7 / 32
第7話 小さな三角屋根の家は
しおりを挟む
午後は適当に園庭で遊び、夕方になる前にアノーリオンとララノアを帰した。
子供2人だけで帰すことに抵抗があったが、帰り道は分かるし魔法も使えるから、という2人の自信満々な顔を信じて帰すことにした。
というより、2人の親にそうするよう言われた手前、このエルフの里に詳しくない揺莉にはどうすることもできなかった。
「ふぅ~…あとは、適当に片付けて私も家に帰ろう~」
幼稚園の隣に家があり、すぐ帰れて、そして家にはエルフ族もいなくて1人になれるというのは、まだこの世界に慣れない揺莉にとっては、ありがたいことだった。
揺莉は教室で腕を上にあげ、ゆっくりと伸びをする。
「調理場の片付けが終わったので、私も帰ります」
「ひゃあっ!?」
急に背後から声をかけられ驚いた揺莉は、肩をすくめた体勢で振り返る。
揺莉と目が合ったルーミルが、教室の入口を身を屈めて入ってきた。
ルーミルがまだ園内にいることをすっかり忘れていた揺莉は、慌ててルーミルに向かってお礼をする。
「ルーミルさん…!今日は急なことでしたのに、ありがとうございました…!あのっ、今日働いていただいた分の謝礼をしたいのですが……。えっと…エルフの里ではどういったやり方があるんでしょうか…私の世界にはお金っていうものがあって、そのお金が成果の報酬となるんです…」
「………」
「えっ…と、お金っていうのはつまり…働いたことの対価として得られるもので、その得たお金で、色々なものを手に入れられたりできまして……」
「——この里には、そういったものはありませんね」
「あ…そうなんですね…」
相変わらずルーミルからの無愛想な返答に、揺莉は肩を落とす。
「あの、じゃあお金と似たような、何かルーミルさんに渡せる報酬みたいなものは、ありませんか?」
「…エルフの里では、他者共存を尊重している。誰かが誰かを使うことはないし、皆平等だ。それに今日は、ラエルノアに頼まれて来ただけだ。私がしたことを、あなたが気にする必要はないし、代わりに何かする必要もない」
「あっ…。そう…なのですね……分かりました…」
淡々と話すルーミルに、揺莉は少し受け入れ拒否されたような気持ちになり、肩を落として斜め下に視線をやる。
すると、先程とは違いルーミルから少し優しい口調で話しかけられる。
「明日も、同じようにここに来ればいいですか」
「……えっ?明日も…来てくださるんですか?」
揺莉は驚いて顔を上げると、ルーミルがじっとこちらを見つめていた。
「私は戦闘で前線に出ることはないので、今手は空いていますので」
「えっ、あ、じゃあ…お願いしてもいいですか?ありがとうございます…!今日の昼食もとても美味しかったので、続けてきてくださると、私も嬉しいです」
揺莉が笑顔を向けると、ルーミルもそれに反応して少し微笑んだ気がしたが、気のせいなのかすぐに元の冷静な表情になっていた。
「それでは、また明日来ます。お疲れ様でした」
「あっ、はい!お疲れ様です!」
ルーミルが踵を返し教室を出ていく後ろ姿に、揺莉は慌てて声をかける。
◇◇◇◇
幼稚園での後片付けも終わり、小さな三角屋根の家に戻った揺莉は部屋に入ると、テーブルの上に何かが置いてあるのに気づく。
「ん?なんだろ?」
テーブルに近づくと、そこにはお皿の上にのった料理と、置き手紙があった。
"昼食で使った食材の残りで作りました。良ければ食べてください。部屋には魔法で料理をおいたので、入室はしていません。ルーミル"
「ルーミルさんが……!?」
揺莉は、思わぬ用意に驚くと共に、エルサリオン、ラエルノア、ルーミルといい、エルフ族の自分への気遣いに意外に思う。
「書籍ではエルフ族は高慢な性格で書かれることもあったし、プライドも高そうなのに、意外と優しいんだぁ。それに、最初はあんなに私が里にいることを嫌がってたのに、家に幼稚園に、食事まで…意外とこの先うまくやっていけるのかな……」
