異世界からの送り者

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1章-エルファッタの想いは伝わらない-

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 ある草原に一人の少女がいた。
 膝丈くらいの草が邪魔だ。周りは緑ばっかりだ。
 黒いジャケットの中に白いシャツ。首元にはリボンがある。プリーツスカートが風で揺れている。紺色のハイソックスローファーを履いていた。
 そう、これは地球という世界の学校という建物に通っていた人たちが着る服だ。制服というらしい。
 周りをキョロキョロしながら整備されている道へ、少女は草を掻き分け、前に進んでいく。

「あなたは誰だ」
 そう身分の高そうな服を着ていて、金髪碧眼に髪を後ろで一つにまとめていて馬に乗っていた。少女が言った。
「……私はアオイ。ここはどこなんでしょうか」
 嘲笑われること覚悟で聞いた。

「ここはアルテウツァ帝国だ」
 男は真面目に言った。
 少女はこう思った。
(本当に違う世界に来たんだ……)


 これが私の婚約者、アルファス・ラ・アルテウツァが異世界の少女に恋をした時だった。
(なんて残酷なのかしら……)
 ただ、そう思うだけだった。

***
「エルファッタ」
 そう呼ぶ声は冷淡だ。私はエルファッタ・ル・サヴァイオ。アルファスの婚約者だ。他の貴族と同じように政略結婚だ。そこに愛はない。
 エルファッタは銀髪碧眼で、腰まで続く髪にハーフアップをしている。

「はい、なんでしょう殿
 アルファスは耳をぴくっと反応させる。聞くと、予想する言葉が口から発せられた。
「やめないか、エルファッタ。殿下呼びは」
 そんなことは毎日聞いている。でも私は名前で呼びたいが拒否する。
「いいえ、毎日言っているように無理でございますわ。理由をお伺いしても?」
 その理由はとっくにわかってる。
「陛下と王妃に仲が良いことを見せつけるために決まっているだろう? お前は頭が足りないのか?」
 そんな皮肉を言ってきた。
「頭は足りておりますわ」
 目を細めて、口角をあげる。その微笑みからは感情が読み取れなかった。

 そこにアルファスはポツリと言う。
「気味が悪い笑みだな」

 ぎりぎりエルファッタにも聞こえる声だった。その言葉は静かな部屋にその言葉は響いた。気不味い。そんな空気に耐えられなかった。きっとアルファスもそんなことを思っているはずだ。
「私はこれで失礼致しますわ」
「……あぁ」
 きっと申し訳ないと思っている。アルファスのそばに幼い頃からいたから何となく思っていることはわかる。だけど、もう無理な気がしてきた。アルファスとは上手くやっていける自信がない。
「お言葉には気をつけあそばせ。あなたの恋人も怒るかも知れませんから」
 そう言い残して廊下に出る。

 殿下が「すまない」と言った気がした。


 正門へと向かう廊下を少し進んでいたら、異世界から来た国から指名された重要保護人物の転移者、アオイがいた。重要保護人物とは、アルテウツァ帝国が指名した大切にしなければならない人物のことだ。主に転移者や、国宝級の魔法などを生み出した人物が指名される。
 目が合う。少し気まずそうにエルファッタは会釈をする。アオイも真似をする。
「あなたも殿の部屋に?」
「え、あ、はい。の部屋に行くんです」
 ショックだった。エルファッタは殿下呼び止まりと自重しているのにアオイはアルファスだったこと。でも、感情を表に出してはいけないと淑女教育の内容を思い出す。
「ではご機嫌よう」
 淑女の礼をする。アオイも真似てきた。
「ご、ご機嫌ようっ……!」
 エルファッタはドレスの裾を持ち、美しく回した。その時に髪もふわっと舞い上がる。
 その姿をアオイは見ていた。
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