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ネロ
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悪魔は人の魂を喰らうために人と契約を結ぶ。
その対象は暗い感情を持つ者、もしくは何を犠牲にしても構わないという身勝手な正義感を持つ者である事が多いのだとか。
そういった人は他者を踏み躙る事を当然の事のように行うらしいけど、その後大切な人を殺され生き残った人は何を思うのだろうか。
「おいお前!今日こそ倒してやる!」
その一つの答えを持つ者、家族を目の前で殺されたらしい少年『ネロ』は朝からご近所さんの迷惑も考えずに叫ぶ。
彼は今十二歳であり、背は低く十と言っても納得出来る程度の鮮やかな赤い髪(今は薄汚れてくすんでいるけど)を持つ少年である。
「ネロ、朝ご飯は食べた?まだなら一緒に食べよう」
「メシの話なんかしてねぇよ!戦えこの野郎!」
「まあまあ落ち着いて。後で相手してあげるから」
「俺は今すぐ戦いてぇんだよ!」
とりあえず優しく声をかけるものの、いつも通り聞く耳は持たないらしい。
僕は「はぁ」と一つため息をつき、フルブズの身体強化の力を瞬間的に使用して彼に肉迫し、そのお腹に全力のグーパンチを行う。
すると体の小さなネロは「ウグッ」とうめき声をあげて吹き飛び、地面に叩きつけられる頃には気を失っていた。
「ファーブル、俺はたまに俺よりお前の方が悪魔に向いてんじゃねぇかって思うぜ」
「失礼な。朝から騒ぐ方が悪いからこうしただけで、もう少し常識的ならこんな事しないよ」
そんな事を言いながらネロに近づくと、ここ数日どう過ごしていたのか悪臭がした。
「またお風呂にも入らないで……しょうがないな」
そう呟いてから寝ている彼の汚れた服を下着諸共剥ぎ取り、家に併設した井戸から水を汲んでぶっ掛けてから泡の実(潰すと汚れをよく落とす泡が出る木の実)を使って頭から足の先まで念入りに洗ってやる。
ネロは体を洗う事をどうでもいいと考えているらしく、来る時はいつも悪臭を放つのでこうして寝かせてから洗う事がいつもの事になっていた。
「あ!おはようファー君、また世話してるの?」
「おはよう。ついさっきまた汚れて来てたから」
また、というのもネロは僕によく喧嘩をしに来るので、その度に返り討ちにしてから世話を焼くので村の誰もが「ああまたか」みたいな感じになっている。
「ご飯作っておくね」
「ありがとう、お願い」
「その子の世話はファー君の仕事だもんね」
別にやりたくてやっている訳では無いのだけど、返り討ちにして放置する事があまりにも申し訳無さ過ぎて出来ないだけなんです。
そうしてネロの身を清めたら裸のまま僕の布団に寝かせてやり、全身を隈なく見て怪我しているところに簡単な手当をしてあげる。
「洗濯の前にご飯食べる?」
「食べようかな」
寝室を出た時に丁度出来上がったらしく、僕は少し遅めの温かな朝食を取りながら、初めてネロと会った日を思い出す。
彼は今から三年前、遠くの国からこの村へと流れ着いた子供であり、その時の風貌はボロボロで血だらけの服を着ていて全身から酷い悪臭を放ち、更に全身傷だらけでフラフラと歩きながらも周囲を睨みつけていた。
その目は人に対する憎悪に満ちており、放置するには危険だけど無力化して抑えるにはボロボロで誤って命を奪いかねなかった事から自警団は少年の周囲を取り囲んで様子を見ることしか出来ずにいた。
そんな状態を打破するために、既に魔物に武器無しでの戦いをしていた僕は勝手に彼の前に出て、そしてさっきのように素手でお腹を殴って気絶させた。
その後寝てる間に治療して寝かせてあげたけど、それが彼からしたら屈辱的だったらしく、それからたまに今日のように戦いを挑んで来るようになったのだ。