揺莉はルーミルからの置き手紙をテーブルに置き、鼻歌をし1人喜びながら席に座ると、少し早めの夜ご飯を食べ始める。
「うん!やっぱり美味しい!この上にかかっているの、なんだろう?クリームソースみたいな?感じかなぁ?元の世界でも食べたことあるような味だし、美味しい~」
揺莉は1人でパクパクと食事を平らげると、シャワーを浴びそのまま寝る準備をしてベッドに転がり込む。
「明日もアノーリオンくんやララノアちゃん、来てくれるかな…。あと明日は何をしようかな……」
考えながら、うとうとしてそのまま眠ってしまった。
◇◇◇◇
コンコン
扉を叩く音がして、揺莉は飲んでいた水をテーブルに置く。
夜明けと共に目が覚めた揺莉は、着替え終えて、そろそろ幼稚園に向かおうかと、準備をしようとしていたところだった。
「こんな早くに誰だろ、またアノーリオンくんかな」
揺莉は扉の取手に手をかけ開けると、そこに立っていたのは前髪が少し長めで全体はやや短めの金髪、そして緑色の目をした子どものエルフだった。
「あれ……確かお名前はクルゴンくんだったかな?」
揺莉は腰を屈めて目線を合わせると、優しい声でクルゴンに話しかける。
「うん、そうだよ。おぼえていてくれて、ありがとう」
はにかんで笑うクルゴン。
「どうしたの?私に何か用かな?」
「アノーリオンとララノアが、ゆりさんがつくったヨウチエンていう所に行っているって聞いたから、僕も2人と一緒に行きたいなって」
小さい声で話すクルゴンは、話している途中に時々下を向いたり、はたまた上目遣いで揺莉を見たりしていた。
(恥ずかしがってるのかな?それとも…)
揺莉はその場でしゃがむと両膝に手を置き、クルゴンを見上げる形で話しだす。
「そっかぁ。2人と一緒に幼稚園に来たいんだね。でもね、来るには大人の許可が必要かな。クルゴンくんのパパやママは、今ここに一緒に来てる?」
揺莉の問いかけに、クルゴンは無言で首を横に張る。
「そっかぁ。それじゃあ、ここに来ることをパパやママは、いいよって言ってくれてたかな?」
クルゴンは少し考えこむような顔をしたが、すぐにまた視線を戻しコクンと頷いた。
「本当…?嘘はだめだよ。大事な子供のクルゴンくんを預かるんだから、パパやママに行っていいよって言ってもらえてないと、私は幼稚園に来ていいよ、って言えないんだ」
「うーん…ほんとうはね、はなしてないんだ…。パパもママも戦いにいっちゃってて、何日も帰ってきてないんだ…。だから、ここに来たいって話も、いつできるか、わからないんだよ…」
「えっ、じゃあパパとママがいない間、ずっと1人でいたの?」
「うん…。でも、アノーリオンとララノアと遊んだりもしてるから…」
「ご飯とかは?どうしてるの?」
「僕がつくってる…。身の回りのことは、1人でできるよ…」
「そうなんだ…」
「うん、だから僕もここに来てもいい…?パパたちが帰ってくるまででもいいよ…。帰ってきたら、パパたちにも話すから…おねがいします……」
クルゴンにうるうるした目で見つめられ、揺莉はここで断ることに良心が痛む。
(うーん…どうせ1人でいるなら受け入れてもいいのかなぁ…でも、これが後々問題になって揉めてる原因になると嫌だしなぁ…)
「あら……そこにいるのは…クルゴン…?」
家の扉の所で悶々と悩んでいる揺莉に声をかけたのは、ララノアと手を繋いだラエルノアだった。
「あっ、ラエルノアさん、おはようございます!ララノアさんもおはよう~!今日も来てくれたんだね~、ありがとう~!」
揺莉が手を振り笑顔を向けると、パッと笑顔になったララノアが、揺莉の方へ駆け出していこうとする。
しかし、ラエルノアがララノアの手をギュッと握り、行かないよう引き止めた。
「クルゴン…、あなたも揺莉さんの幼稚園に来ることにしたの?」
微笑を浮かべたラエルノアが、揺莉の前に立つクルゴンに話しかける。
しゃがんだままの揺莉がクルゴンの顔を見上げると、さっきまで瞳を潤ませていた可愛らしい健気な表情とは一変し、少し冷めたようなクールな顔つきになっており、揺莉は驚き思わずクルゴンをじっと見つめる。
