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コイカケその24
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「へ? ど、どうも」
またも敗者からの接触に、どぎまぎしてしまった。送受器を右手から左手に持ち替えて、「何の用です?」と尋ねた。
「俺は何もないんだが、部屋に帰ったら、電話がもう一台用意されていて、こうやって受話器をテレコにしてつなげろって言うものだからな。じゃあ、代わるぞ」
話がさっぱり見えてこない。
と、突然電話相手の声が変化した。
「見ていたわよ」
女性の声が挨拶も何もなしに、単刀直入に言ってきた。
「はい?」
「とぼけた返事ね。なぁに、私の声が分からないとでも言うのかしら」
「……静流さんですね、分かります」
落ち着いたら分かった。神田部家のお嬢様であり、大学での僕の同級生であり、今回のトーナメントのラスボスでもある。
「どうして電話なんか」
「いけない? 少なくとも自由に電話を掛け合う程度には仲のいい知り合いのつもりでいるのだけれども」
「そういう観点で理由を聞いたんじゃないことぐらい、分かっているでしょう?」
「……」
無言になった。機嫌を損ねられても困る。
「まあ、仲のいい知り合いと言ってもらえたのは、嬉しいですけど」
「でしょ」
機嫌が直ったようだ。声が弾む。
「通話できるの、あと三分しかないんだったわ」
「え?」
だったら、余計な前置きなしに、用件に入ればいいのに。
「電話したのは、面白い物を見せてもらったから、お礼を言おうと思って」
「勝ち方ですか? あれは羽柴の発案ですから、お礼と言われてもあんまり嬉しくないですね」
「でしょうね。私は不利な方を応援するのが好きだから、あなたに電話したの」
「僕が不利?」
「だってその無線機、羽柴君から付けるように言われたんでしょ? 他にどんな仕掛けがあるのか分からないじゃない。それこそ、あなたの手の内が丸見えになるカメラとか」
「それはないと思うんだけど。二台ある内の好きな方を選んだから」
そう答えたあと、反応がない。おかしいな。
「もしもし?」
「――時間切れだそうだ。電話は終わり」
味澤の声に戻った。一体全体何がどうなっている?
「味澤さん、そこに静流さんがいるんですか?」
「いや。最初の説明じゃ、やっぱ伝わらなかったか。俺の部屋には電話機が二台用意されていてだな。その内の一台に、静流さんから掛かってきた。そしてもう一つの電話を使って今から言う部屋番号につなぎなさいと言われた。つないだ後は、受話器を互い違いにくっつけて、ガムテープで固定しろだとさ」
「……状況は思い描けましたけど、何のためにそんなややこしいことを。静流さんが直に僕の部屋に電話をしてくれればいいのに」
「静流さんはトーナメント出場者との接触が原則禁じられていて、電話を掛けていい相手は、敗退が決まった者に限るという条件があるらしい。それで俺に掛けてきた」
「ははあ、なるほど」
僕のおかしな勝ち方を見て、どうしても話したくなった彼女は、掟破りすれすれの手段に出た訳だ。
味澤に礼を述べて、電話を切った。
送受器をフックに戻したのとほぼ同時に、部屋のドアがノックされた。急いで駆け寄り、「何でしょう?」と応対する。覗き窓に片目を当てると、馬込ディーラーがそこにいると知れた。
「決定が出ました。お伝えしたいので、よい頃合いにドアをお開けください」
「はい、よい頃合いだなんて。只今」
すぐに開けた。
馬込ディーラーは深々とお辞儀をしたあと、部屋に入ってきて、ドアをぴたりと閉めた。
それからおもむろに僕に告げた。
「協議では、一部から実力を疑問視する声が上がりました。そこで、査定試合を一つ、挟ませていただきます」
「査定……しょうがないか。誰とどんなゲームをやればいいんでしょう?」
「相手はこちらです」
