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ただの不倫ならよかった
しおりを挟む会いたい人から会おうって言われて
会える時間に会える距離にいるのに
会えない理由があるから会えない
ただの不倫ならよかった
「お前が会いたいって言うなら毎日でも通ってやるよ」
「お前がおるから俺は頑張れる」
「特別」
そんな言葉言うならどうして
別れてくれないの。
どうしてよりによってあの人なの
全ての人を裏切ってるようで
罪悪感だけが募ってくる
こんな思いするなら
そんな言葉なんていらない…
「おいで」
そう言って私に手を広げてくるこの男
左手の薬指にはキラキラ光る指輪
中原 仁 (28)
そうこの人は既婚者
私たちは世間一般でいう”不倫関係”
そしてこの関係は
もう4年目にさしかかる
彼との出会いは
社会人サッカー
私はマネージャーで彼は選手
初めはただそれだけの関係だった
ここのサッカークラブは
少し変わっていて
毎年10月になると大きな大会がある
みんな社会人で忙しいせいか
9月くらいから本格的に毎日練習がある
あ、申し遅れましたが
私の名前は安藤 優里 (23)
普通の恋愛で普通の幸せを手に入れたい
本当にどこにでもいる女の子
もちろん私だって不倫ではなくて
一般の人と堂々と
手を繋いでデートをしたいと思う
自分でいうのもなんだが
仕事はすごくできるタイプ
アルバイト時代は基本的に
チーフや、バイトリーダーを任されて
ノルマは毎日達成している
んー顔はそんなに悪くないと思ってる
周りからは気配りができて
ノリが良くて一緒にいて楽しい
でも彼女にはしたくない
優って恋愛面除いたら最高の女だよな
なんていわれる
そう、私は恋愛面が全然だめ
重いっていうかすごくしつこい。笑
そんな私を優しく抱きしめてくれるのは
この手だけ
正直この関係になったきっかけなんて
覚えていない
ただ気がつけばいつのまにか
そばにいた
結婚してると知ったのは
去年の春
直接本人から聞いたわけではない
仁に先に行かれるとか負けたーと
先輩が呟いてた
ん?行かれる?レギュラーですか?て
聞くと
え。優ちゃん知らないの?
仁結婚したんだよ
私の頭の中は真っ白になった
昨日もいつものようにぎゅーて抱きしめて
おいで。と言われていたのに
気がつけば涙が流れていた
先輩は驚いた様子だった
私と仁くんの関係をどこまで知っていたかは
わからないけど
優ちゃんは笑ってる方が
かわいいよと言いながら
ポンポンと頭を撫でてくれていた
次の日仁くんに連絡をした
聞きたいことがあります
仁くんからは
すぐ俺に会いたくなるんだな~♡て
かえってきた。
この人の神経がわからない
そして彼に結婚したの?て問い詰めた
どんな否定をしてくるのかと思ってたけど
返事は
うん。相手知らんの?
え。私の知ってる人?
野村 亜美
え?野村亜美って圭のお姉ちゃん?
そう。
ただの不倫ならよかった
世の中に不倫してる人なんて
珍しくない
奥さんのことなんて知らなくて
知らない人ならどーでもよくて
自分たちが幸せなら
ただそれだけでよかった
だけど相手が私のよく知ってる人
そう野村亜美というのは
野村 圭のお姉ちゃん。
野村圭とは幼馴染で私の初恋の人
小さい頃から圭の家に遊びにいっていた
私は圭のお母さんとも仲がいい。
ちなみに私は仁君の家族とも仲がいい。
いつも家族総出で試合を観にくる中原家
試合会場について私を見つけると
笑顔で優ちゃーーん!って駆けつけてきてくれる
お互いのお母さんとメールもしてる。
そう。私は奥さんだけではなくて
両家を裏切っている
仁君はそんなことおかまいなしに
いつも私に甘い言葉をかけてくる
可愛いな。
誰にも渡さねえ。
練習に行く前に2人で出かけた
コートより少し前で車から降ろされて
なにもなかったように
おはようございます
と挨拶をする
試合の合間に”集合''とだけメールがくる
いつもの場所に向かう
コートから少し離れた場所の
公園の裏
ここで私たちは密会している
奥さんだけでなくチームメイトにも
ばれてはいけないこの関係
少し話をして抱きしめられてキスをして
別々の方向から時間差で戻る
近くで話し声がすると
ビクビクしながら
次の試合の相手は~と
業務連絡敬語に戻る。
そしてまた誰もいなくなったら
甘い顔で抱きしめてくる
優ちゃんからキスして。早く
してくれないと俺試合頑張れない
ずるいよ。仁君
そんな顔されたらいけないことって
わかってても体は動いてしまっていた
でもね。気づいてたんだよ
仁君から連絡がくるのはこの時期だけ
私は都合のいい女。
それでもよかった。
なんて綺麗事は言えない
会えば会うほど、その手で抱きしめられるほど
どんどん深みにはまっていく。
最後の引退試合
もちろん奥さんだって観にくる
奥さんは仁君を撮るのに必死だった
気づいてるかな?
仁君の首には
私が作ったお守りがついてること
毎年私が頼まれて作ってること。
仁君は点を決めたら私に微笑んでること
俺専用のカメラマンして。
て言われたから
私は常に仁君を撮ってること
ばれないようにたまに
違う人を撮ってること
奥さんは優しい笑顔で
私に話しかけてくる
優ちゃんもいつもマネージャー偉いね!
ありがとう!
優しくしないでください。
私はあなたを裏切ってます。なんて
もちろん言えるわけもないので
いえいえ!私はなにもしてませんよ!
奥さんの支えのおかげですね~なんて
心にもないことをベラベラ喋る
私に話しかけてくる奥さんの薬指には
仁君とお揃いの指輪がはまっている。
私のこと特別っていうなら
私も仁君とお揃いのものがほしい。
なんて
言ったことがある
そしたら仁君は
なにがいいかな~ちゃんと見とくから
楽しみにしとけよ!て
もらっとけばよかった。
最後の試合の前に私は
罪悪感に
押しつぶされそうで逃げるために
いらない。て言ったんだよね
自分から欲しい。て言ったくせに
それでも仁君は私を責めず
気使わせてごめんな。わかった。
でも俺はお前を見てるから
どこにいても何をしててもお前のことで
頭いっぱいやから。て
またそんな言葉かけてくる。
悪い人だよ
そんなこと言ってるくせに
監督に奥さんを笑顔で紹介して
肩を組んで写真を撮る。
去年は私と写真を撮るときに
バレないよーに手を腰に回しぎゅーって
してたくせに。
私が拗ねたらおいで。てしてたくせに
奥さんの手前そんなことなくなった
これが当たり前のこと。
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