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第一章(謎解きのはじまり)
特典が豪華すぎて不安になった件。
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家に帰ると、僕はさっそく買ってきた6冊を机に並べて置いた。
そして、手描きイラストのカバーが掛けられた1巻をそっと手に取ってみる。
驚いたことに、そのイラストは、印刷されたものではないように見えた。黒マジックで、直接、カバーに描いてあるように見えるのだ。
いくらなんでも、売れっ子漫画家の御本人が、手描きでそんなイベントをやっているとは思えない。まとめ買いくらいで、直筆のイラスト入りカバーがもらえるなんて、見たことも聞いたこともない。
どうも気になった僕は、ツイッターで「デジャヴュ」の購入特典について色々調べてみたものの、やはり最新刊を購入すると先着でステッカーがもらえるイベント以外は、何も見つけられなかった。
もしかしたら、あの本屋の独自のサービスなのかもしれない。学生時代から利用してきて、こんなサービス一度も受けたことが無いけれど、まあ実際に軒並み本屋が潰れている状況だから、このくらいのことでもしないと、もう他店と勝負できないのかもしれない。
改めて、手描きイラストをしげしげと眺めてみると、その出来栄えに、思わずため息が漏れそうになってしまった。
かなりデフォルメされているとはいえ、デジャヴュさんが描いたキャラの特徴を、これでもかというほど上手く捉えてある。自分が、全く絵心の無いタイプなものだから、本当に心の底から感嘆した。
でも、一体、誰がこの絵を描いたのだろう?
ふと、思い出されるのは、先ほどの不審な男性店員のことだったけれど、瞬時に「イヤイヤ」と首を振った。
あの人は、100パーセントありえないだろう。
きっと、これだけ人気のある漫画だから、熱狂的なファンが、あの店のバイトの女の子の中にもいるのだろう。そもそもデジャヴさんだって、書店員である可能性が高いのだから。
鼻息を荒くして僕は、ツイッターの画面を開いた。デジャヴさんは、僕が一目惚れをした「デジャヴュ」の二次イラストのツイートをして以降、まだ新規のイラストは上げてはいない。
デジャヴさんのイラストツイ(ツイートのこと)には、未だにイイネ数がジワジワと増え続けているのだけれど、それを知ってか知らずか、当の本人は、本の紹介ツイートばかりを毎日つぶやいている。
本の実務的な情報以外、何も得られないこの状態は、少なからずファンたちをヤキモキさせているようでもあった。
イラストツイートのリプ欄(返信欄のこと)には、熱烈に次のイラスト更新を希望する内容のコメントが殺到していた。
その気持ちは分かる。僕だって、その居ても立っても居られないファンの中の1人だからだ。
事実、なかなか新規絵がツイートされないもどかしさのあまりに、こうして気まずい思いをしてまで本屋に行ってきたのだから。
僕は、スマホを床に置いて、座椅子に腰掛け、買ってきた漫画を早速読もうと広げたが、ふと、思い立ってまたスマホを手に取った。
そしてカメラ画面を開くと、漫画「デジャヴュ」の1巻に掛けられたままのカバーの表紙にレンズを向けたのだった。
原作漫画の「デジャヴュ」は確かに良かった。とても面白いストーリーだったけれど、もちろん、その作品の中で男同士の恋愛模様など描かれているはずがなかった。
分かってはいても、読んでいて心のどこかが、隙間風が吹いたように、ひんやりしていた。
どこをどう読んでも、超正統派の少年漫画である、この作品キャラたちを、どうやってキスさせるに至ったのか、デジャヴさんのイラストの真意は、漫画を読んだことでむしろ、より謎に満ちてしまうのだった。
こんなに普通の漫画を、男同士の恋愛物として、二次元でラブ展開させてしまう腐女子たちは、やっぱりとてつもなく凄いと思った。
まあ、デジャヴさんも、その内の1人なんだろうけれども。
僕には、まだよく分からない。ボーイズラブのことも、デジャヴさんのことも、自分のことさえも。
何故だか、僕は、またもや、自分が世界のどこかで一人ぼっちで、ただ、道に迷っているような気持ちになってしまった。
さっきまでの、あの、自分らしくないとまで思えた、謎の行動力はいったいなんだったのだろう。
僕は、スマホのホーム画面を、さっき撮った本屋でもらった手描きイラストの写真に設定し直すと、そっとスマホと自分の心を閉じたのだった。
例の、あの事件が起きたのは、それから数日過ぎてのことだった。
その日、僕は、購入した「デジャヴュ」6巻分を全て読み終えて、続きの巻を買いに行こうと思っていた。
凝りもせず、また件の本屋に行くつもりだった。
地元とはいえ、さすがにパジャマ兼、部屋着のスエット姿は忍びなくて、上はそのままに、下だけ適当なチノパンツに履き替えることにした。
このパンツは後ろポケットが大きめで、スマートフォンがすっぽりと入るのでとても助かる。ポケットに入れる前に、スマホに届いた通知内容を念のため確認するのは、もはや習慣になりつつあった。
「え?」
そこで僕が見たのは、見慣れたデジャヴさんのツイートお知らせだったのだけれど、いつもの、あの本の紹介ツイートではなかった。
文頭に「RT(リツイート)」が付いているツイートだった。これは、自分以外の人のツイートを拡散するときに表示されるものだ。
驚いた僕は、慌ててツイッターアプリを開いてみる。
まさにそのとき、また新たにツイッターから通知が入った。相次ぐ展開に、オロオロとしながらも、僕はかろうじて、その最新の通知内容を確認することができた。
それは、僕が誰かにフォローされたということを知らせる通知だった。
そして、手描きイラストのカバーが掛けられた1巻をそっと手に取ってみる。
驚いたことに、そのイラストは、印刷されたものではないように見えた。黒マジックで、直接、カバーに描いてあるように見えるのだ。
いくらなんでも、売れっ子漫画家の御本人が、手描きでそんなイベントをやっているとは思えない。まとめ買いくらいで、直筆のイラスト入りカバーがもらえるなんて、見たことも聞いたこともない。
どうも気になった僕は、ツイッターで「デジャヴュ」の購入特典について色々調べてみたものの、やはり最新刊を購入すると先着でステッカーがもらえるイベント以外は、何も見つけられなかった。
もしかしたら、あの本屋の独自のサービスなのかもしれない。学生時代から利用してきて、こんなサービス一度も受けたことが無いけれど、まあ実際に軒並み本屋が潰れている状況だから、このくらいのことでもしないと、もう他店と勝負できないのかもしれない。
改めて、手描きイラストをしげしげと眺めてみると、その出来栄えに、思わずため息が漏れそうになってしまった。
かなりデフォルメされているとはいえ、デジャヴュさんが描いたキャラの特徴を、これでもかというほど上手く捉えてある。自分が、全く絵心の無いタイプなものだから、本当に心の底から感嘆した。
でも、一体、誰がこの絵を描いたのだろう?
