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第3章 魔王様と元勇者は諸悪の根源に喧嘩を売る
魔王様たちは最後の戦いに臨む
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それから1ヶ月、平和に時は流れていた。魔族が人間の領土への侵攻を止めていることから戦線は依然膠着状態となっていた。
これ以上の侵攻を防ぐために魔族を下手に刺激しないほうがいいという派閥、これを好機だと見て戦線を押し上げて領土を取り返そうとする派閥、人々の意見は二つに分かれていたが共通していたことは魔王を倒す勇者を求めている点だった。
その日、ルークとノアはいつかのように玉座の間で2人きりで話をしていた。ふと同時に2人はある方向に顔を向ける、そしてルークは前へと進み出て、その方向に剣を向けた。
その時だった。
「どうもー!再び勇者様のご登場でーす!」
そこに現れたのは、数年前にノアの命を奪った勇者張本人だった。
「お、マジで魔王ご本人復活してんじゃん!女神ちゃんから言われてオレも半信半疑だったんだけどさー。なんかマジックでも使ったん?」
「さぁな、お前にわざわざ説明する義理はない」
「やーん塩対応悲しっ!オレ泣いちゃうよ!」
「そういう貴様は1人か?いつもの役に立たぬお仲間はどうした」
「あーそりゃオレ1人で余裕だからっしょ!オレ女神ちゃんに愛され過ぎてて、ちょっと強くなり過ぎちゃったって感じなんで!」
そう宣う勇者の身体は見たことのない黄金に輝く鎧に包まれており、ネーブルの力を持つノアには、女神ルミエラの力が大いに使われていることがわかった。
ただその見た目は想像以上に…。
(何あの金ピカ鎧…死ぬほどダセェ…俺だったら死んでも無理…)
(あれはちょっと…僕が着せられる羽目にならなくてよかったですね…)
ドン引きしている2人だった。
「なにせ全属性に耐性があって、毒や麻痺も聞かないし、魔術も全属性使えておまけに剣だって勝手に身体が動いてプロ並みになってるんだぜ!負けるわけなくねー?」
「そう考えているなら…お前は一つ勘違いをしているな」
「はぁ?」
「あまり我らを舐めないほうがいい」
ノアの足元に大きな魔術の印が描かれ、それは勇者が召喚される際に描かれていたものと同じものだった。
「ルーク、足止めを頼む」
「承知いたしました」
大きな魔術を使う際は、それ相応に時間がかかる。その間、魔術師は無防備になるため、他に補助をする者が必要になるのだ。
元々のノアの魔力の大きさに加えてネーブルの魔力が合わさってはいるものの、下手に試して魔力が足りなくなってはと思ったノアは一発勝負で本番に臨むことになった。
「…はっ!そんな剣一本で何ができんの?オレにはこんな力だってあるんだぜ?」
勇者を中心に魔力の流れが荒れ狂い、嵐のように吹き荒れる。勇者を中心に生み出された竜巻は次第に大きくなり、天災ともいえる姿にまでなる。
しかし、まともな人間であれば立ち上がることさえ困難な風圧にさえ、ノアもルークも揺らぐことはなかった。
その微塵も恐れる様子のない姿に、勇者は苛立ちを隠せない表情を浮かべる。
「これでもくらえ!」
振り下ろされる勇者の腕、大きな竜巻は着実に2人へと近づいていく。そしてぶつかる寸前、竜巻は幾千もののコウモリへと姿を変えて霧散した。
「は…?はぁ…?コウモリ…?オレの超絶魔術は?くそ…っじゃあこれで!」
勇者の元から何十何百という燃え盛る炎の剣が、そして同じ数の氷の剣が現れ、ルークとその背後にいるノア目がけて飛んでいく。
しかし炎の剣は途中で全て叩き落とされ、氷の剣は全て霧散して消えた。
「な、なんで…なんでだよ!全属性の魔術だぞ!しかも最高峰の!お前、イカサマでもしてんのかよ!」
「だから言っただろう…?あまり我らを舐めるなと」
誰もいなかったはずのノアの周りの風景が揺らぎ、中から数人の魔族の姿が出てくる。
「男同士の戦いに魔術やら飛び道具なんざ女々しいな!男なら黙って拳で勝負しやがれ!」
「私の魔術で上書きできるなんて…魔王様の一割以下ですわぁん。しかも昨晩は娼館でお遊びだなんて…いけない子ですわねぇん?」
「マオ様とルーくんいじめるなんていけないんだ!ドロシー怒っちゃうんだからね!」
「ふぉっふぉっふぉ、こんな爺の剣ですら叩き落とせるほどの魔術でその自信とは…。貴様にやる魔王様の首はない、出直してこい若造が」
「毒は効かないなんて自信満々に言ってたケド…。人体実験すらできないやつとかもイロイロあるんだヨ?それと…あんた自身は痛みに耐えられるタイプぅ?身体中切り刻まれる感覚、覚えて帰ロっカ」
あの日、ノアを守れなかったことを後悔したのはルークだけではなかったのだ。そして全員がこの日を心待ちにしていた。
