愛のある政略結婚のはずでしたのに

ゆきな

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「おっしゃる通り、私は以前マデリン嬢に会ったことがあるのです」
「そうなのですか。失礼ながら私は、マデリン様のことを存じ上げなくて……」

シェリナが言うと、ウォーレンは一つ頷いた。

「それはもっともです。彼女は隣国、イーストウッド国の方なのですから」

イーストウッドと聞いて、腑に落ちた。

「そうですか。モーリスはイーストウッドへの留学中に、マデリン様と出会ったのですね」



事は半年前のことだ。
モーリスは結婚が間近に迫るにつれ、当主となることへの責任を感じ始めていたらしい。
そこで数ヶ月間、イーストウッドへ経済の勉強をしに行くと言い出したのである。

その間会えなくなることが、シェリナとしては寂しくはあったが、勉強をしたいという熱意を応援することにした。
彼の両親も喜んで送り出した。
今更か、と半ば呆れつつも、ようやく自覚が芽生えたとなれば、嬉しくないはずがなかったのだろう。

かくしてモーリスは、意気揚々とイーストウッドへと旅立って行ったのだったが……

「勉強をすると言って出発したというのに、まさかたった数ヶ月の間に、違う方と結婚の約束を取り付けて帰ってくるなんて。
いったい何の勉強をしていたというのでしょうね」

シェリナは深く息を吐き出した。

「始めの頃は、手紙も頻繁にやり取りしていたのです。
でも、しばらくすると、返事が遅れるようになって。
しまいには、あまりにも返事が来ないものですから、待ちきれずに、私がさらに次の手紙を出してしまっていたほどです。
そんなこともあって、嫌な予感はしていたのですけれど……」

こんなことをウォーレンに言っても、仕方がない。
それは分かっていても、溢れ出す感情を止められなかった。

「ようやく戻って来るというのを、どんなに楽しみにしていたか!
数ヶ月ぶりに会える、今日という日を、何度も夢に見たというのに……」

ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
人前で涙を見せることは、レディーとしてあるまじきことだ、と言われ続けて育ってきたというのに。
どうしても、涙は止まらない。

「ひどい。ひどいわよ、モーリス……」

シェリナが思いの丈を全て吐き出して、ようやく言葉が途切れてしまうまで、ウォーレンは何も言わずに聞いてくれていた。
そして、ようやくポツリと口にした。

「実は先月、所用で、私もイーストウッドに行っていたのです」
「え?」

シェリナはクシャクシャになったハンカチで口を覆いながら、顔を上げた。

「その時に見たことを、お話してもよろしいですか?本当は、あなたを傷つける話は、これ以上したくはないのですが……」
「いいえ、結構です。話して頂きたいですわ」

シェリナは勢いよく言った。
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