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本に罪はありません

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 此処は魔界を統べる恐ろしい魔王様のお城。
 魔王は玉座から離れ、城の中を歩いていた。 

 目を封じられている魔王は、周りの事を何となくの雰囲気で判断している。
 はっきりと把握出来ない筈だが、その足取りに迷いは無い。

 しばらく歩いたところでドサドサと何かが落ちる音がした。

「ん? 此処は……図書室か」
 室内に入るとこつりと靴に本が当たった。
 先程の音の正体は床に散らばったこの本たちのようだ。

 規則性のある息づかいが聞こえ、そこに居る者に気づいた魔王は声をかける。
 
「魔女?」

 魔王の声が聞こえた魔女は、がばっと身を起こしてまた机に突っ伏した。
 完全に寝ている。
 どうやら机に積んだ本を読み、寝落ちしたらしい。

(魔女は安心したように眠っている……)

「熱心なのは良いが程々にな」
 魔王は苦笑しながらわかる範囲で本を拾って図書室を出た。


 
 魔王が退出した図書室、その机の上に積まれた本は
 購入者不明の恋愛指南書だった。

 タイトルが魔王に見えなかったのは幸いである。
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