暴力的なのであまり歓迎はしたくないけれど、それでも何となく放って置けない弟のように感じるようになっている辺り、僕は人に凄く甘いのだろう。
その対象は暗い感情を持つ者、もしくは何を犠牲にしても構わないという身勝手な正義感を持つ者である事が多いのだとか。
そういった人は他者を踏み躙る事を当然の事のように行うらしいけど、その後大切な人を殺され生き残った人は何を思うのだろうか。
「おいお前!今日こそ倒してやる!」
その一つの答えを持つ者、家族を目の前で殺されたらしい少年『ネロ』は朝からご近所さんの迷惑も考えずに叫ぶ。
彼は今十二歳であり、背は低く十と言っても納得出来る程度の鮮やかな赤い髪(今は薄汚れてくすんでいるけど)を持つ少年である。
「ネロ、朝ご飯は食べた?まだなら一緒に食べよう」
「メシの話なんかしてねぇよ!戦えこの野郎!」
「まあまあ落ち着いて。後で相手してあげるから」
「俺は今すぐ戦いてぇんだよ!」
とりあえず優しく声をかけるものの、いつも通り聞く耳は持たないらしい。
僕は「はぁ」と一つため息をつき、フルブズの身体強化の力を瞬間的に使用して彼に肉迫し、そのお腹に全力のグーパンチを行う。
すると体の小さなネロは「ウグッ」とうめき声をあげて吹き飛び、地面に叩きつけられる頃には気を失っていた。
「ファーブル、俺はたまに俺よりお前の方が悪魔に向いてんじゃねぇかって思うぜ」
「失礼な。朝から騒ぐ方が悪いからこうしただけで、もう少し常識的ならこんな事しないよ」
そんな事を言いながらネロに近づくと、ここ数日どう過ごしていたのか悪臭がした。
「またお風呂にも入らないで……しょうがないな」
そう呟いてから寝ている彼の汚れた服を下着諸共剥ぎ取り、家に併設した井戸から水を汲んでぶっ掛けてから泡の実(潰すと汚れをよく落とす泡が出る木の実)を使って頭から足の先まで念入りに洗ってやる。
ネロは体を洗う事をどうでもいいと考えているらしく、来る時はいつも悪臭を放つのでこうして寝かせてから洗う事がいつもの事になっていた。
「あ!おはようファー君、また世話してるの?」
「おはよう。ついさっきまた汚れて来てたから」
また、というのもネロは僕によく喧嘩をしに来るので、その度に返り討ちにしてから世話を焼くので村の誰もが「ああまたか」みたいな感じになっている。
「ご飯作っておくね」
「ありがとう、お願い」
「その子の世話はファー君の仕事だもんね」
別にやりたくてやっている訳では無いのだけど、返り討ちにして放置する事があまりにも申し訳無さ過ぎて出来ないだけなんです。
そうしてネロの身を清めたら裸のまま僕の布団に寝かせてやり、全身を隈なく見て怪我しているところに簡単な手当をしてあげる。
「洗濯の前にご飯食べる?」
「食べようかな」
寝室を出た時に丁度出来上がったらしく、僕は少し遅めの温かな朝食を取りながら、初めてネロと会った日を思い出す。
彼は今から三年前、遠くの国からこの村へと流れ着いた子供であり、その時の風貌はボロボロで血だらけの服を着ていて全身から酷い悪臭を放ち、更に全身傷だらけでフラフラと歩きながらも周囲を睨みつけていた。
その目は人に対する憎悪に満ちており、放置するには危険だけど無力化して抑えるにはボロボロで誤って命を奪いかねなかった事から自警団は少年の周囲を取り囲んで様子を見ることしか出来ずにいた。
そんな状態を打破するために、既に魔物に武器無しでの戦いをしていた僕は勝手に彼の前に出て、そしてさっきのように素手でお腹を殴って気絶させた。
その後寝てる間に治療して寝かせてあげたけど、それが彼からしたら屈辱的だったらしく、それからたまに今日のように戦いを挑んで来るようになったのだ。
暴力的なのであまり歓迎はしたくないけれど、それでも何となく放って置けない弟のように感じるようになっている辺り、僕は人に凄く甘いのだろう。
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