62 / 99
62.シェルム騎士団長 side ルードルフ
「なぁ、ルード。お前うちの子になるつもりはないか?」
ハードな訓練を終えへばっていた所に、同じく隣で訓練を受けていた騎士団長のジェームズ・フォン・シェルム様が話しかけてくる。本来はこんな所で訓練をするような人じゃねぇんだが【剣豪】ヴィダ様の剣術を学びたいらしく、時間を作ってはこうして訓練に混じっている。
俺はそんなシェルム騎士団長に言われた言葉の意味を飲み込むのに時間がかかって、一拍遅れて返事をする。
「うちの子って、養子縁組ってことですか?」
「そうだ」
何故俺を……?内心の疑問が顔にありありと出ていたのか、シェルム騎士団長は続ける。
「お前、最近マルティン伯爵の次女のご令嬢といい仲らしいじゃないか。彼女と釣り合うために、欲しくないか?爵位」
「欲しくないと言ったら嘘になりますけど、俺はまだ何も成し遂げてません」
俗な事を言うシェルム騎士団長に、キッパリと言い返す。確かに彼女と釣り合う身分は喉から手が出る程欲しい。だが、俺はまだ何もなし得てない。そんな棚からぼたもち的な幸運で爵位を得るのはなんか違ぇ気がするのだ。
「っはー!かってぇな、お前。そんなんじゃ彼女にも逃げられちまうぜ?」
「その可能性があることは知ってます。そうなっても仕方ないと思ってますし。選ぶのは彼女自身なので」
彼女を待たせているのは俺の都合なので、当然待ちきれなくなって他の男の元へ彼女が行っちまったとしても、責める気もないし責める権利もねぇと思っている。その事を伝えると、シェルム騎士団長は大きなため息をついて、さらに続ける。
「お前の考えは分かった。それじゃあここからは取引といこう」
「取引ですか?」
「あぁ。お前、騎士団長目指せ」
「……は?」
「いいか、お前をうちの養子にするのは俺にとってもメリットがある」
俺は黙って話を聞く、シェルム騎士団長は指を1本立てると。
「1つ目。お前を養子に迎えることによって、マルティン伯爵との繋がりができる」
もう1本立て。
「2つ目。養子に迎えたお前が騎士団長になることによって、シェルム伯爵家が武に強い家というのを印象付けられる」
さらにもう1本立てて。
「3つ目。可愛い娘を望む嫁ぎ先に嫁に出せる。これでパパ嫌いとは言われなくなる……以上だ」
3つ目の理由が1番声に力が籠っているような気もするが、それはさておき。
「俺もマルティン伯爵令嬢も、シェルム伯爵家とは血の繋がりがありません。そんな俺たちがシェルム伯爵家の跡を継いでもいいんですか?」
「構わねぇさ。そもそももうどの家も、神話時代からの純血を守り抜いてないしな」
「シェルム騎士団長が構わないのなら、俺は一向に構いません。俺が騎士団長なる代わりに、シェルム伯爵家に迎え入れてもらえるということですか?」
「そうだな。これは云わば騎士団長になる報酬の前払いだ。やれるな?ルード」
「そういうことなら、やります!やらせてください!」
そういう事なら、俺は新たに目標が出来るし、マルティン伯爵令嬢をこれ以上待たせなくて済む。俺は力強くシェルム騎士団長の提案にのるのだった。
「ところで、シェルム騎士団長は良いとして、奥方様とかシェルム伯爵令嬢とかは納得してるんですか?」
「ん?あぁ、うちの嫁さんは少し変わっていてな。顔云々より筋肉が1番好きなんだそうだ。だからルードの話をしたら前のめりだったし、恐らく同じ趣味を持ってるマルティン伯爵令嬢の話をしたら、さらに大喜びだったぞ」
「そうなんですか」
意外と多いのか?筋肉好きなご令嬢って。
「うちの娘に関しても、ルードが養子に入ると望む嫁ぎ先行けるって聞いて喜んでるから心配いらねぇよ」
「なるほど」
「恋仲の奴がいるらしくてなぁ、身分的には問題ないんだが、なんせ一人娘だから家継いでもらわないといけねぇってんで、表立って応援できなかったんだ」
「まぁ貴族様は色々なしがらみもありますしね」
「そうだな。そしたらリュグナー宰相に声掛けられてな、お前を養子に迎えるつもりはないかって」
「リュグナー宰相が?」
「あぁ、お前を養子にとる事と、そのメリットについて教えてくれてな」
