
そしてアリッサに軽く頭を下げた。

「それでは少し失礼致します」
「ええ。楽しんでいらっしゃい」


残されたアリッサがデイジーの方に目をやると、彼女もちょうどこちらを見ていたところだった。
クリスに何やら囁かれ、困ったように目を伏せながらも、口元は嬉しそうにゆるんでいる。

やがて演奏が始まり、それに合わせてゆっくりと動き始めたデイジーを眺めながら、アリッサは誰にも聞こえないほど小声で呟いた。

「……本当にバカな子」

人を疑わないお人好しなところは、彼女の父親よりも伯父、つまりアリッサの夫の方によく似ている、と思った。

そのお人好しな性格につけこめば、後見人としてデイジーの財産をうまく手に入れることができるはず。
そう考えてアリッサはニヤリとした。
それこそが、彼女がデイジーの後見人として名乗りをあげた理由だったのだ。

アリッサはデイジーの父の兄嫁だ。
しかし彼女は浪費家な上に男遊びがひどく、夫の一族の怒りを買っていた。
彼女を信じ、愛し抜き、必死にかばってくれたのは夫ただ一人だった。

その為、デイジーの両親もアリッサとは絶縁状態にあった。
だからこそデイジーは、伯父や伯母のことを両親から聞いたことがなかったのである。

けれどもアリッサの素行の悪さはセルディニア国では有名でも、この国では違う。
ここでなら、またいちからやり直すことが出来るとアリッサは信じていた。

「いいえ、やり直すだけでは足りないわ」

アリッサは形の良い眉を上げて、じっとデイジーを見つめた。

「きっと……恨みを晴らしてやる」

アリッサは金に困って、デイジーの父親に金を都合してくれるよう頼みに来た時のことを思い出していた。
しかし彼は当然、貸してくれるはずなどなく、手厳しく彼女を追い返したのだ。
それはアリッサの今までの行いを考えれば当たり前のことだったのだが、アリッサにしてみれば、とんでもない屈辱だった。

そしてその時心に誓ったのだ。
どんな形であれ、この恨みは必ず晴らしてやると。

デイジーの両親が亡くなった今、その標的にはまさにデイジーがうってつけだ。
その為には…と考えていた時、クリスとふと目が合い、アリッサは目を細めた。

彼を利用してやればいい。

「……そうすれば、デイジーの財産を全て思うがままにするどころか、彼女自身も破滅させることができるわ」

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