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女子の大好物、恋バナです
しおりを挟む部屋には自分たちと侍女しかいないのに、ちらりと周囲を窺うようにしたあとでエリザベスが「ところで……」と身を乗り出した。
控えめにいっても輝いている笑顔にエマは次に出される話題を悟る。
「詳しく聞きたいですわ、アスト様のこと」
「なっ……」
興味津々な顔を向けられたミレーヌが慌てふためく。
先日、会話のなかでちらっとアストのことが話題にでた。
詳しく話を聞きたかったエリザベスだが、そのときは男性陣もいたので自重した。
そして女子会を設けたのだ。
「べ、別に私とアストさんはなんでも…………」
小さな声でもごもご言いつつごまかすようにお茶を飲むミレーヌの姿に、エリザベスの顔はエマへと向いた。目がキラッキラに光っている。
「エマ、アスト様はどんな方なの?!エマたちと同じ前世の記憶を持つのよね?」
「うん、そうみたい。外見はねー、クールで知的な貴公子様って感じかな?」
「恰好いいのね?」
「美形だね。中身ヘタレだけど……。私たちの居た世界の物語にでてくる女の子のファンでさ、その子に似てるミレーヌちゃんに一目惚れしたみたい」
「は?」
声のトーンが数トーン下がった。
据わった目のままエリザベスがミシリとテーブルを掴む。
「他所の女の代わり、ってこと?」
不穏な空気をかもしだすエリザベスにエマは「ちがう、ちがう」と軽く手を振った。
「切っ掛けはそれだけど、ちゃんとミレーヌちゃん本人を好きだから」
「エ、エマさん……!す、すき……だなんて……」
ぷしゅうっ~と蒸気をあげつつミレーヌが顔を両手で覆った。大変可愛らしい。
見た目だけが好みで、ミレーヌ本人を蔑ろにするようならエマだって許さない。
エリザベスも納得したようで、ミレーヌが茹りすぎない程度に質問を繰り出す。
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「そ、それこそ……!?ベス様はどうなのです?」
どうにか追求から逃れたい一心だったのだろう、珍しくミレーヌが声を大きくして逆に問いかけた。
それに今度はエリザベスの頬が赤く色づく。
「私も聞きたーい!」
香り高い紅茶を楽しみつつ、エマも乗っかった。によによ笑う。
「こーんなにキレイになったのは、ダイエットだけじゃなくて“恋のおかげ”でもあったり?やっぱ女の子にとって一番のキレイになる方法は“恋をすること”なの?」
「もうっ!からかわないでっ」
「ですが本当にお綺麗になられましたわ」
「ねー、再会したとき「へ?」ってなったもん。前も可愛かったけどさ」
帰還して一番の衝撃。
それはぽっちゃりだったエリザベスが華奢な美少女へ変貌を遂げていたこと。
顔立ちは元々整っていたし、ふっくらしているのはあれはあれで可愛かった。
だけどどうやら彼女はエマたちが旅に出たあともカロリー制限やダイエットを頑張ったようだ。
結果、大変身をとげた。
思わず2度見した。
レオンなんて妹の変貌ぶりに自分の頬をつねってた。
そして自分ではなく、親友に真っ先に抱きついた事実にしょんぼりしていた。
「幼馴染のようなご子息、でしたよね?」
ミレーヌの問いに、こくりと小さくエリザベスが頷く。
劇的ビフォーアフターをとげた彼女はたちまち人気者になった。
もともと王族のみなさまに溺愛されているお姫さまだ。
その立場だけでお近づきになりたい人は多い、そしてそれが美しい姫ともなれば……あわよくば!と子息たちが群がるのは当然。
「彼は……ディックは宰相の息子だから……小さい頃から顔を合わせることも多かったの。でも、彼のお兄さまたちと比べて顔は普通だし……あまり興味はなかったんだけど……」
気まりが悪そうにぼそぼそと小さく呟く。
イケメン勇者であるクルトに一目ぼれ?したっぽい過去からもエリザベスはわりと面食いなのだろう。
なお、くだんのディックくんはエマも1度ちらっと顔を合わせたことがあるが……普通にイケメン。
大好きなお兄さまであるレオンたちや、宰相さまファミリーの顔面偏差値が上限突破してるだけ。まわりが美形だらけだと、ときにこういう弊害が起きる。
「急に態度を変えてくるご子息たちが増えて……強引な誘いに困ってたときに助けてくれたの。思えば彼は……昔からそうだった。太った私のことだってバカにしないで優しくて……」
ぽっと頬を染めて語る姿は、100%恋する乙女そのものだった。
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