4 / 4
小さな無意味の復讐鬼
しおりを挟む
ネロを寝かせてから暫くして、僕は彼の隣でボンヤリと考える。
彼が僕に挑みに来るのは自身が強くなるためであり、その先に目指すのは親を殺した者への復讐のためである。
だけど悪魔に憑かれた僕はそれに何の意味もない事を知っている。
なぜならネロが復讐する相手は、ほぼ確実に魂を喰われているのだから。
彼が生まれ育ったのは五年前に滅んだ軍事国家『ケート』。
国土こそ小さいものの練度の高い兵が多く、周辺諸国と戦争を繰り返し続けていたので滅んだこと自体はとても自然な事なのだろう。
ただ、そんなケートをたった一夜で攻め落としたのは、これまたたった一人の男であったという。
それは黒い服を来た白髪の男であり、フラフラとした足取りでありながら化物のような強さで屈強な軍隊を蹂躙したのだという。
その途中、彼が邪魔と思えば兵士、民間人問わず殺し尽くしたらしいけど、軍事国家の民間人の命なんてのは他の国からすれば些細なものであり、彼は英雄扱いされるはずであった。
しかし、そんなケートを滅ぼした男はいつの間にか消えていたのだという。
ネロが探しているのはこの男なのだろうけど、きっと彼は死んでいる。
そのフラフラとした足取りは悪魔との契約で魂が摩耗した結果であり、それでも軍事国家を壊滅させる化物であったからには上級の中でもトップクラスの悪魔であろうと、フルブズは当たりをつけている。
そしてこれは僕の予想だけど、そんな男の願いは『ケートを滅ぼす』事だろう。
きっとその男はケートとの戦いで大切な誰かを失い、その復讐として国を滅ぼす力を自らの魂と引き換えにしても望んだのだろう。
そしてこれが当たっていれば、契約を履行した男の悪魔は無事に魂を喰っているはず。
だからネロの復讐すべき相手はあの世にすら居ないのだとわかっているけど、でも僕はそれを話す事を良しとするつもりはない。
「僕は君を救うより、自分の身を守りたいからね」
そう、これを話すにはきっと僕が悪魔に憑かれている事を話す必要があるだろう。
そうなれば優しい村の誰もがまるで親の敵であるように睨みつけてくるだろう。
悪魔というものはそれだけ世間から嫌われており、僕はそんな目に合う事と彼を復讐の道から救い出す事を天秤にかければ迷わず自分を選ぶ。
正直産まれてからずっと悪魔の囁きに屈することないよう心を強く保ち、誰にも話す事もしないのはとても辛いことであった。
だがそれを村の外から来た彼のためだけに無駄にするのは、どう考えてもそれに見合った見返りを得る事が出来ないのだから仕方がない。
「ほんと、僕は卑怯者だよね……」
こんな時こそうるさいフルブズの言葉を聞きたいのに、それを見越してか黙り込んで一切動く気配すら無かった。
ネロが起きたら今度は正々堂々と勝負をしてあげよう。
僕は卑怯者でやる事は間違っているけれど、自分の幸せを手放してまで人を救うような聖人君子ではないのだから仕方がない。
それでも神ぐらいには祈っておこう、ネロが復讐の道から外れて幸せになれますように、と。
彼が僕に挑みに来るのは自身が強くなるためであり、その先に目指すのは親を殺した者への復讐のためである。
だけど悪魔に憑かれた僕はそれに何の意味もない事を知っている。
なぜならネロが復讐する相手は、ほぼ確実に魂を喰われているのだから。
彼が生まれ育ったのは五年前に滅んだ軍事国家『ケート』。
国土こそ小さいものの練度の高い兵が多く、周辺諸国と戦争を繰り返し続けていたので滅んだこと自体はとても自然な事なのだろう。
ただ、そんなケートをたった一夜で攻め落としたのは、これまたたった一人の男であったという。
それは黒い服を来た白髪の男であり、フラフラとした足取りでありながら化物のような強さで屈強な軍隊を蹂躙したのだという。
その途中、彼が邪魔と思えば兵士、民間人問わず殺し尽くしたらしいけど、軍事国家の民間人の命なんてのは他の国からすれば些細なものであり、彼は英雄扱いされるはずであった。
しかし、そんなケートを滅ぼした男はいつの間にか消えていたのだという。
ネロが探しているのはこの男なのだろうけど、きっと彼は死んでいる。
そのフラフラとした足取りは悪魔との契約で魂が摩耗した結果であり、それでも軍事国家を壊滅させる化物であったからには上級の中でもトップクラスの悪魔であろうと、フルブズは当たりをつけている。
そしてこれは僕の予想だけど、そんな男の願いは『ケートを滅ぼす』事だろう。
きっとその男はケートとの戦いで大切な誰かを失い、その復讐として国を滅ぼす力を自らの魂と引き換えにしても望んだのだろう。
そしてこれが当たっていれば、契約を履行した男の悪魔は無事に魂を喰っているはず。
だからネロの復讐すべき相手はあの世にすら居ないのだとわかっているけど、でも僕はそれを話す事を良しとするつもりはない。
「僕は君を救うより、自分の身を守りたいからね」
そう、これを話すにはきっと僕が悪魔に憑かれている事を話す必要があるだろう。
そうなれば優しい村の誰もがまるで親の敵であるように睨みつけてくるだろう。
悪魔というものはそれだけ世間から嫌われており、僕はそんな目に合う事と彼を復讐の道から救い出す事を天秤にかければ迷わず自分を選ぶ。
正直産まれてからずっと悪魔の囁きに屈することないよう心を強く保ち、誰にも話す事もしないのはとても辛いことであった。
だがそれを村の外から来た彼のためだけに無駄にするのは、どう考えてもそれに見合った見返りを得る事が出来ないのだから仕方がない。
「ほんと、僕は卑怯者だよね……」
こんな時こそうるさいフルブズの言葉を聞きたいのに、それを見越してか黙り込んで一切動く気配すら無かった。
ネロが起きたら今度は正々堂々と勝負をしてあげよう。
僕は卑怯者でやる事は間違っているけれど、自分の幸せを手放してまで人を救うような聖人君子ではないのだから仕方がない。
それでも神ぐらいには祈っておこう、ネロが復讐の道から外れて幸せになれますように、と。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
過労死して転生したので絶対に働かないと決めたのに、何をしても才能がバレる件
やんやんつけバー
ファンタジー
過労死して異世界転生。今度こそ絶対に働かないと決めたのに、何をやっても才能がバレてしまう——。農村で静かに暮らすはずが、魔力、農業、医療……気づけば誰も放っておかない。チートで穏やか系の異世界スローライフ。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる