異世界で幼稚園の先生をすることになりました

めんだCoda

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第14話 介入してもいい

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「…ルーミル…なあに、あなたは揺莉さんの肩をもつの?」

「肩をもつとか、そういう話じゃない。ただ、揺莉さんの話を、もっと素直に聞いてもいいんじゃないかと、そう言っているだけだ」

 ルーミルとラエルノアが見つめ合い空気がピリピリするなか、揺莉はどう入っていこうか迷っていると、アノーリオンの言葉がその気まずさを遮った。

「ゆり!ララノアの様子が変だよ!」

 揺莉、ルーミル、ラエルノアがララノアを見ると、ララノアの身体全体を薄い赤い色の炎みたいなものが、メラメラユラユラと覆っていた。

 ララノアは上半身を丸めてしまっており、表情を確認することができない。

「な…なにこれ、ララノアさんっ、どうしたの、大丈夫?!」

 揺莉がララノアの体に手を伸ばすと、いつの間にか近くにきていたラエルノアに手を掴まれ止められた。

「触らないで」

 ラエルノアはララノアの前にしゃがむと、何かを呟き炎みたいなものに包まれるララノアの体に触れる。

「ララノア、私の目を見て」

 ラエルノアの穏やかな声に、ララノアがゆっくりと顔を上げる。

 顔を上げたララノアの顔は、ぼーっとしており焦点が合っていなかった。

 ラエルノアはララノアの手を握り、ブツブツと何かを長めに呟くと、ララノアの身体周りから炎は消え失せ、ララノアは体の力が突然抜けたかのように、ラエルノアに勢いよく倒れ込んだ。

「ララノアさんっ!」

 揺莉が声を上げると、ラエルノアは意識のないララノアを受け止め、抱っこすると立ち上がった。

「ララノアは、このまま家に連れて帰ります」

「あの…ララノアさんは、大丈夫なんですか…?さっきの炎に包まれた様子は、なにか危ない様子に見えましたが…」

「これは初めてのことではないので、対処の仕方は知っていますので、大丈夫です」

「…何か疾患とか、病気があるとか…もしそういう類でしたら、今後のためにも私にも教えていただきたいのですが…」

「病気…?あなた、もし仮にそう思ったとして、それを言うのは失礼じゃなくて?ララノアには、問題などありません!」

 ラエルノアはきっと揺莉を睨むと、ララノアを抱っこしたまま教室から繋がるベランダに出て行き、待っていた大きなワシのような鳥のそばへと行く。
 そして、ラエルノアはララノアを抱えたまま乗りこみ、一瞬にして上空へ飛び上がっていった。

 揺莉はラエルノア達が飛び立った空を見上げたあと教室へと戻ると、席に座り不安げな顔でこちらを見るアノーリオンとクルゴン、そして腕を組みため息をつくルーミルと目が合った。

「ルーミルさん…さっきのララノアさんの症状、何かご存知ですか?」

 揺莉が尋ねると、ルーミルは視線を横にそらし少し考え込んだのち、ゆっくりと話し始めた。

「あれは、いわゆるストレスからくるものだ。ストレスが溜まると体中を炎が包み、そのまま放っておくと、そのうち周りのものに飛び火する。あれは普通の火とは違って、水をかけて消すことはできない」

「でも、さっきラエルノアさんは何か呟いて消していましたよね」

「…んん…まぁ…あれは一時的な対処でしかない。ストレスの原因が何か理解しなければ、いずれまたストレスが溜まる。そして、溜まれば必ずまたあぁいったことになる。ラエルノアが炎を消したのは、根本的な治療にはなっていない」

「じゃあ、ラエルノアさんは、それを分かっているんですよね…?ララノアさんのメンタルのケアとか…あるいは、子どもの精神に詳しい人とかに相談…とか…そういうことをラエルノアさんは……」

 揺莉は自分で話しながら、最後はハッと鼻で笑う。

「…こんなこと言ったら、またラエルノアさんに嫌われますかね…。私の元いた世界ではそうするんですけれど。エルフの世界ではどうするのかな…私何も知らないや……」

 揺莉が下を向くと、ルーミルが低い声で話す。

「いいんじゃないですか、あなたのやり方をラエルノアに話してみても。現状、ラエルノアとララノアの関係は、上手くいっているとは言い難い。2人の関係を修正するには、誰かが立ち入った方がいいんだが、今のエルフ族に知識と経験があり、2人に干渉できるほど時間に余裕のある大人がいない」

「そうなんですか…。でも、いないって、なんでですか…?」

「…戦闘だよ…」

 机に座ったまま揺莉とルーミルの話している様子を伺っていたクルゴンが、おずおずと話し出した。

「…里外での戦闘が…最近激しくなってきていて…能力の高い大人は…たくさん…駆り出されているんだ…だから…」

「んんっ、ゴホン」

 クルゴンの話の内容に、ルーミルが気まずそうに咳払いをした。

「…あ…違うよ…!…ルーミルさんが能力低いとか…そういうことを言ってるわけじゃないんだよ…ルーミルさんは…その…仕方ないよ…」

 クルゴンが慌てふためいた様子でルーミルに向かって訂正をすると、ルーミルは目を丸くしクルゴンをじっと見つめた。ルーミルは、数秒間固まっていたが、その後、静かに話し出した。

「……知っているのか…まぁ、君の身分なら、そのくらいの情報は入ってくるか…」

「…僕は、誰かに話したりしていないよ…それに、そのことについて知っているのは、いわゆる僕らみたいな…タイプだけだよ…」

 クルゴンはオドオドしながら両手をギュッと机の下で握りしめ、バツが悪そうにルーミルを見上げていた。

「ははっ。別に、君を攻めているつもりはない。気にしないでいい」

「えーー!なになにークルゴンとルーミルさん、何の話をしてるのー?2人で秘密な話しちゃってーずるいなー教えてよー」

 アノーリオンは自席で昼食を食べ進めていたようで、スプーンを片手に持ち不貞腐れた顔をする。

「…アノーリオン…口の横にご飯粒ついてるよ…」

 クルゴンが自分の口の横に指を当て、アノーリオンにご飯粒が付いている場所を伝える。

「うそ、ありがとー。……って、そういうことを教えて欲しいんじゃないからなー」

 アノーリオンは取ったご飯粒を口に入れると、モグモグと口を動かしながら、しかめっ面をする。
 それを見たクルゴンはクスッと笑い、揺莉はいつも通りの2人の様子に、少し気持ちが和んだ。

 そして、先ほどのルーミルとクルゴンの話を思い返す。

「あの、私も教えて欲しいんですが…」

「なんだ?」

 ルーミルは話がひと段落したと思ったのだろう、そろそろ教室を出ようと出入り口の方へ体を傾けかけていたのを止めた。

「さっき、クルゴンくんの身分とか、タイプとか言っていましたよね?それって、どういうことですか…?前にルーミルさん、言ってましたよね、エルフ族は平等で、上下関係はないって…」

「あぁ…それは……」

 ルーミルは一瞬悩み、その後に無言でクルゴンに視線を送ると、クルゴンは小さく頷いた。

「…別に…言ってもらっても…僕は大丈夫です…」

 すると、ご飯を口に含んだアノーリオンが、スプーンを持った手を大きく上にあげる。

「はいはーーい!俺が言う!」

「ちょっと、アノーリオンくん。ご飯はちゃんと食べて、口の中を空っぽにしてから喋りましょう」

 揺莉が注意すると、アノーリオンは一生懸命に口を動かし、ゴクンと飲み込んだ。

「クルゴンはね、ハイエルフなんだよ」
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