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誓いは変わらずこの胸に 4
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(リフ視点)
そうして話して下さったのは。
「まだ誰にも言わないで欲しい。実は私は爵位を継ぐ気はない、その時が来たら爵位はガーネストへと譲るつもりだ」
あまりにも衝撃の告白。
「本当はもっと後に言おうと思ってたんだ。ガーネストはまだ幼いし、同じ年頃の従者の方が都合のいい場面もあるだろう。もっとガーネストが成長してからリフに頼もうと思ってた。だけど今日、リフの異能を見て考えが変わった。今からでもガーネストに付いてくれる気はないか?」
「何、故…?」
「リフが優秀だから」
困ったように笑う姿は、何処か幼くて。
「誰よりも優秀で、信頼してる。従者としても、親友としても。傍に居て居心地がいいし、世話も完璧だし、リフの紅茶が一番美味しい。それにあんなにも頼もしい異能まで持ってるなんて」
それは、妬みでもなく。僻みでもなく。
「このままじゃ手放せなくなりそうだ」
その歓喜をなんと呼ぼう?
疲労によりそのまま眠りについたカイザー様を前に随分と長いこと私は呆然としていた。
『必死になれる程大切なモノがある。守りたいモノが溢れてる。私は間違いなく倖せだよ。そしてその為にまだ出来ることがある。こんな嬉しいことはない』
不意に頭の中に声が響いた。
そして気付く。
爵位も立場も関係ない。
とうに私は生涯唯一人の主を己で定めていたことを。
包帯に包まれた手を恭しく掬い上げ、忠誠を誓う。
そして、我が主が眼を覚まされたら、今一度真っ先にこの忠誠を捧げよう。そう心に決めた。
そして、変わらずカイザー様の従者で在り続けることとなった私に、ある日カイザー様が小さな小箱を下さった。
ビロード張りの蓋を開ければ、
そこにあったのはピンブローチで。
二対の剣が交差し、その上部に燦燦たる星のように輝くダイヤモンド。
「貰って欲しい」そう告げるカイザー様に慌てて首を振って小箱を押し返す。
だって、それは。
闘技会の優勝者の証。
「これからも私の従者で居てくれるって言ってくれたのが嬉しくて。あっ、でも別にリフを縛り付けようってつもりとかじゃなくてっ!!ガーネストの従者を引き受けてくれるならいつでも受け入れるしっ。そういうことじゃなくて……本当に嬉しかったから。何かお礼をしたくて」
珍しくもわたわたとしながら、突き返した小箱を押し返すカイザー様。
「有り難き倖せです。ですがこんな貴重な物を頂くわけには」
「大丈夫」
感激しつつも、物が物だけに受け取るわけにはいかない。
だけどそんな私の言葉をカイザー様は遮った。
「だって来年も再来年も手に入れるから」
そう仰って不敵に笑われた姿はいつもの超然とした姿ではなく年頃の少年らしい笑顔で。
あの日頂いたそれは、今も誓いの証として私の左胸で輝いている。
そうして話して下さったのは。
「まだ誰にも言わないで欲しい。実は私は爵位を継ぐ気はない、その時が来たら爵位はガーネストへと譲るつもりだ」
あまりにも衝撃の告白。
「本当はもっと後に言おうと思ってたんだ。ガーネストはまだ幼いし、同じ年頃の従者の方が都合のいい場面もあるだろう。もっとガーネストが成長してからリフに頼もうと思ってた。だけど今日、リフの異能を見て考えが変わった。今からでもガーネストに付いてくれる気はないか?」
「何、故…?」
「リフが優秀だから」
困ったように笑う姿は、何処か幼くて。
「誰よりも優秀で、信頼してる。従者としても、親友としても。傍に居て居心地がいいし、世話も完璧だし、リフの紅茶が一番美味しい。それにあんなにも頼もしい異能まで持ってるなんて」
それは、妬みでもなく。僻みでもなく。
「このままじゃ手放せなくなりそうだ」
その歓喜をなんと呼ぼう?
疲労によりそのまま眠りについたカイザー様を前に随分と長いこと私は呆然としていた。
『必死になれる程大切なモノがある。守りたいモノが溢れてる。私は間違いなく倖せだよ。そしてその為にまだ出来ることがある。こんな嬉しいことはない』
不意に頭の中に声が響いた。
そして気付く。
爵位も立場も関係ない。
とうに私は生涯唯一人の主を己で定めていたことを。
包帯に包まれた手を恭しく掬い上げ、忠誠を誓う。
そして、我が主が眼を覚まされたら、今一度真っ先にこの忠誠を捧げよう。そう心に決めた。
そして、変わらずカイザー様の従者で在り続けることとなった私に、ある日カイザー様が小さな小箱を下さった。
ビロード張りの蓋を開ければ、
そこにあったのはピンブローチで。
二対の剣が交差し、その上部に燦燦たる星のように輝くダイヤモンド。
「貰って欲しい」そう告げるカイザー様に慌てて首を振って小箱を押し返す。
だって、それは。
闘技会の優勝者の証。
「これからも私の従者で居てくれるって言ってくれたのが嬉しくて。あっ、でも別にリフを縛り付けようってつもりとかじゃなくてっ!!ガーネストの従者を引き受けてくれるならいつでも受け入れるしっ。そういうことじゃなくて……本当に嬉しかったから。何かお礼をしたくて」
珍しくもわたわたとしながら、突き返した小箱を押し返すカイザー様。
「有り難き倖せです。ですがこんな貴重な物を頂くわけには」
「大丈夫」
感激しつつも、物が物だけに受け取るわけにはいかない。
だけどそんな私の言葉をカイザー様は遮った。
「だって来年も再来年も手に入れるから」
そう仰って不敵に笑われた姿はいつもの超然とした姿ではなく年頃の少年らしい笑顔で。
あの日頂いたそれは、今も誓いの証として私の左胸で輝いている。
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