60 / 80
第二章(謎解きのおわり)
安心してください、モブです。
しおりを挟む
よく見れば、本屋にそろって入店してきた女の子たちは、みんな一様にグリーンのエプロンを掛けている。それは、太郎さんが掛けているのと同じものだ。
つまり、彼女たちも、この本屋の店員さんたちなのだった。
だけど、まだ営業時間中だというのにも関わらず、もう仕事終わりな素のテンションで、やってくるとは、一体何事だろうか。
呆気にとられたままの僕に気がつくと、太郎さんは、取ってつけたように説明をしてくれた。
「ああ、この子たち、ここのバイト」
いや、それは見りゃ分かります。
先陣を切ってレジまでやってきた、キレイめな見た目の女の子が、太郎さんの腕を強めに揺すりながら言った。
「たろちゃーん、上手く行ったみたいじゃーん」
その文末にハートマークが見えそうな甘い声だった。途端に太郎さんは、あからさまにデレっとした、だらしのない目つきになって、その女の子をじっと見つめている。
「フフッ……いや、でも、まだ告ってねーんだわ」
「ええええっ!?」
太郎さんにしがみつく女の子を筆頭に、悲鳴に近い叫び声が店内に響いた。
オイオイ、ここの本屋は、一体どうなってんだ? もしかして、僕が気づかなかったタイミングで、別世界に転生とかしてない?
「たろちゃん! せっかく私達がきっちり30分も余裕を持たせて時間あげたのに、まだ好きって言えてないのおー!?」
すると、さっきまで飄々とした佇まいをキープしていた太郎さんは、その顔を徐々に赤く染め始めた。
……え? 告白って、なんです? もしかして僕の預かり知らぬところで、サプライズイベントが計画されていたとか?
ほら、あの、陽キャカップルによくありがちな、意味不明に突然ダンスが始まって最終的に、プロポーズするみたいな……。
さすがに只事ではない空気を感じ取った僕は、一旦この場をそそくさと退散することにした。
「……あの、デジャ……じゃなくて太郎さん、僕、とりあえずハケますね」
その瞬間、本屋とは思えないくらい騒がしかった店内が急に静まり返った。
どのくらいの時間が過ぎ去ったことだろう……。
たぶん、一瞬に満たない程度だったはずだが、あまりにも僕に対する冷徹な女の子たちからの視線に耐えかねて、それは永遠みたいに長い時間に感じられた。
「……は? ……ハアアアアアアアア!?」
女の子たちの怒りの矛先が、何故だか僕に向いていると察して、思わず目線で太郎さんに助けを求めたが、太郎さんは、明後日の方向を向いている。
「……あなたねえ、たろちゃんが、何年あなたに片思いしてると思ってんの!? たろちゃんはねえー、もうかれこれ9年間くらいずっと、拗らせてんの!! その辛さがあなたに分かるの!?」
……ん? 何言ってんだ、この人……。
「それが、やっと……やっっと、気持ちを打ち明けるチャンスが来たっていうのに……たろちゃんの告白の邪魔すんの辞めてくれる!?」
たぶん彼女は何らかの怒りで、今周りが全く見えてない状態みたいだ。ちなみに、それ以外の女の子たちは、急にザワつき始めているし、太郎さんに至っては、両手で顔を覆ってしまっている。
「……ねえ、あかりちゃん、どっちかっていうと、邪魔してるのはアナタみたいよ……」
勇気ある一人が、その「あかりちゃん」とやらに声を掛けて、そっと肩に手を置くと、ようやく「あかりちゃん」は、目を覚ましてくれたようだ。
「あっ!? ……ヤダ、私ったら……」
そう慌てて言うなり、太郎さんのところに駆け寄って、必死に謝り続けている。
……いや、なんだ、この。文化祭の出し物みたいな寸劇は……。
つまり、彼女たちも、この本屋の店員さんたちなのだった。
だけど、まだ営業時間中だというのにも関わらず、もう仕事終わりな素のテンションで、やってくるとは、一体何事だろうか。
呆気にとられたままの僕に気がつくと、太郎さんは、取ってつけたように説明をしてくれた。
「ああ、この子たち、ここのバイト」
いや、それは見りゃ分かります。
先陣を切ってレジまでやってきた、キレイめな見た目の女の子が、太郎さんの腕を強めに揺すりながら言った。
「たろちゃーん、上手く行ったみたいじゃーん」
その文末にハートマークが見えそうな甘い声だった。途端に太郎さんは、あからさまにデレっとした、だらしのない目つきになって、その女の子をじっと見つめている。
「フフッ……いや、でも、まだ告ってねーんだわ」
「ええええっ!?」
太郎さんにしがみつく女の子を筆頭に、悲鳴に近い叫び声が店内に響いた。
オイオイ、ここの本屋は、一体どうなってんだ? もしかして、僕が気づかなかったタイミングで、別世界に転生とかしてない?