「そうだったんですね」
リュグナー宰相、俺なんかの事を気にしていてくれていたのか。リーフの影響かもしれねぇが、目をかけてもらえているようで少し嬉しい。
そして俺は、シェルム伯爵家の養子に迎え入れられることになり。待たせていたマルティン伯爵令嬢……レイチェルとの交際も始めた。
だが誤算だったのは、貴族様になってさらに行儀作法が厳しくなったこと。予想の何倍も辛いその指導に、何度挫折しそうになったか分からねぇ。剣振ってる方が楽ってやばいだろ。
晴れて養子縁組を果たした時には、俺はゲッソリとやつれていた。まぁ、体型はストレスくらいじゃ変わんねぇから、主に精神的にだが。
だけどまぁ、隣で嬉しそうに笑うレイチェル……レイの姿を見たら、これはこれでいいかと思ってしまうのだから、俺もたいがい仕方ねぇ。
ハードな訓練を終えへばっていた所に、同じく隣で訓練を受けていた騎士団長のジェームズ・フォン・シェルム様が話しかけてくる。本来はこんな所で訓練をするような人じゃねぇんだが【剣豪】ヴィダ様の剣術を学びたいらしく、時間を作ってはこうして訓練に混じっている。
俺はそんなシェルム騎士団長に言われた言葉の意味を飲み込むのに時間がかかって、一拍遅れて返事をする。
「うちの子って、養子縁組ってことですか?」
「そうだ」
何故俺を……?内心の疑問が顔にありありと出ていたのか、シェルム騎士団長は続ける。
「お前、最近マルティン伯爵の次女のご令嬢といい仲らしいじゃないか。彼女と釣り合うために、欲しくないか?爵位」
「欲しくないと言ったら嘘になりますけど、俺はまだ何も成し遂げてません」
俗な事を言うシェルム騎士団長に、キッパリと言い返す。確かに彼女と釣り合う身分は喉から手が出る程欲しい。だが、俺はまだ何もなし得てない。そんな棚からぼたもち的な幸運で爵位を得るのはなんか違ぇ気がするのだ。
「っはー!かってぇな、お前。そんなんじゃ彼女にも逃げられちまうぜ?」
「その可能性があることは知ってます。そうなっても仕方ないと思ってますし。選ぶのは彼女自身なので」
彼女を待たせているのは俺の都合なので、当然待ちきれなくなって他の男の元へ彼女が行っちまったとしても、責める気もないし責める権利もねぇと思っている。その事を伝えると、シェルム騎士団長は大きなため息をついて、さらに続ける。
「お前の考えは分かった。それじゃあここからは取引といこう」
「取引ですか?」
「あぁ。お前、騎士団長目指せ」
「……は?」
「いいか、お前をうちの養子にするのは俺にとってもメリットがある」
俺は黙って話を聞く、シェルム騎士団長は指を1本立てると。
「1つ目。お前を養子に迎えることによって、マルティン伯爵との繋がりができる」
もう1本立て。
「2つ目。養子に迎えたお前が騎士団長になることによって、シェルム伯爵家が武に強い家というのを印象付けられる」
さらにもう1本立てて。
「3つ目。可愛い娘を望む嫁ぎ先に嫁に出せる。これでパパ嫌いとは言われなくなる……以上だ」
3つ目の理由が1番声に力が籠っているような気もするが、それはさておき。
「俺もマルティン伯爵令嬢も、シェルム伯爵家とは血の繋がりがありません。そんな俺たちがシェルム伯爵家の跡を継いでもいいんですか?」
「構わねぇさ。そもそももうどの家も、神話時代からの純血を守り抜いてないしな」
「シェルム騎士団長が構わないのなら、俺は一向に構いません。俺が騎士団長なる代わりに、シェルム伯爵家に迎え入れてもらえるということですか?」
「そうだな。これは云わば騎士団長になる報酬の前払いだ。やれるな?ルード」
「そういうことなら、やります!やらせてください!」
そういう事なら、俺は新たに目標が出来るし、マルティン伯爵令嬢をこれ以上待たせなくて済む。俺は力強くシェルム騎士団長の提案にのるのだった。
「ところで、シェルム騎士団長は良いとして、奥方様とかシェルム伯爵令嬢とかは納得してるんですか?」
「ん?あぁ、うちの嫁さんは少し変わっていてな。顔云々より筋肉が1番好きなんだそうだ。だからルードの話をしたら前のめりだったし、恐らく同じ趣味を持ってるマルティン伯爵令嬢の話をしたら、さらに大喜びだったぞ」
