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そうして真実は闇へと葬られる 2

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(従兄視点)※名無しのモブ
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 公爵家にもゆかりのある由緒ある伯爵家の嫡男。
 優秀だった俺の人生は光に包まれていた_______その筈、だった。

 実際は、
 小物で無能な癖に野心ばかり大きなクズな父親。
 浪費と享楽を繰り返すお目出度い母親。
 かつての栄光など消えかけた伯爵家。

 そして、あの男が生まれた。

 カイザー・フォン・ルクセンブルク。

 幼い頃から狂ったように勉学を学び、神童の名をほしいままにした男。
 より強い光に押されるようにかつて俺が呼ばれた名はアイツのものとなり、俺は影へと堕とされた。

 最初はほんの軽い気持ちだった。
 可愛げの無いあの餓鬼ガキの歪んだ表情が見たかった。
 突然周囲から掌を返される気分を味わわせてやりたかった。

 だから異能を使った。

 俺の_________『』の異能を。

 特定の相手の異能を封じる。
 誰かの異能を封じている間は他の人間に能力を使うことは出来ない。
 だけどそれで充分だった。

 神殿で判定を受ける数日前に奴に接触を果たし、両親以外にはずっと隠してきた異能を使った。
 そうして奴が『無能』だと密かに触れ回ってやった。

 俺の望んだ通り、途端に態度を翻す周囲。

 期待は失望に。
 称賛は嘲笑ちょうしょうに。
 栄光は汚辱おじょくに。
 光は影に。

 俺と同じ想いを味わわせてやれる筈だった。

 なのに、アイツは少しも変わらなかった。


 抑えきれない苛立ちに父親に愚痴と共に異能を使ったことを話したある日。
 口汚い激昂と共に俺はぶっ飛ばされた。

 初めて振るわれた暴力に殴られた頬を押え、滲む血の味に呆然とする俺にあのクズは罵った。

 役立たずと!!出来損ないと!!
 この俺に!!!

「貴様は何てことをしてくれたんだっ!!相手は公爵家の嫡男だぞ!!!こんなことが公になってみろ、我が家はお終いだっ!! 俺は知らない!!お前はもう伯爵家の者でなく俺とは何の関係もない!!」

 唾を飛ばしながら叫ぶ父親。

 軽い悪戯程度の気持ちだった俺は頭を殴られたような衝撃を受けた。
 ほんの少し、ほんの一時だけ異能を封じて慌てさせてやるだけのつもりだった。

 絶望に真っ暗になる俺に、散々怒鳴り散らしていた父親は不意にいいことを思いついたように薄汚い笑みを浮かべて俺を見た。

「だがお前は俺の息子だ」

 先程までとはうって変わった猫なで声。

「お前にチャンスをやろう。あの子供に成り代われ!公爵家の嫡男が『無能』などという訳にはいかん!これはチャンスだ!!」

 喜色を浮かべ語り出す夢物語。


 そうして、その夢物語の代償として俺は今こんな場所にいる。

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