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初代転移者の話 001

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 少し昔話をしましょう。
 それはとてもとても昔の話です。地球という世界の中の国がとても発達していた頃の話でした。

 いつも一人ぼっちのある少女がいました。真っ赤で綺麗な紐で結ばれた茶色の三つ編みに古臭いセーラー。セーラーは青い襟に二つの白い線がひかれていて、赤いスカーフ。それに青いプリーツスカート。茶色のローファー靴を履いていました。紺色のソックス、その姿は初代転移者に似ていました。
 ある少女は地球という世界に復讐をしたかったのです。少女は毎日いじめられて、親やクラスメイトが暴力を振るわれ、体中に痣ができていました。貯金も削られていき、どこかに出かけれる状態ではなかったのです。
 連絡手段はなく、どこにも『助けてs o s』を伝えられませんでした。

 そんな時、少女を助けてくれる“おとこのこ”が現れました。おとこのこは短く黒い髪をしていて、青い瞳をしていました。青い瞳は謎の雰囲気を醸し出していました。そのおとこのこは少女の助けてを聞いてあげたのです。

『いじめられている、虐待をされ、暴力を振るわれている。痛い、助けて』

 おとこのこはまず少女に聞きました。
『暴力を振るったクラスメイトと親を、この地球を恨んでいますか?』
 少女は涙を溢しました。それから悩むことなく、
『恨んでいるに決まっているわ』
 と言いました。おとこのこは怪しく笑いました。
『じゃあ、この世界にはもう居たくない?』
 少女は考えました。この地球を復讐できないと思ったからです。
『私がここに居なくても復讐できるなら』
 そう言いました。
『それなら違う世界に行くけど、そこで復讐できる術を持てるなら?』
『行きたいわ。でも、そんな非現実的なこと言ってどうするのよ』
 即答でした。でも、叶わない夢を連ねているだけで叶うはずはありません。でも、おとこのこにはそんな非現実的なことをできるのです。おとこのこの、この事は誰にも秘密でした。でも、初めて誰かに打ち明けたいという気持ちができたのです。

 少女に話しました。秘密だった筈のことを全て打ち明けてしまいました。少女は驚きました。そんなことが出来るなんて、と。でも、いつの間にか好きという気持ちを謎のおとこのこに対して持っていたのです。この気持ちはずっと少女の胸に置いていました。だから、そんな事ないと思うけれどすんなりと受け入れました。

『ありがとう、秘密を話してくれて』
 その後に綴る言葉を探していました。でも、謎のおとこのこは少女の手を握りました。そして、こう言いました。
『あっちの世界に行ったら、俺と一緒に暮らしてくれるか?』
 自分から言いたかった事を言われてしまいましたが、とても嬉しかったのです。
『もちろん!』

 これが、今よりもずっと酷い悲しみの始まりだったのでした。


 あっちの世界に来ました。アルテウツァ帝国という所でした。転移というのでしょうか。気がつけば、草原にいました。風が吹き、茶色の三つ編みが動きました。

 ガサガサと草を分け、草が刈り取られている道のような所に出ました。

 門の前に行くと、おとこのこの顔を門番は見てギョッとしたかと思うと、頭を下げました。
『どうぞお通りなさいませ』
 おとこのこは門番に少し礼をした。門が開いていく。
 見慣れない服を着ている少女は周りの人から注目を浴びます。いえ、それだけではありません。謎のおとこのこも注目されていました。少女は慣れない様子でしたが、おとこのこは何も気にせず歩いていました。裏路地に入ったかと思うと、少女を連れて屋根の上に飛びました。口を塞がれていたので何も叫びませんでした。でも、とても驚いていました。少しすると、誰かに追いかけられていたみたいです。さっきまでいた裏路地に悪そうな男達が来ました。キョロキョロと周りを見渡して、舌打ちをしました。それは分かれ道になっていたからでしょうか。二手になって分かれました。
 おとこのこは何処かへ向かっています。
『どこに向かっているの?』
 聞きました。でも、答えてくれません。それどころか見向きもしません。何回も聞きましたが、何も反応する事はないので諦めかけたその時でした。
『俺の家』
 とだけ言いました。
 初めての男の家に入ると緊張してきました。

『着いたよ』
 顔を上げるとそこには、新しい洋館がありました。

 中から、何か声がします。
『助けて……』
 という声が。
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