「そうなんですか」
意外と多いのか?筋肉好きなご令嬢って。
「うちの娘に関しても、ルードが養子に入ると望む嫁ぎ先行けるって聞いて喜んでるから心配いらねぇよ」
「なるほど」
「恋仲の奴がいるらしくてなぁ、身分的には問題ないんだが、なんせ一人娘だから家継いでもらわないといけねぇってんで、表立って応援できなかったんだ」
「まぁ貴族様は色々なしがらみもありますしね」
「そうだな。そしたらリュグナー宰相に声掛けられてな、お前を養子に迎えるつもりはないかって」
「リュグナー宰相が?」
「あぁ、お前を養子にとる事と、そのメリットについて教えてくれてな」
「そうだったんですね」
リュグナー宰相、俺なんかの事を気にしていてくれていたのか。リーフの影響かもしれねぇが、目をかけてもらえているようで少し嬉しい。
そして俺は、シェルム伯爵家の養子に迎え入れられることになり。待たせていたマルティン伯爵令嬢……レイチェルとの交際も始めた。
だが誤算だったのは、貴族様になってさらに行儀作法が厳しくなったこと。予想の何倍も辛いその指導に、何度挫折しそうになったか分からねぇ。剣振ってる方が楽ってやばいだろ。
晴れて養子縁組を果たした時には、俺はゲッソリとやつれていた。まぁ、体型はストレスくらいじゃ変わんねぇから、主に精神的にだが。
だけどまぁ、隣で嬉しそうに笑うレイチェル……レイの姿を見たら、これはこれでいいかと思ってしまうのだから、俺もたいがい仕方ねぇ。
あなたにおすすめの小説
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます
ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。
前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。
社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。
けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。
家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士――
五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。
遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。
異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。
女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
私だけ価値観の違う世界~婚約破棄され、罰として醜男だと有名な辺境伯と結婚させられたけれど何も問題ないです~
キョウキョウ
恋愛
どうやら私は、周りの令嬢たちと容姿の好みが違っているみたい。
友人とのお茶会で発覚したけれど、あまり気にしなかった。
人と好みが違っていても、私には既に婚約相手が居るから。
その人と、どうやって一緒に生きて行くのかを考えるべきだと思っていた。
そんな私は、卒業パーティーで婚約者である王子から婚約破棄を言い渡された。
婚約を破棄する理由は、とある令嬢を私がイジメたという告発があったから。
もちろん、イジメなんてしていない。だけど、婚約相手は私の話など聞かなかった。
婚約を破棄された私は、醜男として有名な辺境伯と強制的に結婚させられることになった。
すぐに辺境へ送られてしまう。友人と離ればなれになるのは寂しいけれど、王子の命令には逆らえない。
新たにパートナーとなる人と会ってみたら、その男性は胸が高鳴るほど素敵でいい人だった。
人とは違う好みの私に、バッチリ合う相手だった。
これから私は、辺境伯と幸せな結婚生活を送ろうと思います。
※カクヨムにも掲載中の作品です。