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1章-エルファッタの想いは伝わらない-
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「カリア……様?」
エルファッタがそういうとカリアはにっこり笑い、手を差し出した。
「喜んで……ご用事は?」と言いながら、カリアが差し出した手にエルファッタの手も乗せる。
「終わったんです」
そして音楽が流れる。二人は軽やかにステップを踏んでいく。
「カリア様、手紙の……」
「ああ! あの事ですか?」
あの事とは、恋人にならないかと言うお誘いの事だ。
「アルファス皇子殿下はアオイ様に夢中なんでしょう?」
「そのお喋りなお口をお閉じくださいませ」
甘い話には耳を貸さない。話に夢中になりながらもダンスはやめない。
「殿下が婚約破棄するまで私は婚約者として居続けるのですわ」
それはエルファッタが決めたことだった。婚約破棄が認められないのなら、と思った結果だった。エルファッタはそれにと言う。
「それに、カリア様をそういう目で見たことはございませんもの」
目を少し瞑り、すぐに開ける。カリアに目を合わせなかった。
カリアとエルファッタは幼馴染だ。カリアが年上だが、いつも幼馴染のお兄ちゃんとして接していた。それぐらいシリズール家と仲がいい。もう、昔のようにカリア兄様とは呼んでくれない。
そしてダンスは終わった。
二人とも礼をする。立ち去ろうと思ったら、カリアが手を掴んできた。
「カリア兄……いいえ、カリア様どうしまして?」
急だったので兄様と呼んでしまいそうになった。
「返事、もうちょっと考えてくださいね。諦めきれないから……」
最後の方は聞こえなかったが今、返事を返す。
「殿下が私の隣に居なくなったら考えて差し上げます」
妖艶ににこりと笑った。淑女の笑みではなかった。それがエルファッタの今の答えだった。
カリアは何も言わないまま、エルファッタは貴族達の人混みにアルファスを探しにいった。
カリアが少しだけ、耳が赤くなっているとは気づかずに。
「殿下、ここにいましたの」
アルファスは未だに貴族達に話しかけに行っていた。話が終わるのを見計らって、エルファッタはアルファスに近づく。
「エルファッタ……」
アルファスは顔が赤くなっていた。熱ではなさそうだ。一体何が原因で……!?
「アオイ!」
アルファスは言った。ここにいる筈のない人物の名前を。エルファッタは視線を辿る。その先にいたのは___アオイだった。
走ってアオイの元に行く。アオイもアルファスに気づいたらしく、こちらに向かってくる。
(やめて、もう私を絶望させないで……っ!)
エルファッタは足が動かなかった。いや、動かそうとしなかった。
アオイはアルファス以外の人物に気がつく。
「エルファッタ……!」
憎悪を顔に滲ませる。アルファスは気づかずにアオイを抱擁する。貴族にとっての恥をかく。
アルファスの抱擁に気をよくしたアオイはニヤリと笑う。
(注目を集めてるわ! エルファッタ、ざまぁみろ)
貴族からの注目は嫌なものだった。婚約者がいる人に見せつけるなんて……と。
エルファッタは完璧な淑女だ。だから、皆がエルファッタに肩を持つ。
完璧な淑女であることは貴族達にとってお手本だ。爪先まで綺麗に保ち続けた結果がこうなのだろう。
アオイを笑い続ける貴族。その異変にアオイは気がつく。だけど無視をする。だって私達、今最高潮に幸せなのですから! と思い続ける。
「転移者殿……?」
カリアが近づき、アオイに話しかける。
(第二の攻略者! 確か名前は……)
考えを張り巡らせている間にエルファッタが近づいていたみたいだ。
「「カリア様!」」
と言ったと同時に何者かが名前を呼んでいた。その何者かはエルファッタだった。
「カリア様、なぜここに……?」
エルファッタはアオイにお辞儀してから話しかける。
「……ここでの話は目立ちます。三人とも、応接間に案内させて」
カリアの側近に案内を命じる。はっと返事をする。
カリアの父、シリズール伯爵は声をあげる。
「皆の者! 騒がせてすまない。まだ楽しんでくれ」
そんな声が後ろで聞こえる。カリアが丁度周りが見えない位置にいるので見えないが、その他の貴族は多分シリズール伯爵よりもこちらを向いているのだろう。
「エルファッタ嬢、前を向いて」
優しい声で言われる。エルファッタは言われた通りに前を向く。
前を向いたら、アルファスとアオイが手を繋いでいるのを見て悲しくなった。そんなエルファッタをカリアは無力感を感じながら見ていた。
応接間につく。ソファに座ろうと思ったら、アルファスとアオイは横に座るみたいで仕方なく少し間を開けてアオイの横に座った。カリアは目の前の席に座る。
「あの……」
コンコンと扉が叩かれる。
「誰だ」
とカリアが言う。
「皇帝皇后両陛下の従者です。アルファス皇子殿下の監視を承り、こちらに参りました」
「はっ!?」とアルファスが驚く。聞かされていなかったのだろう。
「入りなさい」
そしてガチャと扉が開かれる。そこには夜会にいた貴族と何も変わらない服を来た人がいた。腕は後ろで組んでいた。威厳があるように見える。
「ナーリット、ハフイ……」
どうやらアルファスも知っている人物だったらしい。
右にいる人が喋り始めた。
「今先程皇子が言われました通り私がナーリットでございます。こちらがハフイです」
