ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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 俺がげっそりと疲れを感じていると救世主の声が響いた。

「特定の女性は今はいないようですよ。性格等の好みは詳しくは知りませんが、嫌いなタイプなら知っていますよ」

「それはどんなっ??」

 ガッツリ喰いつたアイーシャにリフはにっこりと綺麗な笑みを浮かべる。

「カイザー様、ひいてはルクセンブルクの方々の敵です。先程申しました通りカイザー様はランの“特別”ですから。誰だって自分が好意を抱く方に反感を示されるのは好ましくないでしょう?」

 一瞬の間、アイーシャは次の瞬間には綺麗に姿勢を伸ばして侍女を手招いた。

「遅ればせながら、本日は先般のお礼に伺いましたの。危ないところを助けて頂き、このアイーシャ心よりお礼申し上げますわ。これは心ばかりのお礼の品です。どうぞお納めくださいましな。ラン様やハンゾー様、弟君のガーネスト様がたにも改めてお礼をお伝えする機会をお取りいただければ幸いですわ」

 美しい姿勢で下げられた頭と、テーブルへと置かれる包み。

 掌返しはっやっ!!

 いっそ清々しいほどの変わり身だ。

 いやまぁ、お礼の品を持参してたってことはお礼をしにきたってのは本当なんだろうけど。

 それにしてもリフの発言を聞いてからの俺への態度の豹変……。

 しかもリフが心なしかほくそ笑んでねぇ?

 もしや俺が意味の分からん見下され方をされたのが気に喰いませんでしたか?
 それともジャウハラの上層部に味方を作っとこうって腹ですか??

 やだ、リフったら策士。

 その後、雑談を経て話題はまた恋愛トークにループし、

「でもまぁ、わからないでもないわ。恋は堕ちるものだもの」

「あらっ、意外に話がわかるじゃありませんの!」

「理屈じゃないのよね、本能なのよ」

「ええ、ええ!!まさに運命ですわ」

 まさかの面倒なお姉様お二人が意気投合した。

 うそん。
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