異世界転生したけどチートもないし、マイペースに生きていこうと思います。

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「私のときは反対したのに!」とダイアナさんから苦情がきた



息を潜め、声をこらえた面々が言葉を発したのは、セバスが6段タワーを完成させたあとだった。

初心者なのに6段タワー。
やはりクラレンスが睨んだとおり、彼はトランプタワーの才能アリだった。

「おおっ、スゲー!」

騎士の一人が歓声をあげ、手を叩いた。

その瞬間……2つのタワーは儚く崩壊した。

真っ青になる騎士。

「わ、悪いっ……!」

慌てる騎士を仲間が小突くが、クラレンスもセバスも特に気にしていない。
トランプタワーはもともと崩れるものだ。


「お待たせしました」

「いえ、こっちこそお待たせしたみたいで……」

「面白い遊びですね」

「トランプタワーです。1人でもできるので暇つぶしにももってこいです」

「トランプは色んな遊び方があるんだな」

「…………うん」

イザークには笑顔で応じていたクラレンスの返答が父の言葉には一瞬だけつまった。

なぜなら思ってしまったからだ。

(たぶん父さんや家のメンバーにはあんま向いてない気がする)

そしてこの場に居る大多数の騎士たちにも向いていないだろう。
そんな彼らはババ抜きやポーカー、表情を取り繕う系も苦手な面々が多かった……。

「今日はトランプをお届けにきました!」

場の雰囲気を変えるようにクラレンスは明るく声を出す。

トランプを心待ちにしていた騎士たちから歓声があがった。

なかには「おれ、〇〇呼んで来る!」と発注していた仲間を呼びに行ってくれる人も居る。大変ありがたい。

「まずは名前を言ってください」

順番に並んでもらい、まずは自分の名前を言ってもらう。

クラレンスの隣ではセバスがリストを手にしており、それを見ながら絵柄の種類と数を読み上げる。机に並べたトランプの中からクラレンスが該当するものを選んで、料金と引き換えに交換。

「受領のしるしにサインをお願いします」

いくつかの枠に区切られた紙を差し出し、サインを記入してもらうと同時にセバスの方では受け渡しが終わった者にはリストにチェックを入れていく。

その単純作業を眺めながら、イザークが感心したように顎に手を当てリストを覗き込んだ。

「これは効率的ですね」

「間違えて渡しちゃったら大変なので。これならわかりやすいし、受領の記録も残るので」

「…………本当にスカウトしたいです」

わりと本気の声音だった。

前世の記憶から特になにも気にせず当たり前に行っているクラレンスだが、ふつうのこども、それも領地経営などに関わっているわけでもないこの年頃のこどもなら、記憶や口頭確認のみで渡し間違えなどミスが発生してもおかしくない。

以前作った書式のフォーマットもそうだが、なにげに事務能力の高いクラレンスは脳筋どもに悩まされるお兄さんとしてはぜひスカウトしたい人材なのだ。

「……なんなら事務作業要員としてだけでも」

ブツブツと呟くイザークはかなりの本気だ。


「やっほーふわりん!トランプの受け渡ししてるって聞いたー」

手を振りながら入ってきたのはマイペース仲間ことローランだった。

「そーいえば、この前ダイアナとお菓子作りしたんだって?」

「……そうなんです。混ぜるのに竜巻起こそうとするし、粉ふるうのに風魔法使おうとするし……大変でした」

話を聞いていた周囲から同情の視線が寄せられた。

「あはは。アイツもかなりの魔法バカだしね」

……お前が言うか?

周囲の8割強が無言でローランを見る。
その視線はなによりも雄弁だった。

ちなみに、チョコレートファウンテンなどのときも見た記憶のない彼女だったが……その日は普通に非番だったらしい。
後日話を聞いてかなり悔しがっていた模様。

「そうだ!魔法でお菓子っていえば、前食べたポテトチップス!あれ久しぶりに食べたい。ふわりん作ってよ!」

以前大量にもらったジャガイモを消費するために作ったポテトチップス。
のり塩味にするために魔法でのりを粉砕してもらったことを思い出したのかローランにおねだりされた。

「別にいいですけど……今日はのり持ってないです」

「そっか。じゃあのりはなしで。胡椒のも美味しかったし」

「あ、コンソメ味も作ってみますか?」

「いいね!なんならスライサーの代わりに魔法でジャガイモスライスしてあげよっか?一瞬で等間隔にしたげるよ」

おつまみにもピッタリなポテトチップスに、話を聞いていた騎士たちも大盛り上がりで、就業後はポテチパーティーが開催されました。

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