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汝が深淵を覗く時 2
しおりを挟むカツカツと靴音を響かせながら回廊を進む。
あの場での話し合いも、ティハルトへの緊急報告も何もかもをすっぽかして向かう先は客間として宛がわれた王宮の一角。
ちなみに緊急報告ってのはテレビ電話的なアレだ。
残念ながら携帯電話は存在しないこの世界だが、通信技術っぽいのはあるにはある。国のトップ同士でしか使われないマジ希少かつ緊急用のだけど。
ジャウハラの王経由でティハルトに連絡がいったところで出来ることは少ない。
援軍を送る時間的余裕はないし、国内の騎士や冒険者をかき集めるぐらいしか打てる手はない。
それでは駄目なのだ。
何せ大元の原因は人災。
もしもジュエラルの国や民に大きな被害が出ることになればサヴィアスの望み通り戦争が引き起こされる。
だから、その為にも。
肩で息をしながら扉を開ける。
部屋の中には外の様子を気にして窓際に立ったソラとエリーゼ。そしてサスケとその膝の上で絵本を広げるマオの姿があった。
「なぁ何があったんだ?さっきから偉そうな奴らがいったり来たり物々しいけど」
「悪いソラ、説明はあとで。大至急ジストの居場所の座標を確認してほしい。サスケとエリーゼも少し外して」
三人を部屋から出し、きょとんとこちらを見上げるマオと向き合う。
リフとハンゾー?
俺について戻ってきた二人は当然のように退出しませんでしたよ。
時間もないし言い合う気もない。
「マオ、お願いがあるんだ」
片膝をつき視線を合わせながら小さな肩をそっと掴む。
「おねがい?」
「明後日、魔獣の大群がジュエラルを襲う。人に使役された魔獣が率いるスタンピードだ。こんなことをマオに頼むのは筋違いなのはわかってる。でも止めたいんだ。きっと多くの君の同族を屠ることになる。それでも人間だけでなく魔獣の被害も最小限に留めたい」
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