「たろちゃん! せっかく私達がきっちり30分も余裕を持たせて時間あげたのに、まだ好きって言えてないのおー!?」
すると、さっきまで飄々とした佇まいをキープしていた太郎さんは、その顔を徐々に赤く染め始めた。
……え? 告白って、なんです? もしかして僕の預かり知らぬところで、サプライズイベントが計画されていたとか?
ほら、あの、陽キャカップルによくありがちな、意味不明に突然ダンスが始まって最終的に、プロポーズするみたいな……。
さすがに只事ではない空気を感じ取った僕は、一旦この場をそそくさと退散することにした。
「……あの、デジャ……じゃなくて太郎さん、僕、とりあえずハケますね」
その瞬間、本屋とは思えないくらい騒がしかった店内が急に静まり返った。
どのくらいの時間が過ぎ去ったことだろう……。
たぶん、一瞬に満たない程度だったはずだが、あまりにも僕に対する冷徹な女の子たちからの視線に耐えかねて、それは永遠みたいに長い時間に感じられた。
「……は? ……ハアアアアアアアア!?」
女の子たちの怒りの矛先が、何故だか僕に向いていると察して、思わず目線で太郎さんに助けを求めたが、太郎さんは、明後日の方向を向いている。
「……あなたねえ、たろちゃんが、何年あなたに片思いしてると思ってんの!? たろちゃんはねえー、もうかれこれ9年間くらいずっと、拗らせてんの!! その辛さがあなたに分かるの!?」
……ん? 何言ってんだ、この人……。
「それが、やっと……やっっと、気持ちを打ち明けるチャンスが来たっていうのに……たろちゃんの告白の邪魔すんの辞めてくれる!?」
たぶん彼女は何らかの怒りで、今周りが全く見えてない状態みたいだ。ちなみに、それ以外の女の子たちは、急にザワつき始めているし、太郎さんに至っては、両手で顔を覆ってしまっている。
「……ねえ、あかりちゃん、どっちかっていうと、邪魔してるのはアナタみたいよ……」
勇気ある一人が、その「あかりちゃん」とやらに声を掛けて、そっと肩に手を置くと、ようやく「あかりちゃん」は、目を覚ましてくれたようだ。
「あっ!? ……ヤダ、私ったら……」
そう慌てて言うなり、太郎さんのところに駆け寄って、必死に謝り続けている。
……いや、なんだ、この。文化祭の出し物みたいな寸劇は……。
0
あなたにおすすめの小説
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま 療養中
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。
或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。
自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい!
そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。
瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。
圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって……
̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶
【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ
番外編、牛歩更新です🙇♀️
※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。
少しですが百合要素があります。
☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!
脱落モブ男が人気アイドルに愛されるわけがない
綿毛ぽぽ
BL
アイドルを夢見るも、デビューできずオーディション番組に出演しても脱落ばかりの地味男、亀谷日翔はついに夢を諦めた。そしてひょんなことから事務所にあるカフェで働き始めると、かつて出演していた番組のデビューメンバーと再会する。テレビでも引っ張りだこで相変わらずビジュアルが強い二人は何故か俺に対して距離が近い。
━━━━━━━━━━━
現役人気アイドル×脱落モブ男
表紙はくま様からお借りしました
https://www.pixiv.net/artworks/84182395
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる