ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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心臓が限界寸前です 3 

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(リリー視点)


「えっと、その……お兄さ…お兄様は一体っ?」

 思い切って声を掛けたら、

「ちょっと貴女っ!!一体どういうおつもりですのっ?!」

 ビシィ!!と音がしそうな程に突き出された人差し指。
 怒りを露わにした華やかな金髪のお嬢様、もとい悪役令嬢のベアトリクスがそこに居て。

 やっと悪役令嬢フラグが立ったっ!と思ったのも束の間。

 ……まさかの、ブラコンだった。

 っていうか、兄っっ!!?

 そういえば、“ルクセンブルク”って何か聞き覚えがあると思ったらベアトリクスとガーネストの家名と同じだと今になって思い出す。

 無意識に零した『無能』の言葉にベアトリクスは怒り心頭。
 だけどこれはベアトリクスが悪いんじゃなくて、完璧に私の落ち度だし。
 周囲の(特に女子)私を見る冷たい視線に失態を悟って慌てて謝る。

 しかも本人眼の前だったっ!

 そしたらまさかの謝罪を返された。

 だから悪役令嬢要素何処行ったのっ?!
 これじゃ、普通に良い子な美少女じゃないっ!!

 現状を把握しなきゃ、と何とか一緒に食事をとることに成功したものの、
 あまりの美形率の高さに私の心臓と鼻の粘膜が限界だった。

 ガーネスト様は傲慢どころか普通に親切なイケメンだったし(お姫様抱っことか死にますよ?)、ダイア様はキラキラ王子様だし(あれ絶対ベアトリクスちゃんのこと好きでしょ?)、カイザー様はミステリアスで大人の魅力があってヤバいし(っていうか、本当何者なの?いつ新ルート開いたの?ミステリアスが過ぎて訳がわからない!)。

 ベアトリクスちゃんは恋する乙女で超絶可憐な美少女だし(もう絶対悪役令嬢じゃない!)、カトリーナちゃんも可愛いうえ何気に巨乳だし…(この子もモブの可愛さじゃないんですけど?)、ヒロインちゃんはナディアちゃんっていうらしく初々しい美少女だし(この子がカイザー様ルート開拓したのかと思いきや初対面っぽいしどういうことなのっ?!)。

 もう、意味がわからない……。

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