「うん、そうだよ」
「そう……あなたのお父様達はずっと戦闘に出ているらしいけど、幼稚園に来ることを許可したのかしら…?」
「……それについては、今ゆりさんに話したところだよ」
「ここに来るのは、お父様達に話をしてからが良いと思うわよ。特に、揺莉さんがエルフの里にいることも、あなたのお父様方は戦闘に出ているから知らないでしょう」
「父上達には僕から話すよ。ラエルノアには関係ないから、気にする必要ないよ」
クルゴンの言葉に、笑顔だったラエルノアの顔が引き攣る。
揺莉も子どものクルゴンが、大人のラエルノアを呼び捨てにすること、そして対等に話しているような感じ、そして最初の印象とは違って流暢に話す違和感と驚きで、2人の会話に入れずにいた。
会話が途切れたラエルノアとクルゴンの間に、不穏な空気が流れる。ラエルノアに手を掴まれたままのララノアは、心配そうにラエルノアの顔を見上げていた。
ラエルノアは口元に笑みを浮かべてはいるが、その視線はどこか冷たく、その瞳でクルゴンを見つめる。
「関係なくないわ。同じエルフ族でしょう、大人だったら、子どものことを心配するものよ。それに、揺莉さんも何の生物か分からないし、まだ分からないことばかりじゃない…?」
ラエルノアの言葉に揺莉は、胸にドヨンとした暗い何かが立ちこめる。
ラエルノアに何の生物呼ばわりされたことで、自分は下等な生き物に思われていることに気付いたからだ。
「ゆりさんのことが分からないと言いながら、ララノアを預けてるじゃないか。あぁ…預けてるフリで、ほんとうはエルサリオンと結託して、ゆりさんを監視してるのかな?こんな、罪人が処刑されるまで閉じ込める家に、ゆりさんを置いているんだからね」
子供2人だけで帰すことに抵抗があったが、帰り道は分かるし魔法も使えるから、という2人の自信満々な顔を信じて帰すことにした。
というより、2人の親にそうするよう言われた手前、このエルフの里に詳しくない揺莉にはどうすることもできなかった。
「ふぅ~…あとは、適当に片付けて私も家に帰ろう~」
幼稚園の隣に家があり、すぐ帰れて、そして家にはエルフ族もいなくて1人になれるというのは、まだこの世界に慣れない揺莉にとっては、ありがたいことだった。
揺莉は教室で腕を上にあげ、ゆっくりと伸びをする。
「調理場の片付けが終わったので、私も帰ります」
「ひゃあっ!?」
急に背後から声をかけられ驚いた揺莉は、肩をすくめた体勢で振り返る。
揺莉と目が合ったルーミルが、教室の入口を身を屈めて入ってきた。
ルーミルがまだ園内にいることをすっかり忘れていた揺莉は、慌ててルーミルに向かってお礼をする。
「ルーミルさん…!今日は急なことでしたのに、ありがとうございました…!あのっ、今日働いていただいた分の謝礼をしたいのですが……。えっと…エルフの里ではどういったやり方があるんでしょうか…私の世界にはお金っていうものがあって、そのお金が成果の報酬となるんです…」
「………」
「えっ…と、お金っていうのはつまり…働いたことの対価として得られるもので、その得たお金で、色々なものを手に入れられたりできまして……」
「——この里には、そういったものはありませんね」
「あ…そうなんですね…」
相変わらずルーミルからの無愛想な返答に、揺莉は肩を落とす。
「あの、じゃあお金と似たような、何かルーミルさんに渡せる報酬みたいなものは、ありませんか?」
「…エルフの里では、他者共存を尊重している。誰かが誰かを使うことはないし、皆平等だ。それに今日は、ラエルノアに頼まれて来ただけだ。私がしたことを、あなたが気にする必要はないし、代わりに何かする必要もない」
「あっ…。そう…なのですね……分かりました…」
淡々と話すルーミルに、揺莉は少し受け入れ拒否されたような気持ちになり、肩を落として斜め下に視線をやる。
すると、先程とは違いルーミルから少し優しい口調で話しかけられる。
「明日も、同じようにここに来ればいいですか」
