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扉の向こうで
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デイジーは懸命に走った。
しかしアリッサの部屋まであと少しというところで、彼女の細い腕は、リオネルにがっちりとつかまれてしまった。
「やめっ……」
デイジーが声を上げかけたが、リオネルの手が彼女の口を塞ぐ。
なんとか振り払おうともがいたが、彼の手は力強く、びくともしなかった。
と、その時。
「あら、何か音がしたかしら」
扉の向こうからアリッサの声が聞こえてきた。
ハッとしてデイジーとリオネルが扉に顔を向ける。
今にも扉が開いて、中からアリッサが顔を出すのではないか、と身構える。
しかし、数秒経っても、扉が開く気配はない。
そして再び声が聞こえてきた。
「そう?
俺は聞こえなかったけど。
気のせいじゃないか?」
それは話し方も声も、明らかにアリッサのものではなかった。
男性の声である。
そしてその声にアリッサが答えた。
「……そうかしら。
まあ、いいわ。
それで?あなた、邪魔が入ったからって、あっさり引き下がってきたっていうの?クリス」
思いがけず飛び出してきたクリスという名前に、デイジーはギクリと肩を震わせた。
彼はあのまま帰ったはずではなかったのだろうか。
しかもなぜ、アリッサのところに、それも私室にいるのだろう。
恐る恐るリオネルを見上げると、彼の顔は見たこともないくらい険しい。
デイジーは嫌な予感に襲われて、この会話の続きなんて聞かずに、今すぐ走り去ってしまいたくなった。
けれども、リオネルの手がデイジーの手首をしっかり握ったままだったから、動くことすら出来ない。
デイジーの意に反して、アリッサとクリスの会話は滑らかに続けられた。
「仕方ないじゃないか。
それに、あの小娘はいつだって俺のものに出来る。
ちょっと甘い言葉をかければ、すぐにベッドに倒れこんでくれるさ」
「それはそうだけれど、今夜中にものにしておいてくれたら一安心だったのに。
あの子のやっかいな幼馴染2人が、私のことを疑ってるみたいなんだもの。
あなたの事も、デイジーになんて吹き込んでるか、分かったもんじゃないわ」
「なにも心配することなんてないさ。
誰に何を言われようが、デイジーはもう俺から離れられやしない。
そしたら幼馴染なんかより、俺の言葉だけを信じるようになるよ」
「あら、大した自信だこと」
「自信もつくさ。
あなたみたいな大物を落としたんだ。
あんな小娘なんて、軽いもんだ」
ドサリと何かが落ちる音と共に、ベッドが軋む音が聞こえてくる。
続いて
「さあ、もうこんな話はやめよう。
今は俺のことだけ考えて……」
という甘ったるい声。
デイジーは思わず耳を塞いだ。
と同時に、リオネルに手を引かれて、彼を見た。
リオネルは小さく頷くと、彼女の手首を掴んだまま歩きだす。
デイジーの顔は今にも倒れてしまいそうなほどに真っ青だ。
少しでも気を抜けば、よろけて転びそうになるのを、彼に支えられるようにして、そっとその場を離れたのだった。
しかしアリッサの部屋まであと少しというところで、彼女の細い腕は、リオネルにがっちりとつかまれてしまった。
「やめっ……」
デイジーが声を上げかけたが、リオネルの手が彼女の口を塞ぐ。
なんとか振り払おうともがいたが、彼の手は力強く、びくともしなかった。
と、その時。
「あら、何か音がしたかしら」
扉の向こうからアリッサの声が聞こえてきた。
ハッとしてデイジーとリオネルが扉に顔を向ける。
今にも扉が開いて、中からアリッサが顔を出すのではないか、と身構える。
しかし、数秒経っても、扉が開く気配はない。
そして再び声が聞こえてきた。
「そう?
俺は聞こえなかったけど。
気のせいじゃないか?」
それは話し方も声も、明らかにアリッサのものではなかった。
男性の声である。
そしてその声にアリッサが答えた。
「……そうかしら。
まあ、いいわ。
それで?あなた、邪魔が入ったからって、あっさり引き下がってきたっていうの?クリス」
思いがけず飛び出してきたクリスという名前に、デイジーはギクリと肩を震わせた。
彼はあのまま帰ったはずではなかったのだろうか。
しかもなぜ、アリッサのところに、それも私室にいるのだろう。
恐る恐るリオネルを見上げると、彼の顔は見たこともないくらい険しい。
デイジーは嫌な予感に襲われて、この会話の続きなんて聞かずに、今すぐ走り去ってしまいたくなった。
けれども、リオネルの手がデイジーの手首をしっかり握ったままだったから、動くことすら出来ない。
デイジーの意に反して、アリッサとクリスの会話は滑らかに続けられた。
「仕方ないじゃないか。
それに、あの小娘はいつだって俺のものに出来る。
ちょっと甘い言葉をかければ、すぐにベッドに倒れこんでくれるさ」
「それはそうだけれど、今夜中にものにしておいてくれたら一安心だったのに。
あの子のやっかいな幼馴染2人が、私のことを疑ってるみたいなんだもの。
あなたの事も、デイジーになんて吹き込んでるか、分かったもんじゃないわ」
「なにも心配することなんてないさ。
誰に何を言われようが、デイジーはもう俺から離れられやしない。
そしたら幼馴染なんかより、俺の言葉だけを信じるようになるよ」
「あら、大した自信だこと」
「自信もつくさ。
あなたみたいな大物を落としたんだ。
あんな小娘なんて、軽いもんだ」
ドサリと何かが落ちる音と共に、ベッドが軋む音が聞こえてくる。
続いて
「さあ、もうこんな話はやめよう。
今は俺のことだけ考えて……」
という甘ったるい声。
デイジーは思わず耳を塞いだ。
と同時に、リオネルに手を引かれて、彼を見た。
リオネルは小さく頷くと、彼女の手首を掴んだまま歩きだす。
デイジーの顔は今にも倒れてしまいそうなほどに真っ青だ。
少しでも気を抜けば、よろけて転びそうになるのを、彼に支えられるようにして、そっとその場を離れたのだった。
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