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1章-エルファッタの想いは伝わらない-
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ナーリットとハフイと呼ばれる人物は、他の貴族と変わりない服装をしていた。ナーリットはスミレ色の短髪で、ハフイは色素の薄い茶色の髪をしていた。少し癖っ毛なのか毛先がくるんとしている。
「私の……?」
ハフイが話す。
「はい。皇子も知っています通り、皇帝皇后両陛下がエルファッタ様への扱いが酷い等を知らされたために今回の夜会でエルファッタ様への扱いが良かったら処罰を軽くしてやろうという事でこちらに参りました」
「処罰!?」
エルファッタは見本のような表情で驚く。そんなことになっているだなんて。
「アルファス……もう一緒にいられないの?」
甘えるように、縋るようにアオイはアルファスを見る。キュンと胸が締め付けられる。それと同時に何も出来ない無力感にやるせなくなる。
アオイはというと、他の攻略者も落とせないじゃないとアルファスを妬んでいた。いつまでも自己中だった。
「アルファス皇子殿下。報告は帰ってからしますが……エルファッタ様を大切に出来たと感じておりますか?」
急にアルファスに訪ね、話を聞いていなかったことを悔やむ。
「……まあ………」
静かな沈黙が流れる。もしかして、同意してはいけないことに同意してしまったのではないかと冷や汗をかく。
「本当でございますか? 殿下」
エルファッタが床を見ながら口を開けて言葉を発する。アルファスのことを見てはいなかった。その顔はもう感情がこもっていなかった。
「いや、違う……」
「男に二言はなしですよ」
ハフイが言う。ナーリットよりも位が高そうだ。
「うぅ……」
アルファスは項垂れる。何の話題かわからない。適当に流すのはいけないと思った。だがそれも遅い。やってしまったことに変わりはないのだ。
「エルファッタ様!! 酷いです」
「何を仰っているのですか? 転移者様」
カリアからの冷たい笑顔でぱくぱくと口を動かして、言葉が出せなくなる。
「~~~~っ!!」
エルファッタが悲しそうにアオイを見る。
(何よ……! 自分が可哀想みたいな顔して!! マジ腹立つ)
あの黒い男といる方がマシよ。中々も美形だったし……。性格も声も甘言も良いし。恋しい……。
しゅん、と大人しくなる。
「俺を呼んだか? ヒロインさんよ」
このことには一同驚いた。急にアオイの右横、エルファッタの左横に座っていたからだ。それにアオイに肩を組んでいた。
その男は甘い匂いを纏っていて、黒色のさらさらの長髪はちゃんと手入れされていた。白色のシャツはシワになっていて、くたびれていた。
「だっ誰!? きゃっ」
エルファッタもガシッと肩を掴まれ、男の間合いに入る。反抗するも力が強くて出られない。
「男子共、あっちに行け。ちょっとでも変な事をしたら殺す」
超低音の声を響かせる。殺すと言う言葉がこんなにも重いのかと実感する。エルファッタが涙目になっていた。
「あなたは……誰ですか? 名前……」
冷酷無慈悲な目をしていると思ったら、意外にも優しく虫すら殺さないような目をしていた。そのことにエルファッタは驚く。
「俺は……カラスだ」
そう言ってまた目線を男子に戻す。エルファッタに向けた目線は少しだけ哀しそうに見えたのは気のせいだろうか。
アオイはこの男に対し、また助けてくださる。私の王子。と思っていた。アオイにとって、アルファス以上に大切な人かもしれない。
「あ……の、カラス様。ちょ……と、少し、離れて……」
エルファッタは顔を赤らめる。ゆでだこのようになっていた。エルファッタは距離、節度を持っているのであまり男性に慣れていない。
「無理だよ」
カラスと呼ばれる男はにっこり笑って、さらに力を強める。きゃっ、と言う、男性陣の厳しい視線が痛いなぁとカラスはぼやく。
アオイは嫉妬していた。
(どれだけ魅了すんのよ泥棒猫)
醜く歪んだこの顔は見せられないのでカラスの体にうずめる。
「アオイッ!」
どれだけ言っても、アルファスの呼びかけに応じない。
ようやくアルファスが落ち着いてきた。カリアはカラスに話しかける。
「カラス、何を望む」
「なーんにも!」
二人を脇に挟んだまま両手を広げる。
カラスが男子と雑談……と呼べるものではないが、話していた。そんな時に扉は強引に開かれる。
「エルファッタ!!」
エルファッタの父だった。後ろには夜会が終わったのだろうカリアの父もいた。
「お、父様……助け、むぐっ」
カラスに口を塞がれる。息が出来ないと拳をつくり、カラスを叩く。やっとカラスが離してくれる。そうすると、カラスはアオイの方を向く。
「アオイ、ヒロインだから出ていってもらいたいけど……」
「無理に決まっているじゃないですか」
そんな言葉が聞こえた気がした。その内に出ようとする。だが、圧倒的な力の差でどうしても出られない。
(エルファッタを好き勝手にしやがって……)
カリアもウィアルアもロイアスファルも苛々し始めていた。アルファスを除いて。アルファスだけはアオイを心配していた。アルファスを見ずにカラスの体にうずまっている彼女を。
「おい、お前!! いい加減にしろ。いつまでもここにいる訳にはいかない」
カリアの父、ウィアルアは声を上げた。苛々していたらしい。
