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「グレース!?
どうしてここに……部屋で休んでいたはずだろう」
セオドアはモゴモゴと呟いていたが、なんとか笑顔を浮かべると、グレースへと優しく手を差し出しながら言った。
「体調はどうだい?
行こう。もう少し休んでいないと、体にさわる」
が、グレースは彼の手を振り払うと、声を荒げた。
「体調ですって!?
そんなの最悪よ。
こんな場面を見せられたんですもの、当たり前でしょう。
いったい誰のせいだと思ってるの!?」
それはとてもグレースの声とは思えなかった。
いつもの高い澄んだ声ではなく、低く震える声は、溢れんばかりの怒りを感じさせる。
彼女は屈辱に耐えるようにギリギリと下唇を噛んでから、大きく息を吐き出した。
「身重の婚約者がいるというのに、どうしてこういうことばかりするのかしら。
まったく信じられないわ」
その言葉にキャンディスは思わず目を見張った。
グレースが妊娠しているなんて、考えたこともなかったのである。
まだ結婚前だというのに、すでに子どもを身ごもっているなんて、驚きでしかない。
しかしそれを聞いたおかげで、腑に落ちた。
すでにドミニクと婚約していたグレースが、ドセオドアに婚約相手を変更したこと。
グレースが、もうセオドアと結婚するしかないと言った言葉の意味。
それから、最近のグレースの体調不良。
それらは全て彼女が妊娠していたからだったのだ。
弟の婚約者を奪い、妊娠までさせたというのに。
今度は、弟の新たな婚約者であるキャンディスにまで手を出そうとしていたとは。
キャンディスは恐怖に体を震わせた。
「あんまり興奮しちゃダメだよ。
話は2人でゆっくりしよう。
とにかく今は気を落ち着けて」
セオドアはなんとかしてグレースを落ち着けようとしていたが、怒りに燃える彼女の耳に届くはずがない。
ますます目をギラつかせて怒鳴る彼女は、もう誰にも止められそうになかった。
「何を偉そうに!
私が興奮しているのは、誰のせいだと思ってるのよ!」
グレースは腕組みをして、イライラと体を揺らした。
「あの時、あなたにベッドへ誘われても断固拒否すれば良かったんだわ!
浮かれてついていった私が浅はかだった!
でもあの時は私だけを愛してくれると思ったから、ドミニク様との婚約は破棄してまで、あなたと婚約したというのに!
まさか同じようなことを皆に言っていたとはね!
この子でもう何人めよ!
数えるのもイヤになるわ」
キャンディスは唖然とした。
セオドアの相手は自分ばかりか、他にもいたなんて。
少し考えれば思い当たりそうなものだが、キャンディスはそんなこと考えてもみなかったのである。
グレースは人差し指をセオドアの鼻先に突きつけて、言い放った。
「もう限界よ。
あなたがひどい浮気者だと、社交界中に言いふらしてやるわ!」
「ちょ、ちょっと待てよ。
そんなことをしたら、キミの為にも……そうだ、これから生まれてくる子どもの為にも良くないよ。
僕の評判が悪くなれば、家名に傷が……」
「家名がなによ!」
グレースは金切り声を上げた。
「私はね、家名とか名誉とか、そんなのどうでも良いの!
あなたが誠実に、心から私を……私の子どものことを愛してくれたら、それで良いのよ。
たったそれだけで良いのに!
どうしてそれだけのことが出来ないのかしらね、あなたは!」
「で、出来るって!
確かに今までは僕が悪かった。謝るよ。
でもこれからは心を入れ替える!
だから……」
「いいえ!」
機嫌を取るように笑顔でにじり寄るセオドアから、ぷいっと顔を背けて、グレースは言った。
「今さら何と言われても、あなたの言葉など信じられるものですか!
こうなったら、いっそのこと……もう二度と浮気出来ないような体にでもなればいいんだわ。
手術でもなんでも受けさせてやる!」
「グレース!?」
グレースは泣きながら部屋を飛び出した。
それを追いかけて、慌ててセオドアも、懇願しながら部屋を出ていく。
その横顔にはドミニクに殴られた跡がしっかり残ってしまっていて。
見るも無惨に腫れ上がっていた。
どうしてここに……部屋で休んでいたはずだろう」
セオドアはモゴモゴと呟いていたが、なんとか笑顔を浮かべると、グレースへと優しく手を差し出しながら言った。
「体調はどうだい?
