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勇者と認定
しおりを挟む王妃様の問題もあるが、ヴァイスの方がより厄介だ
帰ってきた時に、ぼくを見下ろす目で確信した
執着と、情に濡れた執念深そうなじっとりとした目
そうだ、ぼくは年よりも沢山、お姉さん達の話をきいているから、わかっている
ヴァイスは、恐らくぼくを手籠にしたいのだと
これを16歳まで回避していくには、ひたすら怖がっているふりをするしかないだろう
今後は殊更、子供っぽさを強調していく必要性がある
子供であることと、怖がっていること。これがぼくの身を守ってくれるはずだ
しかし、去り際のヴァイスの様子から難しいかもしれないとも不安に思う
美しい美貌の澄ましたヴァイスだけど、目は爛々としていて獲物を前にした肉食獣、ご飯を目の前にしている犬くらい信用がない
いつでも飛びかかれると隙を伺い考えている視線
ぎゅうと胸の前で手を握ってから、後宮に向かう
顔パスで出入りさせてくれていた後宮の門番達は、ぼくを畏怖の視線で出迎えてくれた
出入りさせていたことがバレたら首が飛ぶのと、今日の朝刊で、ぼくがナード家の子息であり側室本人だとバレてしまっているのだろう
「ど、どうぞ、お入りください」
下唇を噛んで後宮を見上げる
少し寂しくて、後ろを振り返った瞬間、王宮の方から騒ぎが聞こえる
「なんだろう?」
足を止めていると、王宮から侍衛が走ってくる
「ウール様!良かった!すぐに王宮に戻るようにとの事です!陛下は最高に機嫌がお悪いので、お気をつけて…!!」
ぜえぜえと息を切らす侍衛に頷き、元来た道を戻る
多分、あの調子ならば死罪はないだろう。不機嫌とのことだが王妃様が何かした可能性も否めなくて不安だが
しかし、王宮は先ほどとは打って変わり、不穏な空気が流れている
アルファ性の威圧のせいだろうが、不安に慄きながら、王宮の広間の扉を開けてもらうと、先程は父親が土下座していた場所に老人や、冒険者のような中年が怒り狂っているヴァイスの前に平伏している
恐る恐る中に入ると、ヴァイスの視線は緩んだが、居並ぶ老人達の横に跪き、言葉を待つ
一体、何が起こっているのか
心臓がバクバクと早鐘を打つ
「ウール、教えておくれ。これに見覚えはあるか?」
カランと目の前に投げられたのは、見覚えがありすぎる勇者の剣だった
封じられまくっていて、見る影もないが、ぐるぐる巻きにされたぼくの相棒だ
まだ愛着もないけれど
ぼくの背丈ほどあるソレに、冷や汗がだらだらと背中から流れていくようだった
ヴァイスは怒りまくっているけれど、そりゃあ実家にいたと思った側室が、勇者の剣を引き抜いていたら、何があったかと思うよな
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