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続・敵に回してはいけないお方 3

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「そういえば、カイザー君はいいお相手とか居ないのかしら?」

 鮮やかな紅が引かれた唇で弧を描き、にっこりと微笑む王妃様はとても俺と同じ歳のティハルトの母親とは思えない程若々しくて美しい。

「いえ…残念ながら」

「そろそろ身を固める準備をしたらどうだ?」

 うるさい!自分が婚約者がいるからって偉そうに!!
 第一俺は結婚出来る気がしないんだ!!

「お相手なら選り取り見取りでしょう?」

「それは……」

 確かに声は掛けられますよ?
 でも下手な相手を婚約者にしたらやっぱり俺が爵位を継げってお相手の実家につっつかれる可能性もあるし。

 何よりこの妙な能力の所為でまともなお付き合いが出来る気がしないんだ!

 普段は感情が昂らなければそうでもないけど、触れ合ったりしたら余計に心の声が聴こえちゃうし。裏表のない貴族なんてそうそう居ないんですよ…。
 本当、この能力嫌。

「もしかして、気になる子とかいるのかしら?」

「それはないです」

 間髪を入れない俺の答えにわくわくした顔の王妃様が途端に残念そうなお顔に。
 身を乗り出していた躰も椅子へと逆戻り。
 期待に応えられずすみません。


『やっぱり、カイザー君が例の隠しキャラなのかしら?』

 多分違いまーす。


『ヒロインがまだ未登場だからお相手が居ないって可能性もあるわよね。本来ならカイザー君の歳だともう結婚してても可笑しくないし』

 ぐさっときた。
 今心にぐさって。

 確かに22歳だと貴族の嫡男としては結婚、もしくは婚約者が居ても可笑しくないですけど…。
 俺が彼女すら居ないのはゲーム都合とは関係ないです。


『でも本当に吃驚びっくり。まさか私がゲームの攻略対象者の母親として転生するなんて。ダイアが生まれた途端急に前世を思い出して私が倒れたから大騒ぎだったもの。国名とか、貴族の名前とかなーんか聞き覚えがあるなーとは昔から違和感はあったけど』

 あれ本当に吃驚びっくりしますよね。
 俺も吃驚びっくりどころじゃなかったです。


『噂の隠しキャラについては全然情報がないのよね。興味はあったけど、もし本当に裏隠しルートなんてものがあれば折角お金かけて開発してるんだから、あれだけ話題にもなってるんだからファンディスクとか出るだろうと思ってたし。あるかわからないルートに時間を費やすより、誰か攻略した後で情報を探すかファンディスクにお金出せばいいと思ってたもの』

 おおぅ……。大人な考え方ですね。
 でも確かに、その方が効率的ではある。 
 乙女ゲームのプレイヤーらしからぬ夢見がちなとこがない現実的なお考えですが。


『そもそも会社のストレス発散に甘いストーリーを楽しみたかっただけだから攻略に手間取ってイライラするのも嫌で攻略本頼りだったしね』

 王妃様は超現実主義者。


『ティハルトが怪しいんじゃないかと思ってたけど、でもこの子婚約者いるし。
やっぱ私的に第一候補はカイザー君なのよね』

 ええー…。俺、ベアトリクスと同じ年の子女性として見れない気がします。
 10以上離れてるし、妹の同級生ですよ?


 実際の会話と、王妃様の心の声と。
 二重音声で会話をしながら、恐れ多いお茶会の終了です。

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