行こう。もう少し休んでいないと、体にさわる」
が、グレースは彼の手を振り払うと、声を荒げた。
「体調ですって!?
そんなの最悪よ。
こんな場面を見せられたんですもの、当たり前でしょう。
いったい誰のせいだと思ってるの!?」
それはとてもグレースの声とは思えなかった。
いつもの高い澄んだ声ではなく、低く震える声は、溢れんばかりの怒りを感じさせる。
彼女は屈辱に耐えるようにギリギリと下唇を噛んでから、大きく息を吐き出した。
「身重の婚約者がいるというのに、どうしてこういうことばかりするのかしら。
まったく信じられないわ」
その言葉にキャンディスは思わず目を見張った。
グレースが妊娠しているなんて、考えたこともなかったのである。
まだ結婚前だというのに、すでに子どもを身ごもっているなんて、驚きでしかない。
しかしそれを聞いたおかげで、腑に落ちた。
すでにドミニクと婚約していたグレースが、ドセオドアに婚約相手を変更したこと。
グレースが、もうセオドアと結婚するしかないと言った言葉の意味。
それから、最近のグレースの体調不良。
それらは全て彼女が妊娠していたからだったのだ。
弟の婚約者を奪い、妊娠までさせたというのに。
今度は、弟の新たな婚約者であるキャンディスにまで手を出そうとしていたとは。
キャンディスは恐怖に体を震わせた。
「あんまり興奮しちゃダメだよ。
話は2人でゆっくりしよう。
とにかく今は気を落ち着けて」
セオドアはなんとかしてグレースを落ち着けようとしていたが、怒りに燃える彼女の耳に届くはずがない。
ますます目をギラつかせて怒鳴る彼女は、もう誰にも止められそうになかった。
「何を偉そうに!
私が興奮しているのは、誰のせいだと思ってるのよ!」
グレースは腕組みをして、イライラと体を揺らした。
「あの時、あなたにベッドへ誘われても断固拒否すれば良かったんだわ!
浮かれてついていった私が浅はかだった!
でもあの時は私だけを愛してくれると思ったから、ドミニク様との婚約は破棄してまで、あなたと婚約したというのに!
まさか同じようなことを皆に言っていたとはね!
この子でもう何人めよ!
数えるのもイヤになるわ」
キャンディスは唖然とした。
セオドアの相手は自分ばかりか、他にもいたなんて。
少し考えれば思い当たりそうなものだが、キャンディスはそんなこと考えてもみなかったのである。
グレースは人差し指をセオドアの鼻先に突きつけて、言い放った。
「もう限界よ。
あなたがひどい浮気者だと、社交界中に言いふらしてやるわ!」
「ちょ、ちょっと待てよ。
そんなことをしたら、キミの為にも……そうだ、これから生まれてくる子どもの為にも良くないよ。
僕の評判が悪くなれば、家名に傷が……」
「家名がなによ!」
グレースは金切り声を上げた。
「私はね、家名とか名誉とか、そんなのどうでも良いの!
あなたが誠実に、心から私を……私の子どものことを愛してくれたら、それで良いのよ。
たったそれだけで良いのに!
どうしてそれだけのことが出来ないのかしらね、あなたは!」
「で、出来るって!
確かに今までは僕が悪かった。謝るよ。
でもこれからは心を入れ替える!
だから……」
「いいえ!」
機嫌を取るように笑顔でにじり寄るセオドアから、ぷいっと顔を背けて、グレースは言った。
「今さら何と言われても、あなたの言葉など信じられるものですか!
こうなったら、いっそのこと……もう二度と浮気出来ないような体にでもなればいいんだわ。
手術でもなんでも受けさせてやる!」
「グレース!?」
グレースは泣きながら部屋を飛び出した。
それを追いかけて、慌ててセオドアも、懇願しながら部屋を出ていく。
その横顔にはドミニクに殴られた跡がしっかり残ってしまっていて。
見るも無惨に腫れ上がっていた。
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