ふと、思い出されるのは、先ほどの不審な男性店員のことだったけれど、瞬時に「イヤイヤ」と首を振った。
あの人は、100パーセントありえないだろう。
きっと、これだけ人気のある漫画だから、熱狂的なファンが、あの店のバイトの女の子の中にもいるのだろう。そもそもデジャヴさんだって、書店員である可能性が高いのだから。
鼻息を荒くして僕は、ツイッターの画面を開いた。デジャヴさんは、僕が一目惚れをした「デジャヴュ」の二次イラストのツイートをして以降、まだ新規のイラストは上げてはいない。
デジャヴさんのイラストツイ(ツイートのこと)には、未だにイイネ数がジワジワと増え続けているのだけれど、それを知ってか知らずか、当の本人は、本の紹介ツイートばかりを毎日つぶやいている。
本の実務的な情報以外、何も得られないこの状態は、少なからずファンたちをヤキモキさせているようでもあった。
イラストツイートのリプ欄(返信欄のこと)には、熱烈に次のイラスト更新を希望する内容のコメントが殺到していた。
その気持ちは分かる。僕だって、その居ても立っても居られないファンの中の1人だからだ。
事実、なかなか新規絵がツイートされないもどかしさのあまりに、こうして気まずい思いをしてまで本屋に行ってきたのだから。
僕は、スマホを床に置いて、座椅子に腰掛け、買ってきた漫画を早速読もうと広げたが、ふと、思い立ってまたスマホを手に取った。
そしてカメラ画面を開くと、漫画「デジャヴュ」の1巻に掛けられたままのカバーの表紙にレンズを向けたのだった。
原作漫画の「デジャヴュ」は確かに良かった。とても面白いストーリーだったけれど、もちろん、その作品の中で男同士の恋愛模様など描かれているはずがなかった。
分かってはいても、読んでいて心のどこかが、隙間風が吹いたように、ひんやりしていた。
どこをどう読んでも、超正統派の少年漫画である、この作品キャラたちを、どうやってキスさせるに至ったのか、デジャヴさんのイラストの真意は、漫画を読んだことでむしろ、より謎に満ちてしまうのだった。
こんなに普通の漫画を、男同士の恋愛物として、二次元でラブ展開させてしまう腐女子たちは、やっぱりとてつもなく凄いと思った。
まあ、デジャヴさんも、その内の1人なんだろうけれども。
僕には、まだよく分からない。ボーイズラブのことも、デジャヴさんのことも、自分のことさえも。
何故だか、僕は、またもや、自分が世界のどこかで一人ぼっちで、ただ、道に迷っているような気持ちになってしまった。
さっきまでの、あの、自分らしくないとまで思えた、謎の行動力はいったいなんだったのだろう。
僕は、スマホのホーム画面を、さっき撮った本屋でもらった手描きイラストの写真に設定し直すと、そっとスマホと自分の心を閉じたのだった。
例の、あの事件が起きたのは、それから数日過ぎてのことだった。
その日、僕は、購入した「デジャヴュ」6巻分を全て読み終えて、続きの巻を買いに行こうと思っていた。
凝りもせず、また件の本屋に行くつもりだった。
地元とはいえ、さすがにパジャマ兼、部屋着のスエット姿は忍びなくて、上はそのままに、下だけ適当なチノパンツに履き替えることにした。
このパンツは後ろポケットが大きめで、スマートフォンがすっぽりと入るのでとても助かる。ポケットに入れる前に、スマホに届いた通知内容を念のため確認するのは、もはや習慣になりつつあった。
「え?」
そこで僕が見たのは、見慣れたデジャヴさんのツイートお知らせだったのだけれど、いつもの、あの本の紹介ツイートではなかった。
文頭に「RT(リツイート)」が付いているツイートだった。これは、自分以外の人のツイートを拡散するときに表示されるものだ。
驚いた僕は、慌ててツイッターアプリを開いてみる。
まさにそのとき、また新たにツイッターから通知が入った。相次ぐ展開に、オロオロとしながらも、僕はかろうじて、その最新の通知内容を確認することができた。
それは、僕が誰かにフォローされたということを知らせる通知だった。
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