ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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粒マスタードは大概一瓶使いきれない 3

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 さぁて、何を作るか。
 食料は根菜や燻製、缶詰や硬めのパンなど日持ちする物が主だ。

 よし、ポトフにしよう!!

 メニューが決まれば早速調理開始だ。
 玉葱の皮を剥き、四つ切に。続いてジャガイモと人参の皮を向いていると後ろから声を掛けられた。

「あの、お手伝いします」

 遠慮がちに声を掛けてきたのはナディア嬢で。

「お躰は平気ですか?休んでて下さっても構いませんよ」

「大丈夫です!掠り傷だけだし、手当もして頂いたので」

 ふむ、本人がそういうのならお言葉に甘えよう。

 「なら、お願いします」そう頼めば、早速手を洗って腕まくりをするナディア嬢の斜め後ろ。
 盛大に視線をキョドらせるリリー嬢ときまり悪げなティーナ嬢が居た。

『どうしようっ?!ここはヒロインとして手伝うべきよね?!でも私、超絶料理苦手なんですけどー!!!』

 俺へと響き渡る盛大な心の叫び。

 オーケー!
 何となくそんな気はしてた。

 キミ、リリア属性(料理ド下手)だね!!

 リリー嬢とリリア何気にツインソウルだったりするんじゃね?

 料理は任せろ!!
 むしろやらせん!!
 キミはアレクサンドラの攻略でも進めとけ。


「リリー嬢たちは怪我もされてるようですしゆっくり休んでて下さいね」

 声を掛ければあからさまにほっとされた。

 ティーナ嬢は貴族令嬢だし、料理経験ないのわかるんだけどさ、
 リリー嬢、バレンタインイベント大丈夫なん?

 もう既製品でいいから、間違っても一人で手作り挑戦しようとか思わないでねっ?!


「料理、お上手なんですね。私は何をすればいいですか?」

 くるくるつながった皮を見て、驚きを浮かべる姿に苦笑いする。

「割と小器用なので。ナディア嬢は包丁の扱いは?」

 前世で母親の手伝いや姉達にお菓子作りさせられてました。などとは言えないので適当に誤魔化し、念のため尋ねる。

「それなりには使えます」

 答えに一安心し、ならばとキャベツの千切りをお願いした。

「メインをポトフにしようと思うので、付け合わせのコールスローをお願いします」

「わかりました」

 俺の隣に立って千切りを始める手つきには危なげがない。
 何という安心感。

 食材を炭や劇物にすることも、流血沙汰になることもないだろう手慣れた様は安心して作業を任せられる。俺は心やすらかに皮むきを続けた。

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