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1章-エルファッタの想いは伝わらない-
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夕食会の扉を執事が開ける。
「最後でしたのね。待たせてすみません」
淑女の礼…カーテシーをして、メイドが少し引いた椅子に座る。お酒がグラスに入れられる。
「あっ!お父様、今日…」
金髪の髪が巻かれていて、灰色の目が可愛らしい末の妹、スカーレットがロイアスファルに話しかける。ロイアスファルは優しい目で見ていて、頷いたり、褒めちぎったりしている。そんな姿をエルファッタと同じ銀髪碧眼の兄、エリファが食事をしているが無表情で羨ましそうに見ていた。
お母様…アリアが無言で、エリファと同じようにしていた。
スカーレットが話終わったことを確認して、エルファッタは口を開ける。
「「お父様」」
声が被った。金髪に薄い黄色の瞳の弟、ユリスが言いたげにしていた。
「…ユリスが先に言いなさい。私は後で良いわ」
「ありがとうございます。エルファッタ姉様」
ユリスは来年からエルファッタがすでに卒業した学園に通う。寮があるが、屋敷からも通える。
「お父様、学園のことなんですが」
「おお、何だねユリス」
ユリスは言いにくそうに口を開ける。
「寮じゃなくて、お屋敷から通いたいんです」
広間が無言の驚きに包まれる。ロイアスファルは答える。
「…そうか、ユリスが望むのならそうしよう」
「ありがとうございます」
ユリスの話が終わると、ロイアスファルの視線はエルファッタに向かれる。
「…エルファッタは何だい?」
ロイアスファルは、エルファッタが言うのをわかったようだった。
「アルファス殿下との婚約破棄を望みます」
この場にいる全員が目を丸くする。ユリスの時よりも驚かれる。エルファッタとロイアスファルを除いて。
「お待ちなさい、エルファッタ」
すぐに冷静になったアリアは、エルファッタに問う。
「あなたがそこまでに至った理由があるのでしょう。それは何かしら?」
エルファッタが眉を下げる。
「アルファス殿下の御心がないと…」
「そうではないはずよ、今のあなたは」
何でわかっているのか疑問を持ちながら言葉を発する。
「…いいえ、アルファス殿下の御心がないと思ったからですわ」
嘘の理由を口にした。冷や汗をかく。アリアは気づいているのか気づいていないのかがわからなかった。だが、ロイアスファルもアリアも真剣な眼差しで見ていた。
「…そう、そういうことなら」
ごくりと生唾を飲む。
「無理ね」
エルファッタは絶望した。
「理由をお聞きしても?」
泣きそうになるのを堪えて聞く。
「わかりきっていることでしょう?ね、ロイアスファル」
「ああ」
ロイアスファルは目を瞑る。
食事を続けたが、味がわからなかった。スカーレットの話さえも聞こえなかった。
「エルファッタ」
エリファが名前を呼ぶ。エルファッタはイロハに呼ばれたと言われて初めてわかったから反応に遅れた。
「エリファお兄様…」
一気に安心して涙が零れ落ちる。
「え…っ!ぁ、あのエルファッタ落ち着こう。俺の部屋行くか?」
エルファッタが頷く。エルファッタの手を引いてエリファの部屋に連れて行く。イロハはずっと黙ってついてきた。
「話は後で聞くから…」
いつもより、優しい声でさっきよりも涙の量が増して行く。
「え゛え…ありがと…っございま…っすわ…」
そうしてエルファッタの瞳から涙がずっと零れ落ちたままだった。
「最後でしたのね。待たせてすみません」
淑女の礼…カーテシーをして、メイドが少し引いた椅子に座る。お酒がグラスに入れられる。
「あっ!お父様、今日…」
金髪の髪が巻かれていて、灰色の目が可愛らしい末の妹、スカーレットがロイアスファルに話しかける。ロイアスファルは優しい目で見ていて、頷いたり、褒めちぎったりしている。そんな姿をエルファッタと同じ銀髪碧眼の兄、エリファが食事をしているが無表情で羨ましそうに見ていた。
お母様…アリアが無言で、エリファと同じようにしていた。
スカーレットが話終わったことを確認して、エルファッタは口を開ける。
「「お父様」」
声が被った。金髪に薄い黄色の瞳の弟、ユリスが言いたげにしていた。
「…ユリスが先に言いなさい。私は後で良いわ」
「ありがとうございます。エルファッタ姉様」
ユリスは来年からエルファッタがすでに卒業した学園に通う。寮があるが、屋敷からも通える。
「お父様、学園のことなんですが」
「おお、何だねユリス」
ユリスは言いにくそうに口を開ける。
「寮じゃなくて、お屋敷から通いたいんです」
広間が無言の驚きに包まれる。ロイアスファルは答える。
「…そうか、ユリスが望むのならそうしよう」
「ありがとうございます」
ユリスの話が終わると、ロイアスファルの視線はエルファッタに向かれる。
「…エルファッタは何だい?」
ロイアスファルは、エルファッタが言うのをわかったようだった。
「アルファス殿下との婚約破棄を望みます」
この場にいる全員が目を丸くする。ユリスの時よりも驚かれる。エルファッタとロイアスファルを除いて。
「お待ちなさい、エルファッタ」
すぐに冷静になったアリアは、エルファッタに問う。
「あなたがそこまでに至った理由があるのでしょう。それは何かしら?」
エルファッタが眉を下げる。
「アルファス殿下の御心がないと…」
「そうではないはずよ、今のあなたは」
何でわかっているのか疑問を持ちながら言葉を発する。
「…いいえ、アルファス殿下の御心がないと思ったからですわ」
嘘の理由を口にした。冷や汗をかく。アリアは気づいているのか気づいていないのかがわからなかった。だが、ロイアスファルもアリアも真剣な眼差しで見ていた。
「…そう、そういうことなら」
ごくりと生唾を飲む。
「無理ね」
エルファッタは絶望した。
「理由をお聞きしても?」
泣きそうになるのを堪えて聞く。
「わかりきっていることでしょう?ね、ロイアスファル」
「ああ」
ロイアスファルは目を瞑る。
食事を続けたが、味がわからなかった。スカーレットの話さえも聞こえなかった。
「エルファッタ」
エリファが名前を呼ぶ。エルファッタはイロハに呼ばれたと言われて初めてわかったから反応に遅れた。
「エリファお兄様…」
一気に安心して涙が零れ落ちる。
「え…っ!ぁ、あのエルファッタ落ち着こう。俺の部屋行くか?」
エルファッタが頷く。エルファッタの手を引いてエリファの部屋に連れて行く。イロハはずっと黙ってついてきた。
「話は後で聞くから…」
いつもより、優しい声でさっきよりも涙の量が増して行く。
「え゛え…ありがと…っございま…っすわ…」
そうしてエルファッタの瞳から涙がずっと零れ落ちたままだった。
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