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【その後】
転生司祭は転職したい 9
しおりを挟む必死に二人を思いとどまらせようとするも肝心の二人の意思が微塵も揺らいでくれない。くっ、手強い。
この件に関しては時間をかけてゆっくりと話し合おう。
「でも意外でした。今まで一言もそんなこと仰らなかったので」
「まぁ、司祭ですしね」
アーサーの言葉に苦笑いで返す。
「確かに全然違う職業ですもんね」と笑うユリアには小さく首を振った。
「それもあるんですけどね。ほら、司祭は刃物が使えませんし」
僕の言葉にみんなが「あっ」と声を上げる。
聖職者は「血を流すことを禁ずる」戒律のために刃物を使えない。
中世ヨーロッパとかではどうだったかわかんないけど、この世界では刀剣だけでなく日常生活で使う類の刃物さえ聖職者は手にしない。超不便。
そもそも僕的には刃物はダメでメイスはOKなのもよくわかんない。
メイスで殴打したって血ぃ出るじゃん!
むしろ剣でザクッよりメイスでフルボッコの方が残酷な気がするのは僕だけだろうか。
因みに杖で「えいっ☆」と魔物の脳天打ち砕くヨハンくんに「ひぃ!」ってなってる僕はメイスは使わない派です。専ら魔術専門。
みんなは僕が刃物NGなのを忘れてたらしく「そういえば」と納得中。
でしょー?包丁使えない料理人とかないよね。
「じゃあ司祭様じゃなくなったらこれからは包丁も使えるんですね」
「ええ。旅の間と違って刃物以外にも食材も道具も色々使えますし、凝ったお菓子なんかも作れますよ」
「わぁい!!楽しみ♡」
「俺は肉料理がいいです!!」
「オレも喰う」
なに作ろっかなー。あー楽しみ!!
「でもミシェル様のご功績を知ったら全力で教会が引き留めてきそうな気が……」
ヨハンくーん!!
敢えて若干目を逸らしてたこと突き付けるのやめてー。
上がってたテンションがダダ下がった。
教会だって個人の意思を強要はできないからここはもう強行突破しかないよね。
そしてアーサー、ユリア。説得お手伝いしますは嬉しいんだけど、キミたちの説得は実力行使すぎて怖そうだから気持ちだけ貰っとく。
自分で頑張るよ。
さ、最終手段では頼っちゃおっかな……?
結局、誰だって自分が可愛いわけで、僕の内なる天使と悪魔が言い争って天使が負けそうになってるところで「あっ」とアーサーが声を上げた。
「そうだ!ミシェル様、コレをっ!!」
腰に手をやり、捧げ持つように差し出されたそれは……。
「聖剣?」
男の子なら誰でも憧れるような格好いいデザインの剣。
鞘に入ったまま押し付けられたそれを手にしたまま首を傾げる。
だって唐突に聖剣を手渡された意味がわからない。
「この剣、すっごく切れ味いいんですよ!!刃物解禁なら是非お役立てください」
「なににっ?!」
「えっ?だって調理するんですよね?あっ……剣のままじゃ使いにくかったですね。すみません。すぐドワーフの名工に包丁に打ち直して貰いますね」
「聖剣をっ?!」
この子、聖剣をなんだと思ってんのっ?!
聖剣だよっ??
勇者の必須アイテムだろっ?!
そりゃあ切れ味いいよ!だって聖剣だもん!
魔王も斬れる聖剣様だよっ??
それを包丁に??
魔王を切った剣で料理なんてしたくないし、頼まれたドワーフだって泣くわ!
それかブチ切れる。
僕と仲間たちの必死の説得もあって聖剣は無事勇者の腰に戻った。
「あーー、ほら、アーサー。切れ味良すぎてミシェルが指切ったりしたら大変じゃん」
勝因はジャンさんのその一言。
グッジョブ!ジャンさん。
そんなこんなで、僕は勇者パーティの司祭から邪教の教祖様へのジョブチェンジを免れて、聖剣は勇者の聖剣から僕の包丁へのジョブチェンジを免れた。
夢の料理人へのジョブチェンジのため明日にでも教会に「司祭辞めます」って言いに行こー。
めちゃくちゃ気が重いけど、刃物解禁のために頑張るぞ!
★☆★
追伸。
司祭は辞められませんでした。
最終手段出しちゃおっかなー……と思ったけど、大人の取引で包丁など日常品の刃物の取り扱いと一定の自由はGETしました。
なので現状の職業は「司祭」です。
最近やたらと「保護者」や「飼い主」の肩書も加わるけど……。
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