「……えっ?明日も…来てくださるんですか?」
揺莉は驚いて顔を上げると、ルーミルがじっとこちらを見つめていた。
「私は戦闘で前線に出ることはないので、今手は空いていますので」
「えっ、あ、じゃあ…お願いしてもいいですか?ありがとうございます…!今日の昼食もとても美味しかったので、続けてきてくださると、私も嬉しいです」
揺莉が笑顔を向けると、ルーミルもそれに反応して少し微笑んだ気がしたが、気のせいなのかすぐに元の冷静な表情になっていた。
「それでは、また明日来ます。お疲れ様でした」
「あっ、はい!お疲れ様です!」
ルーミルが踵を返し教室を出ていく後ろ姿に、揺莉は慌てて声をかける。
◇◇◇◇
幼稚園での後片付けも終わり、小さな三角屋根の家に戻った揺莉は部屋に入ると、テーブルの上に何かが置いてあるのに気づく。
「ん?なんだろ?」
テーブルに近づくと、そこにはお皿の上にのった料理と、置き手紙があった。
"昼食で使った食材の残りで作りました。良ければ食べてください。部屋には魔法で料理をおいたので、入室はしていません。ルーミル"
「ルーミルさんが……!?」
揺莉は、思わぬ用意に驚くと共に、エルサリオン、ラエルノア、ルーミルといい、エルフ族の自分への気遣いに意外に思う。
「書籍ではエルフ族は高慢な性格で書かれることもあったし、プライドも高そうなのに、意外と優しいんだぁ。それに、最初はあんなに私が里にいることを嫌がってたのに、家に幼稚園に、食事まで…意外とこの先うまくやっていけるのかな……」
揺莉はルーミルからの置き手紙をテーブルに置き、鼻歌をし1人喜びながら席に座ると、少し早めの夜ご飯を食べ始める。
「うん!やっぱり美味しい!この上にかかっているの、なんだろう?クリームソースみたいな?感じかなぁ?元の世界でも食べたことあるような味だし、美味しい~」
揺莉は1人でパクパクと食事を平らげると、シャワーを浴びそのまま寝る準備をしてベッドに転がり込む。
「明日もアノーリオンくんやララノアちゃん、来てくれるかな…。あと明日は何をしようかな……」
考えながら、うとうとしてそのまま眠ってしまった。
◇◇◇◇
コンコン
扉を叩く音がして、揺莉は飲んでいた水をテーブルに置く。
夜明けと共に目が覚めた揺莉は、着替え終えて、そろそろ幼稚園に向かおうかと、準備をしようとしていたところだった。
「こんな早くに誰だろ、またアノーリオンくんかな」
揺莉は扉の取手に手をかけ開けると、そこに立っていたのは前髪が少し長めで全体はやや短めの金髪、そして緑色の目をした子どものエルフだった。
「あれ……確かお名前はクルゴンくんだったかな?」
揺莉は腰を屈めて目線を合わせると、優しい声でクルゴンに話しかける。
「うん、そうだよ。おぼえていてくれて、ありがとう」
はにかんで笑うクルゴン。
「どうしたの?私に何か用かな?」
「アノーリオンとララノアが、ゆりさんがつくったヨウチエンていう所に行っているって聞いたから、僕も2人と一緒に行きたいなって」
小さい声で話すクルゴンは、話している途中に時々下を向いたり、はたまた上目遣いで揺莉を見たりしていた。
(恥ずかしがってるのかな?それとも…)
揺莉はその場でしゃがむと両膝に手を置き、クルゴンを見上げる形で話しだす。
「そっかぁ。2人と一緒に幼稚園に来たいんだね。でもね、来るには大人の許可が必要かな。クルゴンくんのパパやママは、今ここに一緒に来てる?」
揺莉の問いかけに、クルゴンは無言で首を横に張る。
「そっかぁ。それじゃあ、ここに来ることをパパやママは、いいよって言ってくれてたかな?」
クルゴンは少し考えこむような顔をしたが、すぐにまた視線を戻しコクンと頷いた。
「本当…?嘘はだめだよ。大事な子供のクルゴンくんを預かるんだから、パパやママに行っていいよって言ってもらえてないと、私は幼稚園に来ていいよ、って言えないんだ」
「うーん…ほんとうはね、はなしてないんだ…。パパもママも戦いにいっちゃってて、何日も帰ってきてないんだ…。だから、ここに来たいって話も、いつできるか、わからないんだよ…」
