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オシャレに変身!カルトナージュの素敵な小箱
「じゃあちょっと休憩しよっか」
響き渡る拍手と感動がひとだんらくしたところで、クラレンスはそう声をかけた。
「え?」と瞳をぱちくりさせるシルクとエミリアに笑いかける。
「装飾にはいる前に接着剤をしっかり乾かしたいしね。それに集中して作業してたから疲れたでしょ?」
「……確かにちょっと疲れたかもしれませんわ」
「そうね。こんなに集中したのは久しぶり」
「うん。だから甘いものでも食べて気分転換しよう。ダッチベイビー、シルクもエルも食べたい!って言ってたもんね」
「「!?」」
以前ちらっと話したら興味津々だったダッチベイビー。
表情を輝かせたシルクたち姉弟はやったと笑顔でハイタッチをしている。
「ダッチベイビーってなんだ?」
「アツアツで食べるパンケーキの一種だそうですわ。食感が新しいんですって」
「カリカリ、もっちり」
「よくわからないけど……すごく美味しそうなことだけはわかりましたわ」
わいわいとそんな会話をしながらティータイムのために別のお部屋へと向かう。
今日はクラレンスの手作りではなく、料理長たちが作ってくれている。
メイドさんが厨房へ連絡をいれていてくれたおかげで、席についてほどなく熱々のダッチベイビーが運ばれてきた。
本日のダッチベイビーはリンゴ。
シナモンのかかったリンゴはアップルパイを思わせる味わいで、これまたパンケーキともアイスとも合うのです。
「熱いからみんな火傷しないでね」
いただきます、とみんなが興味津々で口にする。
フォークを口に運んだシルクがもう片方の手でほっぺを押さえた。
「これはたしかにアツアツで甘くって幸せなスイーツですわ」
「……!クラレンス様、これって作り方難しいんですの?」
「ん~ん。混ぜて焼くだけだから簡単だよ」
「レシピを!ぜひレシピを教えてはいただけませんこと?!」
身を乗り出して頼んでくるエミリアはずいぶんと気にいったようだ。
クラレンスがあっけらかんと「いいよ~」と答えればシルクも「私も」と手をあげた。
「じゃああとでレシピ用意するね。デーヴィッドくんもいる?」
「……いいのか?」
「もちろん」
そんな感じで和やかにティータイムを終え、作業再開。
基本の箱づくりまでは終了したので、ここからはリボンやレース、ラインストーンなどを使った装飾です。
丁寧な作業が必要なのはかわりませんが、比較的気楽で楽しい作業。
逆に神経をつかうのは箱に布を張り付ける時の底面の角の作業かなと。生地が重なる部分なので綺麗に仕上げるのが難しいんですよね。
さっきまでの無言はどこへやら、「このリボンどう思います?」「コレとコレ、どっちの色がいいと思う?」なんて相談しつつわいわい進める。
そうして出来上がったそれぞれの作品。
シルクは白のレース模様の生地をベースに深紫のベルベット素材のリボンで縁取られた、乙女仕様ながらも大人っぽさもある仕上がり。
エリシュオンとクラレンスがいっしょに作ったのは青のストライプをメインに青系の装飾。
デーヴィッドは小花模様に光沢のあるリボンとレースで飾り付け、エミリアが好みそうな仕上りに。
そしてエミリアは…………。
深みのある緑をベースを黒地のリボンで印象をさらに引き締め、シックに飾り付けた長方形の小箱を両手に上にかかげて無言でそれを見つめている。
「私にもできた……」
感極まったように呟き、笑顔で両手をデーヴィッドへと突き出した。
「どうですか?デーヴィッド様…………お気に……召しまして?」
途中で不安になったのか、満面の笑みは窺うような表情にかわりじっと彼の反応を待つ。
そんな彼女の手から壊れモノを扱うようにデーヴィッドは小箱を手に取って目の前に掲げる。
色んな角度からその出来を眺め、満面の笑みを浮かべた。
「ああ、すごく気にいった。毎日使わせてもらう」
パッと華やかな笑みを浮かべたエミリアは、だけど彼の手からそれを取り返した。
「まだあげません」
「エミリア?」
小箱を胸にかかげ首をふる。
眉を下げて小箱を目で追う愛しい婚約者の顔を見て、ふっと笑みをもらした。
どうやら少し婚約者を慌てさせたかったようだ。
悪戯を告げるように猫のような瞳を細めた。
「ペンを贈ろうと思って用意してありますの。それを入れて、正式にプレゼントさせていただきますわ」
「そうか。なら俺もこれにプレゼントを収めて贈ろう」
そんなやり取りを見ながらなにか思うところがあったようだ。
シルクが手元の箱を眺めつつ、ちょっと唇をとがらす。
「私も家でまた挑戦しますわ。次はクラレンス様にプレゼントします!」
「ぼくも!兄さまと姉さまにあげる」
すっかりラブラブモードに突入していたエミリアはクラレンスへと振り返る。
「クラレンス様っ、ありがとうございました」
頬を染めて可愛らしく笑う姿は、先日の落ち込んだ表情なんてみじんも感じさせないぐらい晴れやかだった。
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