へっぽこ勇者と色情狂いの王様

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花畑で捕まえて2

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「え!?なんかこっちに向かってる!?」

ぼくが走り出すと、その血脈もぼくを目掛けて移動してくる

恐らくヴァイスだ。すでに、ぼくは見つかっているのだろう

息が切れるくらい走っても、どんどんと周りに灰色の枝が伸びてきて周りに突き刺さる

やがてそれは円状に、僕を閉じ込める形で一気に地面から起隆してきたので、ぼくは足を止めた

「はぁ、はあ…な、なに!?これなに!?」

なんとなく触れてはまずいような気がして取り囲まれた苛立ちからあたりを見渡す

花畑には、どんよりとした雲が立ち込めあたりは暗くなり、生ぬるい風が頬を撫でる

「首輪を外すのが、そんなに嫌だった?」

上から声が降ってきたので、慌てて見上げるとそこにはヴァイスが勇者の剣に脚をかけて、ぼくを見下ろしていた

流れる黒髪は相変わらず艶やかで、健康的な褐色の肌にかかって神秘的で、その美貌の褐色の瞳は冷たく、それでも目の奥には揺らぎのような炎が見える

思わず後退りすると、するすると枝葉のような灰色の血脈は、ぼくの首輪の周りを囲むように巻きついてくる

「ウール、自分で外せば、悪いようにはしない。拒むな、ガードネックを外せ」

ヴァイスの言葉に下唇を噛んで、睨む

酷い人だ。アナスタシアを娶ったくせに、ぼくの番まで奪うつもりなんだ

「……すっかり騙されたな。ウールは従順な子だと思っていたよ。番になることを拒むつもりか?」

「アナスタシアを娶ったなら充分だろう!?ぼ、ぼくだって、ぼくだって自由に番を選ぶ権利がある!」


だんだん威圧的になっていくヴァイスに負けないように叫べば、ジュウウウと灰色の血脈が首輪を焼いていく

ぼろぼろと涙が溢れてきた

「違う、誰かと、番に、なるつもり?」

ゆっくりと、言い聞かせるように言い終わると、ヴァイスから憤怒の形相で見下ろされて内心震え上がる

「誰だ?相手を言え」

こ、こここ、ここ怖い!!!!!!

「ぼ、ぼくだって、勇者だ。勇者の剣は、ぼくだって扱える!!!」

ヴァイスが少し怯む様子を見せたので、灰色の血脈を手で薙ぎ払い、血脈に触れた瞬間焦ったヴァイスのところまで駆け上がって、剣を足で薙ぎ払う

体制を崩したヴァイスを横目に、足が滑って剣に飛びついたまま花畑に落下していく

ああ、ダメだ。もう終わりだ。剣が、ぼくに突き刺さるだろう

ぎゅうと目を閉じるも、痛みが一切ない

そろりと片目を開くと、ヴァイスが剣を持ち、ぼくを抱き抱えていた

「は!離せ!!」

「ウール暴れるな。誰だ?誰と番になるつもりだ?あの冒険者か?魔王か?誰だ?」

泣き喚くぼくをものともせず、ヴァイスは押さえつけてくる

「…意地でもガードネックを外さないつもりか?無駄なことだ」

ヴァイスが勇者の剣を、ガードネックに当てるだけで、ガードネックは、さらさらと音を立てて崩れ去っていく

暗証番号を忘れていただけだけれど、晒された首にヴァイスは舌を這わせて、見たことのない気味の悪い笑顔を浮かべながら、ぼくを抱きしめる

「ウール、相手が誰か言わないのなら、周りのウールの大切な人を1人ずつ拷問にかけような?」

さわさわと腰を撫でながら言い捨てるヴァイスに、信じられないものを見るように見上げる

凄まじい美貌の目に、いつから狂気が混ざっていたのだろうか?

ぼくの妹アナスタシアを娶り、ぼくを返す気じゃないのか?
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