「んじゃ、お暇しまーす」
そう言ってアオイとエルファッタとカラスは目の前から消えた。
そこには、魔法の気配が漂っていた。
「私の……?」
ハフイが話す。
「はい。皇子も知っています通り、皇帝皇后両陛下がエルファッタ様への扱いが酷い等を知らされたために今回の夜会でエルファッタ様への扱いが良かったら処罰を軽くしてやろうという事でこちらに参りました」
「処罰!?」
エルファッタは見本のような表情で驚く。そんなことになっているだなんて。
「アルファス……もう一緒にいられないの?」
甘えるように、縋るようにアオイはアルファスを見る。キュンと胸が締め付けられる。それと同時に何も出来ない無力感にやるせなくなる。
アオイはというと、他の攻略者も落とせないじゃないとアルファスを妬んでいた。いつまでも自己中だった。
「アルファス皇子殿下。報告は帰ってからしますが……エルファッタ様を大切に出来たと感じておりますか?」
急にアルファスに訪ね、話を聞いていなかったことを悔やむ。
「……まあ………」
静かな沈黙が流れる。もしかして、同意してはいけないことに同意してしまったのではないかと冷や汗をかく。
「本当でございますか? 殿下」
エルファッタが床を見ながら口を開けて言葉を発する。アルファスのことを見てはいなかった。その顔はもう感情がこもっていなかった。
「いや、違う……」
「男に二言はなしですよ」
ハフイが言う。ナーリットよりも位が高そうだ。
「うぅ……」
アルファスは項垂れる。何の話題かわからない。適当に流すのはいけないと思った。だがそれも遅い。やってしまったことに変わりはないのだ。
「エルファッタ様!! 酷いです」
「何を仰っているのですか? 転移者様」
カリアからの冷たい笑顔でぱくぱくと口を動かして、言葉が出せなくなる。
「~~~~っ!!」
エルファッタが悲しそうにアオイを見る。
(何よ……! 自分が可哀想みたいな顔して!! マジ腹立つ)
あの黒い男といる方がマシよ。中々も美形だったし……。性格も声も甘言も良いし。恋しい……。
しゅん、と大人しくなる。
「俺を呼んだか? ヒロインさんよ」
このことには一同驚いた。急にアオイの右横、エルファッタの左横に座っていたからだ。それにアオイに肩を組んでいた。
その男は甘い匂いを纏っていて、黒色のさらさらの長髪はちゃんと手入れされていた。白色のシャツはシワになっていて、くたびれていた。
「だっ誰!? きゃっ」
エルファッタもガシッと肩を掴まれ、男の間合いに入る。反抗するも力が強くて出られない。
「男子共、あっちに行け。ちょっとでも変な事をしたら殺す」
超低音の声を響かせる。殺すと言う言葉がこんなにも重いのかと実感する。エルファッタが涙目になっていた。
「あなたは……誰ですか? 名前……」
冷酷無慈悲な目をしていると思ったら、意外にも優しく虫すら殺さないような目をしていた。そのことにエルファッタは驚く。
「俺は……カラスだ」
そう言ってまた目線を男子に戻す。エルファッタに向けた目線は少しだけ哀しそうに見えたのは気のせいだろうか。
アオイはこの男に対し、また助けてくださる。私の王子。と思っていた。アオイにとって、アルファス以上に大切な人かもしれない。
「あ……の、カラス様。ちょ……と、少し、離れて……」
エルファッタは顔を赤らめる。ゆでだこのようになっていた。エルファッタは距離、節度を持っているのであまり男性に慣れていない。
「無理だよ」
カラスと呼ばれる男はにっこり笑って、さらに力を強める。きゃっ、と言う、男性陣の厳しい視線が痛いなぁとカラスはぼやく。
アオイは嫉妬していた。
(どれだけ魅了すんのよ泥棒猫)
醜く歪んだこの顔は見せられないのでカラスの体にうずめる。
「アオイッ!」
どれだけ言っても、アルファスの呼びかけに応じない。
ようやくアルファスが落ち着いてきた。カリアはカラスに話しかける。
「カラス、何を望む」
「なーんにも!」
二人を脇に挟んだまま両手を広げる。
カラスが男子と雑談……と呼べるものではないが、話していた。そんな時に扉は強引に開かれる。
「エルファッタ!!」
エルファッタの父だった。後ろには夜会が終わったのだろうカリアの父もいた。
「お、父様……助け、むぐっ」
カラスに口を塞がれる。息が出来ないと拳をつくり、カラスを叩く。やっとカラスが離してくれる。そうすると、カラスはアオイの方を向く。
「アオイ、ヒロインだから出ていってもらいたいけど……」
「無理に決まっているじゃないですか」
そんな言葉が聞こえた気がした。その内に出ようとする。だが、圧倒的な力の差でどうしても出られない。
(エルファッタを好き勝手にしやがって……)
カリアもウィアルアもロイアスファルも苛々し始めていた。アルファスを除いて。アルファスだけはアオイを心配していた。アルファスを見ずにカラスの体にうずまっている彼女を。
「おい、お前!! いい加減にしろ。いつまでもここにいる訳にはいかない」
カリアの父、ウィアルアは声を上げた。苛々していたらしい。
「んじゃ、お暇しまーす」
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そこには、魔法の気配が漂っていた。
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