ただ、隣にいたいだけ~隣人はどうやら微妙にネジが外れているようです~

Ayari(橋本彩里)

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6緩甘ネジ

長い時間の真相 side桜田⑤

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 そして、知っての通り大学に『geze』の求人を出したら、小野寺の運が強かったのか藤宮千幸は無事(?)入社を果たした。
 翔の執念とも言えるかもしれない。

 彼女にとって幸運か不運かはわからないが、その職種を希望しているのだから他に付随するものは受け入れてもらうしかないだろう。
 さあ、これから何かが変わるのかと桜田だけでなく轟も思ったのだが、まだまだ長~い時間が待っているなんて想像できるわけがない。

 本当に勘弁してほしい。
 翔は藤宮千幸に関してはネジがどこか変についているのか緩いのか、そして突き抜けていて、予想ができない反応と行動をする。

 最初はすっごく初々しい(?)行動に、今までの翔の女性遍歴を知っているだけにびっくりしていた。
 すっかり身辺は身綺麗なままみたいで、悟りを開いたのかと男として心配するくらいだ。

 恋だと自覚もないのにそれってすごくない? そこそこ経験して飢えるほどではなくても、まだ二十代なかばだ。枯れてない。
 しかも、翔は社会に出てから上等な女性ばかりに言い寄られているようで、よくも思考や理性がぐらつかないものだと感心さえする。学生の時とは真逆な感心だ。

 その分、仕事に精をだしバランスを取っているようだが、聞けばお相手の女性にはその間に彼氏がいたりいなかったり。
 それを聞いても動かないって、仏か何かかって思った。

 ──マジ、大丈夫?

 桜田はそれが恋だと思っているからか、翔の精神状態が心配であった。
 心配だがどうするかは本人が決めることで、彼女が入社したらそれなりに動くだろうと思っていたから傍観していた。

 だって、もう成人してるし。人の恋路なんて、そんな感じで見守るもんだろ? 間違っていないはずだ。
 うまくいってほしいとは思っているけど、お相手の気持ちはわからない。
 余計な者がしゃしゃり出るものではない。遠くからエールを送っておくくらいが丁度いい。

 だが、そう判断したことを後々後悔することとなった。
 正直、小野寺翔という異次元人をなめていた。ここまでとは思っていなかった。

 まず、藤宮千幸が無事入社した話を聞いた翔は一言、「そうか」と口端に笑みを乗せただけだったそうだ。
 だが、たったそれだけの反応であるが、翔が喜んでいることは付き合いの長い者ならわかる。

 本当に関与もしなかったみたいで、その時の安心の笑みに轟も観念したと言っていた。つまりは、社内恋愛になったとしてもということだ。
 それだけ本気なんだと、自分たちは考えていた。

「俺はあいつが何を考えているのかわからない」

 そう、轟が自分に愚痴るほど小野寺は全く動かなかった。
 珍しく轟から酒の席に呼び出され聞かされ、桜田は目が泳ぐ。かける言葉が見つからない。励みはどこ?

「ああ~~。同じ生物ではないのかな?」
「さあな。勝手にすればと思う反面、なんでこっちが気にしなければならないんだっ!」
「まあまあ。以前と同じく情報は入手しているんだよね? 結局、何も動かないと言うこと気になるというのもそれくらいで収まる程度のものということなのかな?」

 よくわからないけど、と付け足すとじろりと睨まれる。轟さん、少しお疲れ気味のようだ。
 それだけ冷静沈着な轟でさえももやもやさせる行動を翔はしているらしい。

「だがな、しっかり情報は掴んでるんだ。一体、どこの誰を使ってるのか。それをどう思ったらいい? ただ、すぐ知り得る範囲の情報だと言っても、会社の者を巻き込んでいるのは事実。下手をしたら犯罪だ」
「その辺、上手くやってそうだな」

 ちなみに今日は轟とだけなので、男バージョン。ややこしくてすみませんねー。

「わかってる。絶対、その辺に抜かりはないだろうな。だが、その能力をそこで発揮するか? もっと使うところあるだろう?」
「前に邦彦くんが気になるからだろって言ってただろ? だから、そういうことじゃない? 気になるからまだ情報収集してるだけで、それで落ち着けてるってこと、だろ?」

 いや~、自分で言っておいて全部疑問符つくわっ!
 一応、今回は相談される側であるから冷静ぶってるけれど、桜田だって疑問ともやもやだらけだ。

「あの時はそう言ったが、さすがに期間が長すぎる。ここまでお膳立てしたのなら普通何かしらの変化はあるもんじゃないか?」
「俺もそう思ったけど、実際動いてないんだからどうしようもないというか」
「ああ。もう、俺としてはくっつくか、さっぱりするかどっちかにしてほしい」

 翔の仕事のサポートをする轟としては、いろいろ思うこともあるのだろう。
 だってさ、まさか望むとおり彼女が入社しても動かないとは思わない。

 そこまではじっと待ったのだから、これ幸いと何かしらのモーションかけてもいいと思うわけだ。
 不正はしていないし。せっかくの立場と機会を利用してもいいはずだ。
 だから当然のごとく、桜田と轟は彼女が入社したなら時期を見て落としにかかるかと思っていた。

 だが、いつまで経っても何も動かない。
 せっかく藤宮千幸が入社したのに、入社してもビルも違うので会えないのに何も動かないのを不思議を通り越して、もやもやとフラストレーションが溜まる。
 このまま続けばそれが爆発するのも時間の問題かもなとどこか他人事のように考えていたら、やはり事件が起こった。

 まさに事件だ。顎が外れるかと思うほど、目が飛び出るかと思うほどの出来事だった。
 今までも十分に翔のそれについて気を揉んでいたと思ったのに、自分たちの奮闘記はどうやらそこからだったようだ。

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