94 / 143
6緩甘ネジ
長い時間の真相 side桜田⑤
しおりを挟むそして、知っての通り大学に『geze』の求人を出したら、小野寺の運が強かったのか藤宮千幸は無事(?)入社を果たした。
翔の執念とも言えるかもしれない。
彼女にとって幸運か不運かはわからないが、その職種を希望しているのだから他に付随するものは受け入れてもらうしかないだろう。
さあ、これから何かが変わるのかと桜田だけでなく轟も思ったのだが、まだまだ長~い時間が待っているなんて想像できるわけがない。
本当に勘弁してほしい。
翔は藤宮千幸に関してはネジがどこか変についているのか緩いのか、そして突き抜けていて、予想ができない反応と行動をする。
最初はすっごく初々しい(?)行動に、今までの翔の女性遍歴を知っているだけにびっくりしていた。
すっかり身辺は身綺麗なままみたいで、悟りを開いたのかと男として心配するくらいだ。
恋だと自覚もないのにそれってすごくない? そこそこ経験して飢えるほどではなくても、まだ二十代なかばだ。枯れてない。
しかも、翔は社会に出てから上等な女性ばかりに言い寄られているようで、よくも思考や理性がぐらつかないものだと感心さえする。学生の時とは真逆な感心だ。
その分、仕事に精をだしバランスを取っているようだが、聞けばお相手の女性にはその間に彼氏がいたりいなかったり。
それを聞いても動かないって、仏か何かかって思った。
──マジ、大丈夫?
桜田はそれが恋だと思っているからか、翔の精神状態が心配であった。
心配だがどうするかは本人が決めることで、彼女が入社したらそれなりに動くだろうと思っていたから傍観していた。
だって、もう成人してるし。人の恋路なんて、そんな感じで見守るもんだろ? 間違っていないはずだ。
うまくいってほしいとは思っているけど、お相手の気持ちはわからない。
余計な者がしゃしゃり出るものではない。遠くからエールを送っておくくらいが丁度いい。
だが、そう判断したことを後々後悔することとなった。
正直、小野寺翔という異次元人をなめていた。ここまでとは思っていなかった。
まず、藤宮千幸が無事入社した話を聞いた翔は一言、「そうか」と口端に笑みを乗せただけだったそうだ。
だが、たったそれだけの反応であるが、翔が喜んでいることは付き合いの長い者ならわかる。
本当に関与もしなかったみたいで、その時の安心の笑みに轟も観念したと言っていた。つまりは、社内恋愛になったとしてもということだ。
それだけ本気なんだと、自分たちは考えていた。
「俺はあいつが何を考えているのかわからない」
そう、轟が自分に愚痴るほど小野寺は全く動かなかった。
珍しく轟から酒の席に呼び出され聞かされ、桜田は目が泳ぐ。かける言葉が見つからない。励みはどこ?
「ああ~~。同じ生物ではないのかな?」
「さあな。勝手にすればと思う反面、なんでこっちが気にしなければならないんだっ!」
「まあまあ。以前と同じく情報は入手しているんだよね? 結局、何も動かないと言うこと気になるというのもそれくらいで収まる程度のものということなのかな?」
よくわからないけど、と付け足すとじろりと睨まれる。轟さん、少しお疲れ気味のようだ。
それだけ冷静沈着な轟でさえももやもやさせる行動を翔はしているらしい。
「だがな、しっかり情報は掴んでるんだ。一体、どこの誰を使ってるのか。それをどう思ったらいい? ただ、すぐ知り得る範囲の情報だと言っても、会社の者を巻き込んでいるのは事実。下手をしたら犯罪だ」
「その辺、上手くやってそうだな」
ちなみに今日は轟とだけなので、男バージョン。ややこしくてすみませんねー。
「わかってる。絶対、その辺に抜かりはないだろうな。だが、その能力をそこで発揮するか? もっと使うところあるだろう?」
「前に邦彦くんが気になるからだろって言ってただろ? だから、そういうことじゃない? 気になるからまだ情報収集してるだけで、それで落ち着けてるってこと、だろ?」
いや~、自分で言っておいて全部疑問符つくわっ!
一応、今回は相談される側であるから冷静ぶってるけれど、桜田だって疑問ともやもやだらけだ。
「あの時はそう言ったが、さすがに期間が長すぎる。ここまでお膳立てしたのなら普通何かしらの変化はあるもんじゃないか?」
「俺もそう思ったけど、実際動いてないんだからどうしようもないというか」
「ああ。もう、俺としてはくっつくか、さっぱりするかどっちかにしてほしい」
翔の仕事のサポートをする轟としては、いろいろ思うこともあるのだろう。
だってさ、まさか望むとおり彼女が入社しても動かないとは思わない。
そこまではじっと待ったのだから、これ幸いと何かしらのモーションかけてもいいと思うわけだ。
不正はしていないし。せっかくの立場と機会を利用してもいいはずだ。
だから当然のごとく、桜田と轟は彼女が入社したなら時期を見て落としにかかるかと思っていた。
だが、いつまで経っても何も動かない。
せっかく藤宮千幸が入社したのに、入社してもビルも違うので会えないのに何も動かないのを不思議を通り越して、もやもやとフラストレーションが溜まる。
このまま続けばそれが爆発するのも時間の問題かもなとどこか他人事のように考えていたら、やはり事件が起こった。
まさに事件だ。顎が外れるかと思うほど、目が飛び出るかと思うほどの出来事だった。
今までも十分に翔のそれについて気を揉んでいたと思ったのに、自分たちの奮闘記はどうやらそこからだったようだ。
15
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる