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怖いヴァイスとパパ上
しおりを挟む「へえ?随分と仲の良い兄弟なのだな……こんなに匂いがつくくらい何してたの……?」
瞬時に空気が重たくなり、ぴりぴりとした沈黙が流れた。しがみついているぼくからは表情は見えないけれど、父親と王妃様や侍衛まで顔を真っ青にして、かたかた震えている
ひたいを床に擦り付けている父親を見下ろしながら、ヴァイスは、ぼくのお尻の辺りに指を滑らし、なでなでと撫でてきていて、ぞっとした
しかし、この空気、父親が殺されかねないような雰囲気すら漂っていて非常にまずい
ぎゅうとヴァイスにしがみつく
「パパ上も、兄上も、きらい。陛下と部屋に戻りたいです」
耳元で囁くと、ヴァイスを纏う空気が一気に変わった。ほわんという言葉がぴったりな変わりように、みんな一様に訝しげな表情に変わる
父親に視線を送ると、父親も空気の変わりように驚いたのか、おろおろしている
「すこし、怖くなって。ごめんなさい」
「いや、ウールはまだ小さいのに急ぎすぎたな。大丈夫。嫌がることなんてしないから」
追い打ちをかけるように謝ると、ヴァイスは慈しむような表情を浮かべて、すりすりと頬擦りしてきた
ぴしりと空気が凍る
父親は危惧を浮かべた顔になり、王妃様は怒りに顔を引き攣らせて、周りの侍衛は見て見ぬふりをし始める
「パパ上を見送りに行っても良いですか?」
「ナード公爵のお帰りだ。ウール、いいよ、行っておいで。あとで、お仕置きと…沢山謝罪をしてもらうから…」
舌なめずりをしているヴァイスは、うっとりとした目で、ぼくを上から下まで視線でねっとり見つめながら言い放つのを見て、ぞーと体を強張らせていると、横目に父親がおろおろとしているのが見えて、失言しかねないので手で引いて退出する
入り口付近で、父親が顔色悪く、肩をさすられる
「だ、大丈夫か?ま、まさか、へ、陛下は……む、無体されてないか?」
初めて見せた父親の心配顔にむっとする
「パパ上が余計なこと言ったからです。そんなことより、どうしてぶったんですか」
じわりと涙が浮かんでくる。殺されかけたのに、頬を打たれて納得いかない
「兵の前だから仕方がなかったのだ。陛下が力をつけるまで我慢しなさい。無闇に訴え出たら消されるぞ。今や王妃様の家の方が兵力が強いのだ。16になったら帰れるのだから、静かにして目立たず耐えるのだぞ」
「……わかりました」
そうだ、16までの我慢なのだ。それなのに、騒ぎ立てて王妃側と揉めるなということなのだろう
ぐっと拳を握り、涙を拭う。日に日にヴァイスが、ぼくを見る目が妖しくなってきていることも地味にストレスだったに違いない
ぼくは、誰も助けてくれない王宮で、16まで本当に生き抜いていけるのだろうか?
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