婚約破棄された私が、再度プロポーズされた訳

ゆきな

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「だ、だって、そんなの……!」

アリシアは最後の抵抗とばかりに呟いた。

しかし、それを聞き咎めたビクターが

「リアン様!アリシアに無理強いは、おやめ下さい!」

と、すかさず割って入ってくると、アリシアを見つめてきた。

「もしかして、何か事情があって、無理矢理、リアン様と婚約させられることになったんじゃないのか?
そうだったら、はっきり言ってくれ。
私が何とかしよう」
「ほらー、なんだか無駄な誤解を生んでいるじゃないですか!
アリシアが、はっきり言ってくれないから!」

リアンが言いながら、睨んでくる。

「そ、そんなこと言われても……」

アリシアはすっかり涙目である。
それでも、未だに疑いの目で見てくるビクターを目の前にしては、彼女に残された道は1つしかなかった。

「じゃあ……はっきり言います」

アリシアは声が震えぬよう、両手をきつく握った。
ついでに、決心が揺らがぬように、両目もきつく閉じる。

そして一息に言った。

「わ、私は、リアン様を愛しております。
ですから、決して婚約を無理強いされているわけではございません」

彼女の声が途切れても、誰も、何も言わなかった。
ただ、流れていく、重たい沈黙の時。

耐えきれずに、薄く目を開けてみると、ビクターは、あんぐりと口を開けたまま固まっていた。

その一方、リアンはと言えば、アリシアと目が合った途端、

「そうでしょうとも!
お分かりいただけましたね、ビクター様!」

と勝ち誇ったように言って、すかさずアリシアの手を握った。

そして、

「では、これで失礼しますよ!」

と言うなり、彼女の手を引いて、駆け出したのである。

「な、なんで走るんですか!」
「ビクター様の気が変わらないうちに、逃げるんだよ。
追いかけてきたら、また面倒だろ」


それもそうだ。

チラッと振り返れば、まだビクターは呆然と地面を見つめている。

もう追いかけてくるような元気は残っていないように見えるが、彼のことだ。
適当に自分に都合の良い解釈を思いつけば、また元気になって追いかけてくるかもしれない。

となれば今は、リアンの言う通り、一刻も早くここから立ち去るべきだろう。

アリシアは腕を引かれるがまま、走り続けた。
リアンの柔らかそうな髪が、風になびくのを眺めながら。

その美しい流れに、思わず見とれてしまったのは、リアンには内緒にしておこうと胸に誓った。
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