閉めたがばかりのドアを開ける馬込。そこには、水着(だろう、多分)姿の女性が立っていた。
またも敗者からの接触に、どぎまぎしてしまった。送受器を右手から左手に持ち替えて、「何の用です?」と尋ねた。
「俺は何もないんだが、部屋に帰ったら、電話がもう一台用意されていて、こうやって受話器をテレコにしてつなげろって言うものだからな。じゃあ、代わるぞ」
話がさっぱり見えてこない。
と、突然電話相手の声が変化した。
「見ていたわよ」
女性の声が挨拶も何もなしに、単刀直入に言ってきた。
「はい?」
「とぼけた返事ね。なぁに、私の声が分からないとでも言うのかしら」
「……静流さんですね、分かります」
落ち着いたら分かった。神田部家のお嬢様であり、大学での僕の同級生であり、今回のトーナメントのラスボスでもある。
「どうして電話なんか」
「いけない? 少なくとも自由に電話を掛け合う程度には仲のいい知り合いのつもりでいるのだけれども」
「そういう観点で理由を聞いたんじゃないことぐらい、分かっているでしょう?」
「……」
無言になった。機嫌を損ねられても困る。
「まあ、仲のいい知り合いと言ってもらえたのは、嬉しいですけど」
「でしょ」
機嫌が直ったようだ。声が弾む。
「通話できるの、あと三分しかないんだったわ」
「え?」
だったら、余計な前置きなしに、用件に入ればいいのに。
「電話したのは、面白い物を見せてもらったから、お礼を言おうと思って」
「勝ち方ですか? あれは羽柴の発案ですから、お礼と言われてもあんまり嬉しくないですね」
「でしょうね。私は不利な方を応援するのが好きだから、あなたに電話したの」
「僕が不利?」
「だってその無線機、羽柴君から付けるように言われたんでしょ? 他にどんな仕掛けがあるのか分からないじゃない。それこそ、あなたの手の内が丸見えになるカメラとか」
「それはないと思うんだけど。二台ある内の好きな方を選んだから」
そう答えたあと、反応がない。おかしいな。
「もしもし?」
「――時間切れだそうだ。電話は終わり」
味澤の声に戻った。一体全体何がどうなっている?
「味澤さん、そこに静流さんがいるんですか?」
「いや。最初の説明じゃ、やっぱ伝わらなかったか。俺の部屋には電話機が二台用意されていてだな。その内の一台に、静流さんから掛かってきた。そしてもう一つの電話を使って今から言う部屋番号につなぎなさいと言われた。つないだ後は、受話器を互い違いにくっつけて、ガムテープで固定しろだとさ」
「……状況は思い描けましたけど、何のためにそんなややこしいことを。静流さんが直に僕の部屋に電話をしてくれればいいのに」
「静流さんはトーナメント出場者との接触が原則禁じられていて、電話を掛けていい相手は、敗退が決まった者に限るという条件があるらしい。それで俺に掛けてきた」
「ははあ、なるほど」
僕のおかしな勝ち方を見て、どうしても話したくなった彼女は、掟破りすれすれの手段に出た訳だ。
味澤に礼を述べて、電話を切った。
送受器をフックに戻したのとほぼ同時に、部屋のドアがノックされた。急いで駆け寄り、「何でしょう?」と応対する。覗き窓に片目を当てると、馬込ディーラーがそこにいると知れた。
「決定が出ました。お伝えしたいので、よい頃合いにドアをお開けください」
「はい、よい頃合いだなんて。只今」
すぐに開けた。
馬込ディーラーは深々とお辞儀をしたあと、部屋に入ってきて、ドアをぴたりと閉めた。
それからおもむろに僕に告げた。
「協議では、一部から実力を疑問視する声が上がりました。そこで、査定試合を一つ、挟ませていただきます」
「査定……しょうがないか。誰とどんなゲームをやればいいんでしょう?」
「相手はこちらです」
閉めたがばかりのドアを開ける馬込。そこには、水着(だろう、多分)姿の女性が立っていた。
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