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三十四
しおりを挟む「血というのならそれは貴方にも流れているわ。だって、セドリック、貴方は私の大切で可愛い弟だもの……。それに血が何だと言うの?父や兄を見て……その血が尊いと本気で思える?大切なのは如何に国を想い、民の為に生きれるかだわ。
そしてその点、彼らには皇帝である資格なんてなかった。そしてそれは闘わず国を去った私も同じ。そんな皇族は、あんな玉座は要らないの。
セドリック……優しくて勇敢な貴方こそこの国の皇帝に相応しいと私はそう思っているわ」
涙って意外と自分の意思で流せるものなのね。
そんなことを思いながら潤んだ瞳でファウスティーナは語る。
詐欺?
いえいえ、演技はしてても言ってることは本心だから!
「そんなことっ…!!」と挟まれかけた言葉は涙の出力を最大限にして弱々しく首を振ることで抑え込んだ。
そのココロは「言わせねぇよっ!!」の一言に尽きるのだが、
その動作は心情と違って壊れそうな程の儚さと痛々しさを見る者に与えた。
「それに……私は…もう、この国では暮らせない……。
もうっあの頃の私には戻れないの…っ。
過去を思い出してずっと…苦しみ続けることになる、私、私はっ……この場所では、生きられないっ……!」
一度あの楽園を知ってしまったからにはもう戻れない。
ゲームも、マンガも、ネットも地球のジャンクフードやお菓子が食べれないのも無理だし、何より立派な引き籠りと化していたファウスティーナには態度や言葉を取り繕うのが無理。
面倒な人間関係とか今更絶対無理!!
そんな内心を知らない一同は苦し気に息を呑んだ。
涙を拭う振りをしながらこっそり周囲の様子を盗み見たファウスティーナは「よし、イケる!」とここぞとばかりに虐げられてきた悲劇のヒロインを演じきり、何とか周囲を説得するのに成功した。いぇーい。
「わかりました、国のことはどうか僕らにお任せ下さい。
ですが、ファウスティーナ様…いえ、姉上…貴女はいつまでも僕の大切な姉上です。
何かお困りのことなどありましたら何時でもお戻り下さい」
胸に手を当て力強く請け負ってくれた凛々しさと、恥ずかしそうに小さな声で「姉上」と呼び直した異母弟の可愛さのギャップにファウスティーナは大いにときめいた。
ウチの子、マジいい子!!!
やっぱ人間、血だけが全てじゃないってことよねっ!と自分も忌むべきクズ共の血をガッツリ受け継いでるのを棚に上げてそう思う。
因みにファウスティーナ自身あのクズ共に比べたら断然マシだけど自分の本性もわりとアレな自覚はある。
だが、周囲に自主的に迷惑を振りまくことはしていないとの自負も。
(周囲の期待に応えるかどうかはまた別問題です)。
「私も微力ながらセドリック様とこの国を守っていきます。
ですからお姉様はどうか国や民たちのことにお心を痛められることのないよう…」
思わず「あっ」と声が漏れそうになったのを根性で堪えた。
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