異世界で幼稚園の先生をすることになりました

めんだCoda

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第31話 お芋掘り

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「はい!では、みなさんご一緒に!」

「おはようございます!」

 教室で揺莉は前に立ち、アノーリオン、クルゴン、ララノアと一緒に声を合わせて朝の挨拶をする。

「は~い、今日も皆んな元気いっぱい挨拶できました!いいですね~。これからも、毎日元気に過ごしましょうね!」

「はーい!!!」

 3人はまた元気よく返事をする。

「ねぇ、ゆり、今日は何をするのー?」

 席に座ったアノーリオンが、揺莉の背後にある黒板をウキウキした様子で見ている。
 いつもその日にやることが、黒板にかいてあるからだ。

「はい、今日は、皆んなで~…」

「みんなでー?」

 シーンとする教室内。

「お芋掘りをしまーーーす!!」

 揺莉だけが拍手をして盛り上がり、アノーリオン、クルゴン、ララノアは、ぽかんとした表情だ。

「え、オイモホリって、なに?」

「なんだろ~何かのじゅもんなの~?」

「…なにかのイベント…?」

「そうです!!」

 揺莉はクルゴンの発言に、人差し指をビシッと天井に向ける。

「畑という土に埋まっているお芋を1人1人掘り出していくのが、お芋掘りといいます。私のいた世界では、少し遠くの場所まで出向いてお芋掘りをしましたが、ここではそうもいかないので」

 揺莉は、園庭に手を向ける。

「今日は、エルサリオンさんと、ルーミルさんの協力のもと、園庭の一部に畑を作ってもらいましたー!今日はあの奥の、見えるかな?焦茶色の土がフカフカと盛られている場所で、みんなでお芋掘りという活動をします!」

「やったーー!」

 お芋掘りがどういうものなのか、全く想像できていないであろう3人だが、揺莉のテンションにのせられたのか、はたまた新しいことに興味津々だからか、やる気満々で返事をしてくれた。

「はーい、じゃあ、今日はまずはこの長靴を履いてください」

「ながぐつう~?」

「そうそう、少し丈の長い靴でね、ルーミルさんに作ってもらったの」

 揺莉が3人に黄色い長靴を配ると、3人は興味津々に靴の全体を触って見入っている。

「はい、じゃあ、靴箱のところに行って、長靴を履きましょう!その後に、畑の所に行きましょうー!」

「はーーいっ!」

 3人は席を立つと、バタバタと走りながら靴箱へと向かう。

「ほら、走らないよ~!かっこよく歩きましょー!」

 いつものように3人の背中に声をかけると、3人は聞いているのかいないのか、そのままキャッキャしながら、靴箱の方へと消えていった。

 揺莉は微笑みながら溜め息をつくと、教室の全体をぐるりと見渡す。

 教室には、アノーリオン、クルゴン、ララノアの3人の机と椅子。
 そしてその後ろには、ジョイントマットが一部に敷かれており、その上ではよく3人が絵本を読んだり、遊んだりしていたのが思い出される。

「…思ってたより、思い出がいっぱい…」

 揺莉は、胸に手を当て思い出に浸る。
 すると、靴箱の方から声が聞こえてくる。

「それ、反対じゃないの~?こっちが右だよ~」

「いや、こっちでしょ!」

「…靴底に右左がかいてあるよ…」

「えーっ、あー、ほんとだー!」

 キャハハハッ、と楽しい笑い声が聞こえてくる。

 揺莉は教室に一礼をすると、口に笑みを浮かべ、髪をなびかせ靴箱の方へと歩いていく。

 ◇◇

「はい!では、これから~お芋掘りをします!1人ずつ掘る担当場所を白いラインで区切っているので、自分の担当場所を思いっきり掘ってくださ~い!」

「ゆりさん、ほんとうにこの土の下にオイモっていうのが、はいってるの~?」

 しゃがんでいるララノアが、不思議そうに畑の土をツンツンする。

「うん、入ってますよ~!今回は、エルサリオンさんとルーミルさんの魔法で、私の元いた世界の食べ物、お芋をそっくり再現してもらいました!たぶん、皆んなも気に入ってくれる味だと~…いいな」

「たのしみー!」

 アノーリオンがしゃがんだまま、ニカッと笑う。

「…ゆりさん…この手のまま掘るの…?」

 クルゴンが自分の両手をマジマジと見た後、揺莉を見上げる。

「はい、素手のまま掘ってもらいます!いつもは魔法とか使ってね、そんな手を汚すことはないと思うのですが、今日は頑張って手で土を触って、お芋を掘り出して欲しいです。じゃあ、そろそろ始めましょうか。掘り出してくださーい!」

 最初こそ、3人は戸惑って土を摘むような仕草を見せたり、素手で土を掘るのに抵抗があったようだったが、少しずつ掘っていくと大きなお芋が出てきて楽しくなってきたのか、次第に両手で大きく掘り出し、夢中になって収穫を楽しみだした。

「…すごい…大きなお芋だ…」

「ほらほらー!ゆりー!見てー!こんなに大きいのー!」

「うわぁ~このお芋、きれいな色~」

 3人のはしゃぐ様子に、見ている揺莉も楽しくなってくる。

(やって良かったな…きっと、いい思い出になる)

 揺莉は微笑むと、ララノアが苦しそうな唸り声を上げる。

「どうしたのー?」

 アノーリオンとクルゴンが心配そうに側によると、ララノアが力一杯ツルを引っ張っていた。

「これ、すっごいかたくて、さっきから引っ張ってるんだけど、ぜんぜん抜けないの~」

 そう言うと、ララノアは泥だらけの手で額に滲む汗を拭う。

「それなら、俺も手伝うよ!一緒にひっぱろー!」

「…ララノア…そのツルは僕が持つから…」

 クルゴンがツルを引っ張り、アノーリオンがクルゴンのお腹に手を回し一緒に引っ張り、ララノアはツルの周りの土を掘り出し、3人が一丸となって目標の芋を目指す。

 クルゴンとアノーリオンは歯を食いしばってツルを引っ張り、ララノアは爪の中まで土で茶色くなり、3人の必死な様子に揺莉は思い切り声をかける。

「3人ともがんばれー!」

「うぅぅーーーええーーい!」

 思い切り引っ張った後、お芋が土から勢いよく飛び出し宙を舞う。

「うわぁー!抜けた~!」

 3人が手を取り合い喜ぶ笑顔は、晴れ晴れとした空にも負けないくらいに輝いていた。
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