堕ちて逝った塊

佐野絹子

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秀一が扉を開けると

目の前に
映った光景を見て
驚きのあまり
開いた口が
塞がらなかった

そこは食堂だ

暖色の壁と床
床には紅い絨毯が
敷かれている

天井には
高級そうなシャンデリア

俺は食堂に
足を進めると
辺りを見渡した

中央には
長卓のテーブルに
5人分の
1人掛けソファーがある

テーブルを挟んで
ソファーが置かれている

芹澤 佐藤 アルは
既にソファーに座っている

男女 分かれて
席に着いていた

「太郎ちゃ~ん❤︎」

アルは
俺と秀一が
食堂に来たのに気付き
振り向き
満面の笑みで
俺に手を大きく振って来た

アルの隣には
2人分の席がある

秀一は無言のまま
俺の腕を掴み
左側に誘導した

アルの座っている席から
離された感じだ

「お待たせしました」

秀一は笑顔で
挨拶をすると
ソファーに座った
俺も空いてる席に座った

秀一が座った席はアルの隣
俺は秀一の隣の席だ

秀一……もしかして
俺の気持ちを察して
アルから離れた席に 
着かせた?

そうだとすると
アルから俺を庇っている?

「えぇ?何で君が僕の隣に座るの?
太郎ちゃんが隣に来て欲しかったなー」

「僕では不満ですか?」

「嫌に決まってる」

「僕は好きですけどね……貴方の事…」

秀一はアルを
ちらりと見た

「やめてよ…気色悪い…」

「そのままお返ししますよ」

「何が?」

アルが鋭い目付きで
秀一を睨み付けた 

「言わなくて分かりますよね?」

秀一はアルに
笑顔を見せたが
瞳は鋭い目付きだ

その場の空気が悪くなる

「や…やめて……下さい!!
喧嘩は……駄目です!!」

芹澤が涙目で
喧嘩の仲裁に入った

「これは失礼…僕とした事が
気を取り直して
食事に致しましょう」

芹澤が喧嘩の
仲裁に入ったおかげで
喧嘩は終了した

秀一の視線を感じたので
俺は秀一に視線を移すと
秀一は優しく微笑んでいた

俺は秀一の
優しい笑みで
全てを察した

俺を守ってくれたのだと
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