今度こそ、ノアを守りきると心に決めて。
今ここに、魔王と勇者による最後の戦いの火蓋が切って落とされた。
これ以上の侵攻を防ぐために魔族を下手に刺激しないほうがいいという派閥、これを好機だと見て戦線を押し上げて領土を取り返そうとする派閥、人々の意見は二つに分かれていたが共通していたことは魔王を倒す勇者を求めている点だった。
その日、ルークとノアはいつかのように玉座の間で2人きりで話をしていた。ふと同時に2人はある方向に顔を向ける、そしてルークは前へと進み出て、その方向に剣を向けた。
その時だった。
「どうもー!再び勇者様のご登場でーす!」
そこに現れたのは、数年前にノアの命を奪った勇者張本人だった。
「お、マジで魔王ご本人復活してんじゃん!女神ちゃんから言われてオレも半信半疑だったんだけどさー。なんかマジックでも使ったん?」
「さぁな、お前にわざわざ説明する義理はない」
「やーん塩対応悲しっ!オレ泣いちゃうよ!」
「そういう貴様は1人か?いつもの役に立たぬお仲間はどうした」
「あーそりゃオレ1人で余裕だからっしょ!オレ女神ちゃんに愛され過ぎてて、ちょっと強くなり過ぎちゃったって感じなんで!」
そう宣う勇者の身体は見たことのない黄金に輝く鎧に包まれており、ネーブルの力を持つノアには、女神ルミエラの力が大いに使われていることがわかった。
ただその見た目は想像以上に…。
(何あの金ピカ鎧…死ぬほどダセェ…俺だったら死んでも無理…)
(あれはちょっと…僕が着せられる羽目にならなくてよかったですね…)
ドン引きしている2人だった。
「なにせ全属性に耐性があって、毒や麻痺も聞かないし、魔術も全属性使えておまけに剣だって勝手に身体が動いてプロ並みになってるんだぜ!負けるわけなくねー?」
「そう考えているなら…お前は一つ勘違いをしているな」
「はぁ?」
「あまり我らを舐めないほうがいい」
ノアの足元に大きな魔術の印が描かれ、それは勇者が召喚される際に描かれていたものと同じものだった。
「ルーク、足止めを頼む」
「承知いたしました」
大きな魔術を使う際は、それ相応に時間がかかる。その間、魔術師は無防備になるため、他に補助をする者が必要になるのだ。
元々のノアの魔力の大きさに加えてネーブルの魔力が合わさってはいるものの、下手に試して魔力が足りなくなってはと思ったノアは一発勝負で本番に臨むことになった。
「…はっ!そんな剣一本で何ができんの?オレにはこんな力だってあるんだぜ?」
勇者を中心に魔力の流れが荒れ狂い、嵐のように吹き荒れる。勇者を中心に生み出された竜巻は次第に大きくなり、天災ともいえる姿にまでなる。
しかし、まともな人間であれば立ち上がることさえ困難な風圧にさえ、ノアもルークも揺らぐことはなかった。
その微塵も恐れる様子のない姿に、勇者は苛立ちを隠せない表情を浮かべる。
「これでもくらえ!」
振り下ろされる勇者の腕、大きな竜巻は着実に2人へと近づいていく。そしてぶつかる寸前、竜巻は幾千もののコウモリへと姿を変えて霧散した。
「は…?はぁ…?コウモリ…?オレの超絶魔術は?くそ…っじゃあこれで!」
勇者の元から何十何百という燃え盛る炎の剣が、そして同じ数の氷の剣が現れ、ルークとその背後にいるノア目がけて飛んでいく。
しかし炎の剣は途中で全て叩き落とされ、氷の剣は全て霧散して消えた。
「な、なんで…なんでだよ!全属性の魔術だぞ!しかも最高峰の!お前、イカサマでもしてんのかよ!」
「だから言っただろう…?あまり我らを舐めるなと」
誰もいなかったはずのノアの周りの風景が揺らぎ、中から数人の魔族の姿が出てくる。
「男同士の戦いに魔術やら飛び道具なんざ女々しいな!男なら黙って拳で勝負しやがれ!」
「私の魔術で上書きできるなんて…魔王様の一割以下ですわぁん。しかも昨晩は娼館でお遊びだなんて…いけない子ですわねぇん?」
「マオ様とルーくんいじめるなんていけないんだ!ドロシー怒っちゃうんだからね!」
「ふぉっふぉっふぉ、こんな爺の剣ですら叩き落とせるほどの魔術でその自信とは…。貴様にやる魔王様の首はない、出直してこい若造が」
「毒は効かないなんて自信満々に言ってたケド…。人体実験すらできないやつとかもイロイロあるんだヨ?それと…あんた自身は痛みに耐えられるタイプぅ?身体中切り刻まれる感覚、覚えて帰ロっカ」
あの日、ノアを守れなかったことを後悔したのはルークだけではなかったのだ。そして全員がこの日を心待ちにしていた。
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🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
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