魔王様は切実に隠居したい

塩おむすび

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第2章 隠居に成功(?)した魔王様

元勇者の気分が落ち着く方法

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「改めまして、おかえりなさいませ!魔王様!」

「マオ様マオ様!お洋服!」

「はいはいわかったわかった、お土産は順番に、だぞ。ここにはいない者にも渡しておいてもらいたい。頼めるか?ドロシー」

「はーい!任されました!」


 金髪の少女がビシッと敬礼する姿を見て、微笑ましくなったノアはその頭を撫でてやった。


「そういえば、ルークがどこに行ったかわかる者はいるか?昨日帰って来てから姿が見当たらないんだが…」

「俺ちゃん昨日の夜、番犬クンがお城を出てどっかに行くの見たヨー?」


 どこから出てきたのか、メルトがノアの懐からぬるりと顔を出す。そのままドロシーが嬉々として渡すお土産を受け取り、中に入った薬品をちゃぷちゃぷと楽しそうに鳴らしている。


「夜…?転移してきてから我が部屋に戻った後か…。どこに行くかは言っていなかったか?」

「魔王サマにも言ってないんじゃあ俺ちゃんわかんなーい。てか魔王サマ、その毛玉ナニ?」


 メルトはノアの足元を指差すと、足元の黒いもこもこは、メルトの指をガブリと噛んだ。


「イッたぁ!何こいツ!」

「こいつはポチ、今回の我の旅の仲間だった子犬だ。狼の魔獣の一種らしい。身体が小さくて群れの仲間から捨てられたところをルークが見つけて拾ったそうだ。旅の間だけルークが転移するための中継点になってもらってたのだが…可愛いし、このまま城で飼おうかと思ってな」

「あぁ…番犬クンの…どおりで性格が飼い主ニ似てるとオモッタ。俺ちゃん仲良くはなれなさソウ」

「それがルークにもあまり懐いていないみたいでな。我はまだ調べることがあるから、また連れて行くわけにもいかないし…」

「ン?今度は連れて行かなイの?」

「次は領土内を調べようと思っているからな。わざわざ連れて行く必要がない。それに…」

(『次お出かけになる際は僕がお供いたしますので。あの子犬よりも何万倍とお役にたつ自信がありますから、絶・対・に、連れて行ってくださいね』ってルークから念押されてるから…連れて行かないわけにもいかないんだよなぁ…。そうなったらそれこそ何されるか…)


 ふと襲った寒気にノアは無意識のうちにぶるっと体を震わせた。


「…とにかく、子犬の世話を頼める者を探しているのだが…」

「ワンちゃんここで飼うの?はいはーい!ドロシーがお世話やりたーい!」


 ノアの足元で子犬を撫でていたドロシーが元気よく手を上げる。


「あ、でもドロシーお日様の下普通に歩けない…お昼にお散歩できないから…ワンちゃん可哀想かなぁ…」

「そのフードを被っていれば心配ないだろう?それに、散歩なら夜でも問題はないだろう。大事にしてくれるか?」

「うん…!ドロシー頑張る!」


 こうして子犬が新しくこの城の仲間になった。





 ・・・・・・・・・・





 その夜、ノアが1人で魔術書を読んでいると、不意にカーテンがふわりと不自然に揺れた。


「遅刻だぞ、ルーク」


 ページを捲りながら、ノアは傍らの人影に声をかけた。


「まったく…主人に目的地の場所も告げず、声もかけずどこかへ出かけるなんて…。メルトに聞いたぞ、昨日の夜から出かけてたって。せめてどこに行くかくらい教えてくれても……ルーク?」


 いくら待っても何の返答もないルークを不思議に思ってノアが声をかける。それでも返答がないため振り返ろうとしたが、その前に背後からルークがノアを抱きしめた。


「…どうしたんだ?何か…辛いことでもあったのか…?」

「いえ…少し、自分の決断が間違っていなかったのか、確認したかったのです」

「ルークがそんなことを言うのは珍しいな。けれど生きてれば何かと不安になるのは当たり前だ、おかしいことじゃない。そういう時は、何か自分の気分が落ち着くようなことをするといいぞ。俺は別分野の研究をすることだな!」

「それはいつものことでしょう」


 ふふっとルークは笑うと、ノアを抱きしめて持ち上げ、まるでぬいぐるみのように自分の膝へと座らせた。


「…それで、なんだこの格好」

「何か自分の気分が落ち着くようなことをするとよいのでしょう?僕の気分が落ち着くのはこれですね」

「…まぁ、お前がいいならいいけど…」


 ノアはルークの気が済むまで離してもらえない気配を悟ると、その膝の上で大人しく魔術書の続きを読み始める。
 ルークはその横顔をいつまでも飽きずに見つめていた。
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