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耳が赤かったのは酒の所為ということにしておこう 2
しおりを挟む「必要なくなるのは私の方でしょう」
零した声に、今度は彼女がシトリンの瞳をぱちくりと瞬かせる番だった。
「どうして…」
「ガーネストは優秀です。公爵としての仕事も貴族としての在り方も、いずれは私のサポートなど必要としなくなる。ベアトリクスは愛する人と愛を誓い、彼女の夫が彼女を守るその任を継ぐ日が来る」
それはとても幸福な未来で。
「ベアトリクスはやがてお嫁に行って、ガーネストは公爵夫人となる妻を迎える。そんな時に母である貴女は兎も角、未婚の兄がこの邸に居座るわけにはいかないでしょう?」
いつか訪れるだろう正しい在り方。
だけど、そこに一抹の寂しさを覚えるのは仕方のないことだろう。
彼らは変わらず、慕ってくれるだろう。愛してくれるだろう。
けれどそれと今のままでいられるかどうかは別問題だ。
「…貴方は、それでいいの?」
「勿論」
その答えに嘘はない。
あの子たちの倖せ。
それが俺の倖せであり、目指した未来だ。
「そんなに…あの子たちが大切?」
「当然です」
何故か表情を歪ませて躊躇いがちに零された質問に俺は電光石火のごとく答えた。当たり前すぎる質問に我ながら喰い気味の返答だった。
「憎い女の子供でも…?」
皮肉気に問いかける義母。
片頬を歪めてこちらを見据えるその表情。
はっきり言おう!似合っていない(実際に声は出してないよ)。
造り慣れていないその表情はぎこちなさすぎてあまりにも下手くそだった。
そもそもさー。
「私は義母上を憎んではいませんし、嫌ってもいません」
「はっ?」
鳩が豆鉄砲喰らったような表情とはこのことか。
きょとんと瞳と口を丸くしながらも尚、美しいその顔を見ながら「美形ってすげぇ」という感想を抱きつつ酒を口に運ぶ。
つか、ガーネストもだけど俺が義母嫌ってるって共通認識なんなの?
超心外なんですけどー。
俺は必死に友好的に振る舞おうといつも頑張ってるじゃん。そっちが一方的に邪険にしたり俺の発言を嫌味転換してるだけでさ…。
「……何を…言っているの…?」
「別に、ただの事実です」
「私が貴方にしてきたことを忘れたの?」
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