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コイカケ2の22
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「結果発表、今回も下位からになります」
三ツ矢さんは毎回、なるべく劇的な流れになるよう、発表の順番をいじってくるようだ。エンターテインメント色を打ち出すからには、このギャンブルの様子も当然、どこか他の場所で観戦することができるんだろうな。
「四番手になったのは、3番で前回同様、一円でした」
コストナー氏は納得して入札しているようだが、いつかは勝負に出なければならない。そのことを理解していないはずはないので、恐らくは他の三人がやり合って疲弊した、つまりは所持金を減らした頃合いを見計らって打って出るつもりなのだろう。
「続いて三番手の発表……入札額は十三円で、1番の方が付けました」
「何? ま――」
羽柴は間違いじゃないのかと言い掛けたようだが、言葉を途切れさせた。僕の方を見て、何かやったな?と目で問うてくる。僕はもちろんアイコンタクトに気付いてはいたが、目と身振りだけでは説明のしようがない。
「では、惜しくも、いえ狙い通りか? 次点となった額を付けたのは4番で、二百万」
「何だって? 馬鹿な」
当然のように板文が声を荒げ、席から立ち上がった。
「ちゃんとレフェリーの務めを果たしてもらわないと困るな。二百万は入札できる最高額だろう? 一回戦で得たチップを元に算出されるのだから、二百万円を超えようがない」
「まあまあ、いきり立たないでくださいまし、4番の板文さん。異論反論は最後まで結果発表を聞いてからに願いましょう」
「しかし、今言わないと」
「いいから。あとに」
三ツ矢さんは音量を低くし、大地から鳴り響くような声で告げた。
「従っていただけないようでしたら、勝負の結果の如何に関係なく、あなたは資格を失います。永久に」
三ツ矢さんが冷たく言い放つと、板文も黙り込み、椅子に深く身を沈めた。
「さて、今回の最高値を付けたのは残る2番で、入札額は二百万一円」
「ちょっと待て、やはりおかしいではないか」
再度異を唱える板文。今度は椅子に座ったまま足を組み、大げさに肩をすくめる。
「2番の彼がいくら軍資金を持っていたのか、正確なところは知らない。だが、最も多い場合を考えても、二百万円でスタートし、先程の落札で二万一円を使った。百九十七万九千九百九十九円があり得る最大の値。二百万一円などという、所持金を上回る額を入札してよかろうはずがない」
「なるほど、お説ご尤もです。通常の競りならば、手持ちのチップ以上に賭けるのはルール違反と言えましょう。だが、思い出してみてください。今、皆さん方にやってもらっているのは、変則的なオークション。最高値を付けた者ではなく、その次点の者が競り落とす決まりになっている。最高値を付けた者は、その半分の額を胴元に支払わねばいけません。最高値の半額の支払い能力がある場合、所持金以上のベットを認めることに障害はないと見なすのが妥当かと」
「しかし」
「ボードに記したルールにも抵触はしておりません。さらに申し上げるならば、今抗議の声を上げておられるご自身も、出品物を落札するのに、全所持金二百万円を払うおつもりはなかったように推察いたします。二番手の落札者を脱落させるのが目的だったのでは」
「うぬぬ」
板文が奥歯を噛みしめるのが、傍目からでも分かる。歯軋りが聞こえて来そうに思えたほどだ。
「ご納得いただけましたか。納得されていなくても、当方に過誤・瑕疵がない限り、我々は粛々とゲームを進行するのみですが」
三ツ矢さんは毎回、なるべく劇的な流れになるよう、発表の順番をいじってくるようだ。エンターテインメント色を打ち出すからには、このギャンブルの様子も当然、どこか他の場所で観戦することができるんだろうな。
「四番手になったのは、3番で前回同様、一円でした」
コストナー氏は納得して入札しているようだが、いつかは勝負に出なければならない。そのことを理解していないはずはないので、恐らくは他の三人がやり合って疲弊した、つまりは所持金を減らした頃合いを見計らって打って出るつもりなのだろう。
「続いて三番手の発表……入札額は十三円で、1番の方が付けました」
「何? ま――」
羽柴は間違いじゃないのかと言い掛けたようだが、言葉を途切れさせた。僕の方を見て、何かやったな?と目で問うてくる。僕はもちろんアイコンタクトに気付いてはいたが、目と身振りだけでは説明のしようがない。
「では、惜しくも、いえ狙い通りか? 次点となった額を付けたのは4番で、二百万」
「何だって? 馬鹿な」
当然のように板文が声を荒げ、席から立ち上がった。
「ちゃんとレフェリーの務めを果たしてもらわないと困るな。二百万は入札できる最高額だろう? 一回戦で得たチップを元に算出されるのだから、二百万円を超えようがない」
「まあまあ、いきり立たないでくださいまし、4番の板文さん。異論反論は最後まで結果発表を聞いてからに願いましょう」
「しかし、今言わないと」
「いいから。あとに」
三ツ矢さんは音量を低くし、大地から鳴り響くような声で告げた。
「従っていただけないようでしたら、勝負の結果の如何に関係なく、あなたは資格を失います。永久に」
三ツ矢さんが冷たく言い放つと、板文も黙り込み、椅子に深く身を沈めた。
「さて、今回の最高値を付けたのは残る2番で、入札額は二百万一円」
「ちょっと待て、やはりおかしいではないか」
再度異を唱える板文。今度は椅子に座ったまま足を組み、大げさに肩をすくめる。
「2番の彼がいくら軍資金を持っていたのか、正確なところは知らない。だが、最も多い場合を考えても、二百万円でスタートし、先程の落札で二万一円を使った。百九十七万九千九百九十九円があり得る最大の値。二百万一円などという、所持金を上回る額を入札してよかろうはずがない」
「なるほど、お説ご尤もです。通常の競りならば、手持ちのチップ以上に賭けるのはルール違反と言えましょう。だが、思い出してみてください。今、皆さん方にやってもらっているのは、変則的なオークション。最高値を付けた者ではなく、その次点の者が競り落とす決まりになっている。最高値を付けた者は、その半分の額を胴元に支払わねばいけません。最高値の半額の支払い能力がある場合、所持金以上のベットを認めることに障害はないと見なすのが妥当かと」
「しかし」
「ボードに記したルールにも抵触はしておりません。さらに申し上げるならば、今抗議の声を上げておられるご自身も、出品物を落札するのに、全所持金二百万円を払うおつもりはなかったように推察いたします。二番手の落札者を脱落させるのが目的だったのでは」
「うぬぬ」
板文が奥歯を噛みしめるのが、傍目からでも分かる。歯軋りが聞こえて来そうに思えたほどだ。
「ご納得いただけましたか。納得されていなくても、当方に過誤・瑕疵がない限り、我々は粛々とゲームを進行するのみですが」
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