勇者パーティの一員ですが、転生チートがまさかのマヨビームでした。……マヨビームで世界って救えますか?

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本編以外のお話

猫の手ならぬドラゴンの手

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きゅっきゅ~~。

愛らしい鳴き声とパタパタという羽音が響く。
おしぼりを入れた籠をくわえたまま差し出せば、きゃあ!かわいいー!と声がもれた。

女性やこどもに大人気のマスコットの正体は黒いドラゴン。

本来なら人から畏怖されるその魔物はやたらと可愛らしい外見をしている。

宝石のような黒いうろこに覆われた体、つやつやした藍色のお目め。
お腹の部分は白で、小っちゃな羽と尻尾もラブリーなドラゴンはまるでぬいぐるみのようだ。
しかも人懐っこく愛くるしい動きをするものだからとても危険な魔物とは思えず、常連さんたちはたいていソルトをこの店のマスコットとして受け入れていた。

……たまに初見のお客さんが謎生物にびっくりして硬直してるけど。

「ソルトー、これ3番テーブルにお願い」

きゅっきゅ~~。

メニューを手渡せば、小さい両手で胸にメニューを抱くようにしてお客さんへと運んでくれる。

連日大盛況の食堂はまさに猫の手も借りたい程の大忙し。
エマの従魔でもあるソルトだって立派な従業員の一員なのだ。

ミトンを手に、アツアツのグラタン皿を席へと運ぶ。
テーブルにコルクマットを置き、その上にグラタン皿をのせた。まだチーズがぐつぐつしてる皿からは湯気といい匂いが漂う。

「お待たせ。追加注文のジャガイモの明太子マヨネーズ焼き」

「おおっ!うまそー!」

「熱いから気をつけてね」

「熱っ!!」

「だから言ったじゃん!ほらお水!」

ううっ……と赤くなった舌をだすクルトにエマは氷入りの水を差し出した。

相変わらずこの勇者さまはこの店の常連である。
もはや毎日顔を合わせている気がする。

氷を舌の上にのせて冷やしつつ「そーいえばさー」とちょっぴり不明瞭な発音で横眼を向ける。その視線が向いた先はお客さんになでられているソルトだ。

「あいつ、なんで人型になんねーの?」

「さぁ、楽なんじゃない?」

人型にもなれるソルトだが、燃費の問題なのかなんなのか基本はドラゴン態だ。本来の姿だと流石にマズいので可愛らしいミニサイズ。

おしゃべりしたいときや人の姿の方が便利なときは変化するが、あまり人化は好きでないっぽい。

少年の姿ならおしぼりやメニューだけでなく、お水や料理も運んでもらえてとても助かるのだが……。

まぁ、そんな本音はさておき、お店の名物マスコットと化しているのでそれはそれでいいのだけれど。

きゅっ、きゅ?きゅきゅっ。

甘えるような鳴き声に拭いていたテーブルから顔をあげる。
声のする方を見れば……危惧したとおりの光景があった。

入り口付近のテーブルにちょこんと乗ったソルトはおねだりするように女性客のお皿をのぞきこんでいた。
ハンバーガーセットを頼んだお客さまだ。

つぶらな瞳で見つめられた女性たちがどうしよう?という風に顔を見合わせてからポテトをつまんだ。
「食べる?」とさしだせばお目めをキラキラさせてパクリとかじりつく姿に「かわいー!」と歓声をあげもう1人の女性もポテトを差し出す。
またもパクリとポテトにかじりついたソルトの襟首をエマは掴み上げた。

「ソ~ル~ト~!」

低い声で名を呼びながら顔の前にぶらさげれば、パタパタと羽がゆれた。

「お客さまのお食事の邪魔しない!!……大変失礼いたしました」

キッ!とソルトを睨みつけてから女性客たちに謝る。

女性たちは気を悪くした風もなく「大丈夫ですよぉ」「ね、かわいいし」と手を振ってくれるが、お客さまに料理をねだるなどあるまじき行為だ。

ぷらーん、と襟首をつかんだまま回収すれば、きゅきゅ~と不満そうに鳴く頭をパチリと叩く。

結構な常習犯だ。
おねだりが通用しような相手を選んでるあたり、わりとあざとい。

きゅうぅぅ~~!!

「もうすぐお昼ごはんだからガマンしなさい!」

きゅきゅっ?

「ハンバーグにナポリタン、お子様ランチ風」

きゅっきゅ~~♪

鳴き声なので正確にはわからないが……最初が「おなかすいたー」で次が「きょうなぁに?」で「やった~~♪」的な感じだ。たぶん。

「人語じゃなくてもわりと言葉通じてるよなー」

日替わり定食を食べ終え、追加メニューまでしっかり完食したクルトがしみじみ呟く。



異色なお客さまも訪れる大人気の定食屋では、お店のマスコットの黒いドラゴンが今日もお手伝いしています。

「こらー!またつまみ食いして!!」

ときどきつまみ食いもしては怒られてるのもご愛敬。
可愛らしいマスコットの接客を受けたい方はぜひご来店くださいませ!
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