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圧倒的ダークサイド感 3
しおりを挟むそして今日は、そんな羨ましい親友ことティハルトの誕生日パーティーである。
盛大過ぎる誕生日パーティーに前世の俺の感覚がショート寸前だが気にしたら負けだ。
誕生日パーティーとはケーキに蝋燭立ててお祝いするもんだと思っていたが、俺も伊達にカイザーとして二十年以上生きてきたわけじゃない。
そつなく挨拶を交わし、親友を寿ぎ、グラスを交わす。
ガーネストたちとも離れ、招待客と談笑を交わしたり、時々聴こえる心の声に顔が引き攣るのを必死に抑えたり、アイリーンを始め数人の女性とダンスに付き合い、女性に群がられ内心怯えたりしてる時にそれは起きた。
直前までヴァイオリンを奏でていた男。
楽師ではない、とある貴族の男だ。
演奏を終え、拍手を受けていた男が胡散臭い笑みを浮かべて俺へと近づいて来た。
「ルクセンブルク公爵」
揶揄を含んだ呼び掛け。
「ああ、ルクセンブルク公爵代理でしたね。これは失礼。ルクセンブルク公爵代理も一曲如何ですか?貴殿の演奏を聴きたい淑女の方々も多いでしょう。ご友人たるティハルト様の為にも是非一曲捧げてみては如何でしょう」
『完璧な私の演奏の後では恥を掻くだけだろう。どう断る?それとも拙い腕前を晒すか?』
はい、ムカつきますね。
心の声が聴こえなくてもコイツが俺のこと嫌いなのは丸わかりですが。
わざとらしくヴァイオリンを差し出してくる男は音楽に縁のある家柄で、余程自分の腕前に自信があるのだろう。
そして俺が嫌い、と。
確かに演奏の腕は良かった。
音は良い。技術もある。
それは認めるが自分の主張が煩くて音楽としては正直、惹かれるものはなかったがな。
喧嘩を売られた俺はちらりと会場を見渡す。
視線が捉えたのは目当ての人物。
「折角ですが……」
俺はやんわりと差し出されたヴァイオリンを押し返した。
残念そうにしながらも男の口元が愉悦に歪む。
その唇が三日月を刻む前に俺は広間の一角に陣取った楽師へと視線を向ける。
「ヴァイオリンよりもピアノの方が得意なので、ピアノをお借りしても?」
首を傾げれば慌てて楽師がその場を空ける。
ゆっくりとグランドピアノへと歩みより、椅子へと腰かけた。
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