「えっ、じゃあパパとママがいない間、ずっと1人でいたの?」
「うん…。でも、アノーリオンとララノアと遊んだりもしてるから…」
「ご飯とかは?どうしてるの?」
「僕がつくってる…。身の回りのことは、1人でできるよ…」
「そうなんだ…」
「うん、だから僕もここに来てもいい…?パパたちが帰ってくるまででもいいよ…。帰ってきたら、パパたちにも話すから…おねがいします……」
クルゴンにうるうるした目で見つめられ、揺莉はここで断ることに良心が痛む。
(うーん…どうせ1人でいるなら受け入れてもいいのかなぁ…でも、これが後々問題になって揉めてる原因になると嫌だしなぁ…)
「あら……そこにいるのは…クルゴン…?」
家の扉の所で悶々と悩んでいる揺莉に声をかけたのは、ララノアと手を繋いだラエルノアだった。
「あっ、ラエルノアさん、おはようございます!ララノアさんもおはよう~!今日も来てくれたんだね~、ありがとう~!」
揺莉が手を振り笑顔を向けると、パッと笑顔になったララノアが、揺莉の方へ駆け出していこうとする。
しかし、ラエルノアがララノアの手をギュッと握り、行かないよう引き止めた。
「クルゴン…、あなたも揺莉さんの幼稚園に来ることにしたの?」
微笑を浮かべたラエルノアが、揺莉の前に立つクルゴンに話しかける。
しゃがんだままの揺莉がクルゴンの顔を見上げると、さっきまで瞳を潤ませていた可愛らしい健気な表情とは一変し、少し冷めたようなクールな顔つきになっており、揺莉は驚き思わずクルゴンをじっと見つめる。
「うん、そうだよ」
「そう……あなたのお父様達はずっと戦闘に出ているらしいけど、幼稚園に来ることを許可したのかしら…?」
「……それについては、今ゆりさんに話したところだよ」
「ここに来るのは、お父様達に話をしてからが良いと思うわよ。特に、揺莉さんがエルフの里にいることも、あなたのお父様方は戦闘に出ているから知らないでしょう」
「父上達には僕から話すよ。ラエルノアには関係ないから、気にする必要ないよ」
クルゴンの言葉に、笑顔だったラエルノアの顔が引き攣る。
揺莉も子どものクルゴンが、大人のラエルノアを呼び捨てにすること、そして対等に話しているような感じ、そして最初の印象とは違って流暢に話す違和感と驚きで、2人の会話に入れずにいた。
会話が途切れたラエルノアとクルゴンの間に、不穏な空気が流れる。ラエルノアに手を掴まれたままのララノアは、心配そうにラエルノアの顔を見上げていた。
ラエルノアは口元に笑みを浮かべてはいるが、その視線はどこか冷たく、その瞳でクルゴンを見つめる。
「関係なくないわ。同じエルフ族でしょう、大人だったら、子どものことを心配するものよ。それに、揺莉さんも何の生物か分からないし、まだ分からないことばかりじゃない…?」
ラエルノアの言葉に揺莉は、胸にドヨンとした暗い何かが立ちこめる。
ラエルノアに何の生物呼ばわりされたことで、自分は下等な生き物に思われていることに気付いたからだ。
「ゆりさんのことが分からないと言いながら、ララノアを預けてるじゃないか。あぁ…預けてるフリで、ほんとうはエルサリオンと結託して、ゆりさんを監視してるのかな?こんな、罪人が処刑されるまで閉じ込める家に、ゆりさんを置いているんだからね」
1
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
過労死して転生したので絶対に働かないと決めたのに、何をしても才能がバレる件
やんやんつけバー
ファンタジー
過労死して異世界転生。今度こそ絶対に働かないと決めたのに、何をやっても才能がバレてしまう——。農村で静かに暮らすはずが、魔力、農業、医療……気づけば誰も放っておかない。チートで穏やか系の異世界スローライフ。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる