ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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主として成すべきこと 1

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 淡々とした報告に耳を傾ける。

 場所は俺の執務室。
 決して狭くない筈の執務室は部屋の人数に比例して今日は少々手狭に感じる。
 そもそもデスクが二つと、壁一面を資料などの本棚に覆われた室内は大勢の人間が集まることを想定されていないのだから仕方がない。
 それでもこの部屋に野郎ばかり雁首がんくび揃えて集まっているのは、ひとえに防音性が高いからだ。

 室内には俺、リフ、そしてハンゾーを始めとする影数人とアインハードの計8人。

 中央のソファに座るのは俺とアインハードのみ。
 それは人数分のソファが足りないせいもあるが、後数人は座れるのに俺達だけなのはリフは真っ先に俺の斜め後ろに立ち、ハンゾーに倣い影たちは共に控えたからだ。唯一ソラはソファに腰かけようとしたけどハンゾーに横目で睨まれ影たちと待機。

 そして人払いをし、防音性の高い部屋を選んだのは話題が重要だからなのだが。

 …が、

 そんな重要な報告を聞きつつ俺の思考は斜め上。

 目線の先。
 報告を続けるハンゾーの姿に俺の視線は釘づけだ。

 何故なら……。

 ハンゾーが忍者カスタマイズされてるっ!!!??

 ソファの上、わなわなと震えそうになる拳を握りしめて隠す。

 直立不動で読み上げるように報告を紡ぐハンゾーの服装はいつも通りの黒装束だ。
 動き易さに特化し、闇に紛れやすい漆黒の出で立ち。男らしい端正な顔立ちを隠すように口元を覆った黒布も、刃のように鋭い黒曜石の瞳も同色の髪もいつも通り。

 違うのは。

 以前はなかった手甲と額当てが新たに装備されていること。

 手甲は鎧のようなごつい造りのものでなくてシンプルなもので黒装束に上手く溶け込んでるし、鉢金と呼ばれる金属プレートを仕込んだ額当ての鈍色の銀は黒髪の間から静かにその存在を主張している。

 つまりは、忍者っぽさに磨きがかかっているのである!!

 しかも額当てはリリアが、手甲はソラが贈ったものらしい。

 ずるい!!!
 俺だってハンゾーの忍者カスタマイズに参加したい!!

 俺があるじなのにっ!!

 このままではいられない。
 あるじとして俺にもすべきことがある筈だ。

 ここはやはり、手裏剣しゅりけんを贈るべきだろうか?

 いや、手裏剣しゅりけんがそもそもないし、仮に作ったとしてそれは完全に転生者バレするんじゃないか。
 そんなことを悶々と考えながら顎に手をやって難しい顔をしていると。

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