お辞儀をする。
「ここに来ましたのは、エルファッタ様への扱いについてです」
エルファッタがそういうとカリアはにっこり笑い、手を差し出した。
「喜んで……ご用事は?」と言いながら、カリアが差し出した手にエルファッタの手も乗せる。
「終わったんです」
そして音楽が流れる。二人は軽やかにステップを踏んでいく。
「カリア様、手紙の……」
「ああ! あの事ですか?」
あの事とは、恋人にならないかと言うお誘いの事だ。
「アルファス皇子殿下はアオイ様に夢中なんでしょう?」
「そのお喋りなお口をお閉じくださいませ」
甘い話には耳を貸さない。話に夢中になりながらもダンスはやめない。
「殿下が婚約破棄するまで私は婚約者として居続けるのですわ」
それはエルファッタが決めたことだった。婚約破棄が認められないのなら、と思った結果だった。エルファッタはそれにと言う。
「それに、カリア様をそういう目で見たことはございませんもの」
目を少し瞑り、すぐに開ける。カリアに目を合わせなかった。
カリアとエルファッタは幼馴染だ。カリアが年上だが、いつも幼馴染のお兄ちゃんとして接していた。それぐらいシリズール家と仲がいい。もう、昔のようにカリア兄様とは呼んでくれない。
そしてダンスは終わった。
二人とも礼をする。立ち去ろうと思ったら、カリアが手を掴んできた。
「カリア兄……いいえ、カリア様どうしまして?」
急だったので兄様と呼んでしまいそうになった。
「返事、もうちょっと考えてくださいね。諦めきれないから……」
最後の方は聞こえなかったが今、返事を返す。
「殿下が私の隣に居なくなったら考えて差し上げます」
妖艶ににこりと笑った。淑女の笑みではなかった。それがエルファッタの今の答えだった。
カリアは何も言わないまま、エルファッタは貴族達の人混みにアルファスを探しにいった。
カリアが少しだけ、耳が赤くなっているとは気づかずに。
「殿下、ここにいましたの」
アルファスは未だに貴族達に話しかけに行っていた。話が終わるのを見計らって、エルファッタはアルファスに近づく。
「エルファッタ……」
アルファスは顔が赤くなっていた。熱ではなさそうだ。一体何が原因で……!?
「アオイ!」
アルファスは言った。ここにいる筈のない人物の名前を。エルファッタは視線を辿る。その先にいたのは___アオイだった。
走ってアオイの元に行く。アオイもアルファスに気づいたらしく、こちらに向かってくる。
(やめて、もう私を絶望させないで……っ!)
エルファッタは足が動かなかった。いや、動かそうとしなかった。
アオイはアルファス以外の人物に気がつく。
「エルファッタ……!」
憎悪を顔に滲ませる。アルファスは気づかずにアオイを抱擁する。貴族にとっての恥をかく。
アルファスの抱擁に気をよくしたアオイはニヤリと笑う。
(注目を集めてるわ! エルファッタ、ざまぁみろ)
貴族からの注目は嫌なものだった。婚約者がいる人に見せつけるなんて……と。
エルファッタは完璧な淑女だ。だから、皆がエルファッタに肩を持つ。
完璧な淑女であることは貴族達にとってお手本だ。爪先まで綺麗に保ち続けた結果がこうなのだろう。
アオイを笑い続ける貴族。その異変にアオイは気がつく。だけど無視をする。だって私達、今最高潮に幸せなのですから! と思い続ける。
「転移者殿……?」
カリアが近づき、アオイに話しかける。
(第二の攻略者! 確か名前は……)
考えを張り巡らせている間にエルファッタが近づいていたみたいだ。
「「カリア様!」」
と言ったと同時に何者かが名前を呼んでいた。その何者かはエルファッタだった。
「カリア様、なぜここに……?」
エルファッタはアオイにお辞儀してから話しかける。
「……ここでの話は目立ちます。三人とも、応接間に案内させて」
カリアの側近に案内を命じる。はっと返事をする。
カリアの父、シリズール伯爵は声をあげる。
「皆の者! 騒がせてすまない。まだ楽しんでくれ」
そんな声が後ろで聞こえる。カリアが丁度周りが見えない位置にいるので見えないが、その他の貴族は多分シリズール伯爵よりもこちらを向いているのだろう。
「エルファッタ嬢、前を向いて」
優しい声で言われる。エルファッタは言われた通りに前を向く。
前を向いたら、アルファスとアオイが手を繋いでいるのを見て悲しくなった。そんなエルファッタをカリアは無力感を感じながら見ていた。
応接間につく。ソファに座ろうと思ったら、アルファスとアオイは横に座るみたいで仕方なく少し間を開けてアオイの横に座った。カリアは目の前の席に座る。
「あの……」
コンコンと扉が叩かれる。
「誰だ」
とカリアが言う。
「皇帝皇后両陛下の従者です。アルファス皇子殿下の監視を承り、こちらに参りました」
「はっ!?」とアルファスが驚く。聞かされていなかったのだろう。
「入りなさい」
そしてガチャと扉が開かれる。そこには夜会にいた貴族と何も変わらない服を来た人がいた。腕は後ろで組んでいた。威厳があるように見える。
「ナーリット、ハフイ……」
どうやらアルファスも知っている人物だったらしい。
右にいる人が喋り始めた。
「今先程皇子が言われました通り私がナーリットでございます。こちらがハフイです」
お辞儀をする。
「ここに来ましたのは、エルファッタ様への扱いについてです」
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