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しばらく黙って走り続けた2人は、ようやく足を止めると、荒い呼吸を繰り返した。
「ああー、疲れた!
こんなに走ったのは、いつぶりだろう」
「ほ、本当に……疲れました!
もう足が動きません……」
無理に動かし続けた足は、ガクガクと震えていて、使い物にならなくなってしまっている。
アリシアは深く息を吐き出して、その場にへたり込んでしまった。
リアンもそれに倣って隣に腰を下ろすと、アリシアの顔を覗き込んできた。
「大丈夫?ビクター様、すごかったね」
「すごかったですね…….。
リアン様には大変ご迷惑をおかけして……」
アリシアは、しおらしく頭を下げたが、彼は笑顔さえ浮かべながら、そんなこと何でもないというふうに頭を横に振った。
「別に、迷惑じゃないさ。
むしろ面白かったよ」
「……面白がらないで下さいよ。
私は本気で困ってたんですから」
「でも、もうこれで大丈夫でしょ?」
リアンに言われて、アリシアは弱々しく微笑んだ。
「大丈夫……だと良いんですけど」
しかしリアンは、アリシアの不安など吹き飛ばしてしまいそうな明るい笑い声を上げると
「大丈夫だって!
なにしろ、アリシアにはもう、新しい婚約者がいるんだから」
と、素早くアリシアの肩に手を回してくると、ギュッと抱き寄せた。
途端にアリシアの頭がガクンと揺れて、リアンの肩にもたれかかったものだから、彼女は真っ赤になってしまった。
「ちょ、ちょっと!
その設定は、もう必要ないですって!」
と、慌てて否定しながら、体を起こそうと力を入れる。
ところがリアンが、肩にかけた手をどかそうとしないものだから、体を離すことができなくて。
無様にジタバタともがくばかり。
それを悠長に眺めながら、リアンは微笑んでいた。
「設定?なにそれ」
「だ、だから!私とリアン様が婚約したっていう……あれですよ」
「ああ、婚約ね」
「そう、それです!
で、ですから、離してください!
こんなところ誰かに見られたら大変ですよ!」
アリシアは、なんとか彼の腕をどかそうと奮闘していたが、リアンが静かな声で
「僕は本気だけど」
と言うのを聞くと、パタリと動きを止めた。
「本気……と言いますと?」
「だから、本気でアリシアと婚約したつもりでいるよっていうこと」
言いながら、リアンは体勢を整えると、アリシアに正面から向き合った。
それから、ポカンとしたままの彼女の手を取ると
「芝居なんかじゃなくて、本当に、私と婚約してくれませんか?」
と、満面の笑みを浮かべたのである。
「ああー、疲れた!
こんなに走ったのは、いつぶりだろう」
「ほ、本当に……疲れました!
もう足が動きません……」
無理に動かし続けた足は、ガクガクと震えていて、使い物にならなくなってしまっている。
アリシアは深く息を吐き出して、その場にへたり込んでしまった。
リアンもそれに倣って隣に腰を下ろすと、アリシアの顔を覗き込んできた。
「大丈夫?ビクター様、すごかったね」
「すごかったですね…….。
リアン様には大変ご迷惑をおかけして……」
アリシアは、しおらしく頭を下げたが、彼は笑顔さえ浮かべながら、そんなこと何でもないというふうに頭を横に振った。
「別に、迷惑じゃないさ。
むしろ面白かったよ」
「……面白がらないで下さいよ。
私は本気で困ってたんですから」
「でも、もうこれで大丈夫でしょ?」
リアンに言われて、アリシアは弱々しく微笑んだ。
「大丈夫……だと良いんですけど」
しかしリアンは、アリシアの不安など吹き飛ばしてしまいそうな明るい笑い声を上げると
「大丈夫だって!
なにしろ、アリシアにはもう、新しい婚約者がいるんだから」
と、素早くアリシアの肩に手を回してくると、ギュッと抱き寄せた。
途端にアリシアの頭がガクンと揺れて、リアンの肩にもたれかかったものだから、彼女は真っ赤になってしまった。
「ちょ、ちょっと!
その設定は、もう必要ないですって!」
と、慌てて否定しながら、体を起こそうと力を入れる。
ところがリアンが、肩にかけた手をどかそうとしないものだから、体を離すことができなくて。
無様にジタバタともがくばかり。
それを悠長に眺めながら、リアンは微笑んでいた。
「設定?なにそれ」
「だ、だから!私とリアン様が婚約したっていう……あれですよ」
「ああ、婚約ね」
「そう、それです!
で、ですから、離してください!
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「だから、本気でアリシアと婚約したつもりでいるよっていうこと」
言いながら、リアンは体勢を整えると、アリシアに正面から向き合った。
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と、満面の笑みを浮かべたのである。
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